泥酔禁止!復興酒万歳!純米酒フェスティバル

  by 椿  Tags :  

お酒を飲む機会が増える春。歓迎会や懇親会、お花見などで「東北の日本酒で乾杯!」という人も多いのでは?

全国の日本酒の醸造元(蔵元)が自慢の純米酒を出品する『純米酒フェスティバル2012春』へ参加してきた。毎年春と秋の2回行われており、今回で25回目。蔵元がおススメする銘柄を飲めるという、純米酒ファンなら心ウキウキわくわくのイベントである。

 

純米酒って何だろう?

日本酒は“お米を材料としたお酒”だ。米・米麹・水だけで造った日本酒を“純米酒”と呼ぶが、一般に流通している日本酒の中には、醸造アルコール(食用エタノール)を添加した “本醸造”や“普通酒”も多く存在する。日本酒に関する最古の文献は『魏志倭人伝』と言われるが、その時代に醸造アルコールなんてものは当然ながら存在しておらず、昔ながらの造り方だと純米酒になるわけだ。もちろん美味しい本醸造もあるし、それに力を入れている蔵元もあるのだが、純米酒造りに戻りつつあるのが最近の傾向のよう。

 

参加者には女性グループの姿も!

開始5分間に会場に到着すると、既にほとんどの席に人が座っていた。チケットは前売り6,500円で即日完売するという噂。昼の部と午後の部という二部制(2時間半)で、定員各600名、のべ1,200名が来場する。首都圏だけでなく、地方から来場する人や、一部、二部の通しで参加する人もいるようだ。私は二部の方へ参加したのだが、主催者の話によると300名のキャンセル待ちがあったそうだ。

参加しているのは一般消費者の他、酒販店や飲食店関係者なども多い。10名掛けの丸テーブルが45卓。40代以上の男性が多い印象はあるが、明らかに20代の男性もいるし、私を含めて女性の姿も少なくない。中には女性だけのテーブルも。“日本酒=オジサンの酒”というイメージはもはや古いと言える。

 

最大のルールは泥酔禁止!

指定された席に着くと、松花堂弁当風のおつまみと、水を飲むためのグラス、試飲用のプラスチックの容器がセットされている。たくさんの種類の日本酒を飲む場所なので、食べながらお酒を飲む、水を飲みながらお酒を飲む。早々に酔っぱらわないためには、コレけっこう大事!

何を隠そう、この試飲会の最大の注意事項は泥酔(嘔吐)禁止!申し込み時は『一人で参加する場合は身分証明書持参』『嘔吐した場合は清掃費を負担』等の参加規約に同意が必要なのだ。ほとんどの人は酔っぱらっても楽しく帰宅できるはずだが、確かに、毎回終わる頃には千鳥足でトイレに向かう人が若干名見受けられる……。うーむ、主催者側も色々大変だなぁ。

 

開会宣言の後、試飲開始!

関係者の挨拶が終わると、なぜかマドンナの『マイルズ・アウェイ』が流れる。「景気づけの意味で最初だけ大きめの音量で流します。ボリューム下げろとか思わずに我慢してください。その後はいろんな曲が小さめに流れます」とアナウンスが。何だそれ(笑)

 

開会宣言と同時に、来場者は一斉にお目当てのブースへ向かう。中には小走りになる人も。41蔵おススメの銘柄が全て試飲できる。非売品や超レア酒は早々になくなってしまうこともあるから、はやる気持ちが 抑えられない人もいるわけだ。浮き足立つってこういうことだな……と実感。あっという間に大行列ができるブースもある。高いお酒から飲もうとする人が多い。もはや彼らにはマドンナの声なんか耳に入っていないに違いない。たぶん私が歌ってても気づかないんじゃないだろうか。イヤ、まぁ、さすがにそんなことはないか。

 

飲む順番に悩む

せっかくなら全制覇したくなるが、41蔵200種類以上出品されているのでさすがに無理!「首都圏で手に入りにくい蔵のお酒から飲もう」と決めて、年間の出荷石数をリストで確認し(非公開もある)、少ない蔵元から回ることにする。各ブースで社長さんや杜氏さん、営業の方からお酒の説明を受けながら試飲。どれもおススメの純米酒だけあって美味しい。香りが立つもの、ふんわり優しく丸い味のもの、それぞれ特徴がある。

 

一石ってどれくらい?

よく一石(いっこく)と聞くけれど、それってどれくらいの量なのか。約1.8リットルが一升瓶1本分。一升瓶10本で一斗(いっと)、一升瓶100本分が一石になる。10,000石の出荷量だと10万本分って計算になるわけね。

今回参加している蔵元の中では、年間22,000石の立山酒造株式会社(富山県砺波市)が最大出荷数。つまり、一升瓶に換算すると年間22万本分出荷しているということだ。次いで株式会社福光屋(石川県金沢市)が15,000石。

逆に少ないのが、200石の『星自慢』(喜多の華酒造場/福島県喜多方市)や『青雲』(後藤酒造場/三重県桑名市)。 300石が『白鷺の城』(田中酒造場/兵庫県姫路市)、『国菊』(株式会社篠崎/福岡県朝倉市)。 『大那』(菊の里酒造株式会社/栃木県大田原市)や『瑞冠』(山岡酒造株式会社/広島県三次市)は400石。規模が小さくても純米にこだわって酒造りをしている蔵元が全国にあるのがわかる。

 

復活!浜娘 (岩手県)

大注目は、岩手県の赤武酒造『浜娘』。これまた300石という蔵だ。沿岸部の大槌町にあったため東日本大震災の津波により事務所と酒蔵を完全に失った。町と赤武酒造の復興を願いながら、昨年秋から盛岡市内の蔵元の一角で酒造りを再開している。沿岸部で被災した蔵ではこういったケースもある。

お米は県産の『ひとめぼれ』、岩手オリジナルの酵母『ゆうこの想い』で醸した純米酒が3種類出品されていた。その中から『浜娘 純米 生貯蔵 復活』(写真一番手前)をいただいた。「ガッツラうまい酒」がキャッチコピーで、ラベルには堂々“復活”の文字。以前とは水が違うのできっと味は違うのだろうけれど、しっかりとしたお米の旨味が活きていてほんのり甘い、でも主張しすぎない美味しいお酒。食中酒としてバランスが良さそう。

 

播州・白鷺の城(兵庫県)

知人の唎酒師がイチオシしてくれたのが『白鷺(しらさぎ)の城』。彼女いわく「純フェス以外で見たことがないお酒」だそう。確かに酒屋や飲食店で見たことも聞いたこともなかった。その名が示す通り、白鷺城の別名を持つ姫路城のある、兵庫県姫路市の300石の蔵だ。

『生(き)もと 純米 米搗水車(こめつきすいしゃ) 亀の尾』(写真右から2番目)をいただく。幻の酒米『亀の尾』と天然酵母を使ったお酒。コクがある旨味とヨーグルトを思わせる酸味。生もとはお燗に向いているとされるけど、これは風味を活かしてこのまま飲みたい。

 

12蔵16種類飲んだ!

あちこちのブースをウロウロしながら、岩手、秋田、山形、福島、栃木、愛知、三重、福井、兵庫、広島、山口、12蔵16種類のお酒を飲んでいた。しかしながら味をはっきり憶えていないものも。一応飲んだお酒にはチェックを入れて、『まろやか』『酸味強め』などメモしているのだが、後半はヨレヨレの筆跡で○しか書いてない。泥酔はしてないものの、情けない!

帰りに出口で純米酒四合瓶1本が入った紙袋を受け取る。中身は選べない。私のは長野県の『川中島幻舞』だった。以前、純米酒フェスティバルに参加したときに初めて飲んで「長野のお酒美味しい!」と思ったことがあったので、素直に嬉しい。

 

日本酒は日本のお酒!

主催の純米酒普及推進委員会によると、東日本大震災の復興支援の動きと重なり、純米酒の出荷数は前年度を上回っているそうだ。

先日、古川国家戦略相が「日本酒と焼酎はコメと良質な水という日本が誇るべき産物から生まれた文化であり、輸出産業として世界を席巻できる可能性を秘めている」と語ったとされている。日本酒は日本のお酒で、文化伝統に根付いたもの。当たり前と言えばそうだけど、それを改めて考えてみたい。

これから冷たいビールが美味しい季節になるが、たまには冷やした純米酒はいかが?

 

【参考】純米酒フェスティバル2012春 開催概要

http://www.fullnet.co.jp/00_junfes/2012haru/index.htm