「♪内藤やす子になりたくて~」一度聴いたらクセになる!?  『やった!やった!サンバ』レコ発ライブレポート

  by プレヤード  Tags :  

戦後の雑多な雰囲気を残しながら、夜な夜な多くの人たちであふれかえる街、『新宿ゴールデン街』。
文化人やアーティストが集まり、文学や演劇、そして音楽を生み出してきたこの街の一角で、今話題となっている曲がある。
その名も『やった!やった!サンバ』。歌っているのは林健一(通称ケンケン)さんだ。

筆者が初めてこの曲を聴いたのは、やはりこの界隈の飲み屋であった。
ふとしたことから知り合った青年が、その音源を聴かせてくれたのだ。

「なんだこりゃ!?」

それが最初の印象だった。
決して難しい音楽ではない。軽快で、陽気なリズム、意味があるようで無いような不思議な歌詞、そしてどこか哀愁を感じさせる歌声。
その全てのバランスにすっかりひきつけられた。その場で何度か聴かせてもらい、自宅ではYouTubeを繰り返し見た。
当然生でも聴きたくなり、ケンケンさんの出演するライブに足を運んだ。そして、聴けば聴くほどこの曲の、そしてケンケンさんの魅力にとらわれていった。

そんな幻の楽曲が、5月16日にレコードとして発売されることになり、前日の5月15日、新宿ゴールデン街劇場で発売記念ライブが行われた。
筆者ももちろん参加したので、レポートしてみたい。

今回のライブは前売り券が早々にSOLD OUTしたということで、開始時刻の17時半には満員のお客さんで、会場は熱気を帯びていた。
定刻を少し過ぎた頃、内藤やす子さんの『想い出ぼろぼろ』を歌いながら、黒いラメの衣装のケンケンさんが登場。
筆者も「おお!いきなりの内藤やす子」とテンションが上がり、客席からも大きな声援が飛んだ。

まずはカバー曲を中心に、『夢芝居』『おんな道』と続き、5曲目の『かもめ』からはバックバンドが登場。『やった!やった!サンバ』の作者でもある石上嵩大さん(ギター)と、キーボードの菊池麻由さんがステージに上がる。
二人の演奏で『黒の舟唄』などを歌い、『愛の賛歌』で第一部は終了。

休憩をはさんで始まった第二部。白のジャケットにストールという、どこかヨン様風(?)のいでたちで登場すると、オリジナル曲の『あんば人生』を披露。続いて、ちあきなおみさんの『夜間飛行』-と、ここでゲストが登場する。今回のライブのプロデュースも担当した、歌手のギャランティーク和恵さんだ。
4月27日にリリースしたミニアルバム『ANTHOLOGY#1』に収録された『明日の為に微笑を~愛の讃歌~』など3曲を歌い上げ、観客を魅了した。

その後、再びケンケンさんが登場。この日のために作ったという新曲を交えながら、3曲を演奏し、最後はやっぱり『やった!やった!サンバ』。
コール、手振りなどで会場と一体となり、最高潮の盛り上がりの中で大団円を迎えた。

終演後、ケンケンさんと、石上さんにお話を聞いた。

-お疲れさまでした!すごい盛り上がりでしたが、まずは、レコ発ライブを終えた感想をお願いします。

ケンケン:ほっとしました。背負っていた重荷がひとつ片付いたような感じです。

-明日レコード発売日(5月16日)を迎えるわけですが、今どのような心境ですか?

ケンケン:うれしいです。レコードを出すことは長年の夢でした。このレコードはまさに“自分が生きてきた証し”。大げさではなくそう思っています。

-この曲ができた経緯を教えてください。

ケンケン:昔の歌番組を見ていた時、感極まって発した「やった!やった!」という言葉が何故かウケてしまい、夜間飛行(ゴールデン街にあるギャランティーク和恵さんのお店。ケンケンさんもカウンターに入っている)の流行語大賞をいただきました。それがきっかけで「じゃあ曲にしてしまおう!」となったのが最初ですね。

石上:僕はその夜間飛行で飲んでいて、その会話の中から自然に生まれたという感じですよね。「曲にすると面白いんじゃない?」みたいな(笑)。
それでデモを作ったのが、2013年の10月くらいだったと思います。

-まさに二年半寝かせての発売ということですね。ケンケンさんは最初に曲を聴いたとき、どのように感じましたか?

ケンケン:驚きました。「こんなオシャレな曲、誰が歌うんだろう?・・あっ、俺か~!?」という感じで。

-「内藤やす子になりたくて 九十九里を飛び出した」というフレーズが印象的ですが、これはケンケンさんの実体験に基づいた歌詞なんですか?

ケンケン:ほぼ実話です(笑)。
内藤やす子さんをはじめとする70年代歌謡曲に対する愛着と憧れが、歌うベースに常にあります。
まぁ、実際の地元は、九十九里の隣町なんですけどね(笑)。

-可能な範囲でこれまでのケンケンさんのこれまでの経歴を教えてもらいたいのですが。

ケンケン:高校を卒業してから、劇団の研究生となって歌やダンスレッスンの基礎を学びました。
大学に入ってからは、源氏物語や伊勢物語を研究する一方で、シャンソニエ(新宿にあるライブハウス)に出るようになります。
一度は東京で就職するのですが、諸事情あって地元に帰り、それから20年以上学習塾で講師をしていました。
年齢は非公表なんですが、歌への思いが絶ちがたく、50才を前にしたとき、それまでの全てを捨てて歌の道に入りました。
運よくオーディションにも合格し、サラヴァ東京やsoul kitchen、鈴ん小屋などのライブハウスで歌っています。
ちなみに、音源として発売するのは今回が初めてなので、デビュー曲ということになりますね。

-紆余曲折(うよきょくせつ)があったんですね。やはり、一番好きな歌手は内藤やす子さんですか?

ケンケン:内藤やす子さんはもちろん好きですし、他にも好きな歌い手さんはたくさんいます。一番というのは難しいですが、その生き方も含めて『ちあきなおみ』さんは特別な存在ですね。

-ちなみに内藤やす子さんご本人は、この曲のことをご存知なんでしょうか?

ケンケン:ご存知ないでしょうね~(笑)。一度お会いしてきちんとご挨拶しなければと思っています。

-今回発売されるのは、CDではなくアナログ版(ただしCD-Rでの音源付)ですが、それはなにか理由があるんでしょうか?

ケンケン:自分はアナログということに正直そんなにこだわったわけではないのですが、プレーヤーを通して聴く音に何とも暖かく懐かしい気持ちになりましたね。

石上:そもそも僕がケンケンさんに作った曲がこの2曲(B面の『やってくれないホテル』も石上さん作)しかなかったので、それなら7インチがいいかな(笑)、と。個人的な趣味の部分が大きいですかね。5曲くらいあればCDでも構わなかったです。
CD-R付きにしたのは、単純にケンケンさんがレコードプレイヤーを持ってなかったからです(笑)。

-曲を作る側から見て、ケンケンさんの魅力ってどんなところでしょう?

石上:もともと演劇をやっていたというのもあり、ライブのときの顔とか動きが面白いですね(笑)。
それでも、いちばんひかれたのは、50歳近くで定職やら故郷やらを捨てて、歌を歌うために上京してきたところでしょうか。

-逆に歌う側から見て、石上さんの曲の魅力とは何ですか?

ケンケン:メロディーがオシャレですよね。今まで泥臭い情念系の歌を中心に歌ってきたので、こんなの歌えるかしらと思いました(笑)。

-漠然とした質問ですが、ケンケンさんにとって『歌』とはなんでしょう?

ケンケン:一言でいうのは難しいですね。『唄う』という言葉はもともと『訴える』から来ていると聞いたことがあります。
そこに描かれるさまざまな人の心を、歌を通して表現できたらとはいつも思っています。

-今後の活動予定、そして歌手としての目標や夢などありましたら教えてください。

ケンケン:近いところでは、5月31日にサラヴァ東京『SHOWCASE』、6月26日に鈴ん小屋『歌謡曲ジャンボリー』に出演します。
大それた目標や夢はありませんが、ひとつひとつのステージを「これが最後だ」という気持ちで全力投球していければと思っています。

-ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしています。

きっかけは、本当に偶然耳にした一曲だった。しかし、そこからいろいろなことが繋がって、今回のライブを見に来ることになり、そしてケンケンさんの生き方、思いを伺うことができた。
会場にいたファンの方にも話を伺ったのだが、ケンケンさんの人柄やキャラクター、そして何よりも情念を込めた歌が魅力だという人が多かった。つまりは、ケンケンさん、そのものの存在がもう魅力的なのだ。

ありったけの思いを込め、魂を乗せて歌う。それがケンケンさんの歌唱スタイルだ。その意味では、『やった!やった!サンバ』は異色作と言ってよいだろう。しかし、熱く、激しい曲たちの中で、ふと聴こえてくるサンバのリズム。それがたまらなく軽快で心地聴こえるのもまた確かなのである。

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※トップ画像は『やった!やった!サンバ』リリースライブチラシより
 その他画像は筆者撮影

アイドル&美少女系ライター。 アイドルファン歴ももう30年。新旧問わずアイドルの魅力や素晴らしさを伝えていければと思っています。 モットーは「生涯一アイドルヲタ」「人生で大切なことはアイドルから学んだ」。 夢は、世の中の「アイドル」と呼ばれる人たち全てが幸せになることです。

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