1 大陸棚限界委員会の認定
4月27日、国連海洋法条約に基づいて設置されている大陸棚限界委員会で、日本の大陸棚を約31万平方キロ・メートル拡大することが認められました。
そこには、日本が排他的経済水域(EEZ)を設定できる「島」と主張している日本最南端の沖ノ鳥島を基点とした海域も含まれておりました。そのため『J-castニュース』によると、「今回の認定に『国連が島として認めてくれた!』などとネット住民は快哉の声を上げている」そうです。
同記事によると「特に中国、韓国の反対を『抑えて』の認定という点も好印象を与えたようだ」としており、「日本大勝利!」といったネットの声を紹介しております。では、中国側はどういう反応かということについて少し。
2 『環球網』の記事
紹介するのは、当ブログでは既におなじみの中国の愛国主義者御用達の『環球網』の「专家:日本圈海不是中日主权之争但具警示作用」という記事です。これは環球網の記者が、中国外交学院亜太研究中心の蘇浩主任に話をきいてまとめたものです。
最初に記事のあらましを紹介させていただきます。
大陸棚限界委員会は国連の一機関で、そこで出された決定は一定の国際法的効力を持つ。しかし、注意しなくてはならないのは、日本が2008年11月に申請にしたのは7地域、総面積74万平方キロ・メートルの一部にしか過ぎない。
沖ノ鳥岩礁(中国は「島」とは認めていない)から南25万平方キロ・メートルは結論が出ていないし、他の部分は否定された。
ここから見て取れることは、日本が目指していた、岩礁を島として、大陸棚を延長し、経済水域を拡大しようという試みは、一定程度国連の批准を得られず、その方法は国際法に合致するものではない。
沖ノ鳥岩礁が日本領土であることは認めるが、岩礁であるが故に12海里の領海権を有するに過ぎず、200海里の経済水域の根拠とはならない。
そのため沖ノ鳥岩礁周辺の海域と海底は、一部分が日本の領海である他は、公海であり、海底は国際海底であり、中国は日本の不法な主張に対し、明確に反対を表明する。
国連海洋法条約の規定は、締結国は公海と全人類の共有財産である国際海底を守る義務を有している。
しかし日本は締結国であるにもかかわらず、国際社会の全体利益を無視し、巨額の投資をし、沖ノ鳥岩礁に港を建設し、「人工工作物」を以て沖ノ鳥岩礁を変え、共有財産である海洋資源を奪おうとしており、国際法に違反する。
沖ノ鳥岩礁の問題は、日中の主権とか海域の争いではなく、日本の私欲と国際社会全体の利益の衝突である。中国も海洋国家で、豊富な海洋資源を有しているが故に、海洋利益の侵害をどのように防ぐか考慮しなくてはならない。
3 個人的見解
中国政府の「島」ではなくて「岩礁」だという見解をそのまま述べているだけで、全く新しい主張もなければ、大陸棚限界委員会に対する有効な反論もなされておりません。
認められたのは申請した「総面積74万平方キロ・メートルの一部にしか過ぎない」としておりますが、今回約半分の31万平方キロ・メートルが認められたわけで、これをして日本の主張が国際法に合致していないというのは詭弁にしか聞こえません。
それに、今回の認定では沖ノ鳥島を起点とする海域も認められたわけで、これは「島」の拠点と考えられるわけですが、これに対する反論も全くなされていません。
そういう意味でとても専門家の反論とは思えず、単なる中国政府のスポークスマン程度にしか見えないわけですが、悲しいかな中国では国策がからむと、学問の自由などは存在しないので、何も珍しい話ではありません。
何と言っても公海を持ち出し、「全人類の共有財産」という主張で、日本を批判するのは、殆ど「中国=世界」と言っているようなもので、久しぶりに面白い主張をみさせてもらったというところでしょうか。
やはり『環球網』に掲載される記事は、時々私の予想の斜め上をいっているものがあり(「中国紙がAV画像を使って日本の祭りを紹介」「日本は中国海軍の通過に慣れるべきだ(中国軍事サイト)等)、大変興味深く拝見させてもらっております。
画像引用元:flickr form YAHOO