偶然、聞こえちゃったオフレコ会話

  by chamberlain1991  Tags :  

(写真: http://www.dailymail.co.uk/から引用)

この数日、BBCニュースでも流れてちょっと話題になっているのが、うっかりマイクロフォンが拾ってしまった首相やエリザベス女王などの会話だ。本来、オフレコであるべき会話だったのだろうが、たまたまマイクロフォンの感度の関係などで、しっかりと録音されて残っていた、というものである。イギリスでは、俳優やミュージシャンなどのセレブよりもメディア攻勢が激しい王室、キャメロン首相などの政治家の会話が、ときどき、このアクシデントにみまわれて大きな話題になる。

そこで、最近のもので、興味深いものを少々調べてみた。

今週火曜日にバッキンガム宮殿で行われたガーデン・パーティにて、昨年10月に中国から習近平首相が英国訪問中、保安を監督していた、ドルシ警視庁司令官が女王に紹介された場面では、こんな会話があったことが公開されました。

まず、宮殿の担当者から、こちらがドルシ司令官です。と紹介されると、
女王:「まぁ、悪運に見舞われましたわね。」というお言葉で会話が始まる。

ドルシ司令官:「自分の力の限り、どうにか指揮を貫徹いたしましたが、正直なところ、中国側に徐々に足元をすくわれていくような感じでした」と続く。

ドルシ司令官:
「陛下はご存じでしょうか、私は高等司令官なのですが、あの件は、私にとってかなりの試練の時間でした。」

女王:「理解できますよ。」

ドルシ司令官:
「彼らがランカスター・ハウス(会議場)から出てきた時、この訪問は終了だ、と聞かされて、私もそう感じました。」

女王:
「中国側は、英国の駐在大使に対して非常に失礼な扱いをしましたね。」

ドルシ司令官:
「失礼でした。 彼らは非常に失礼であり、非外交的であったと思っております。」

女王:
それは「それは驚くわね」。

(写真: http://www.straitstimes.com/から引用)
先日のパナマ文書スキャンダルの後に、ロンドンで各国首脳を迎えて開かれた汚職撲滅サミット時に、女王やカンタベリー英国教会大司教ジャスティン・ウェルビーたちと雑談を交わしていたデイビッド・キャメロン首相は、「すさまじく汚職が蔓延した国ですよ。」とナイジェリアとアフガニスタンについて(カメラがまわっているのを知ってか知らずか)表現しました。これが、テレビカメラにしっかりおさめられていて、後日、ニュースとして流れてしまいました。

キャメロン:「今回、我々はすさまじく退廃した国の首脳陣を迎えているのですよ、… ナイジェリアとアフガニスタン、おそらく、この2つは世界中で最も腐敗した国ですよ。」

この言葉を遮るように、カンタベリー大司教は、

大司教:「いや、実際、みな汚職をしているわけでもありませんよ。一生懸命にがんばっていますよ。」
と、ナイジェリアの大統領をフォロー。

しかし、議長のジョン・ベーコウ氏がそのあとに追い打ちをかけるが如く、

議長:「国民が、彼らの費用を自己負担で来ていると思いますかね?」

この報道を受けて、昨年、「腐敗政治と戦う」ことを誓約に掲げて大統領に選ばれた、ナイジェリアのムハメド・ブハリ大統領は、「これを聞いて、ショックを受けた。」とのこと。
アフガニスタン当局者も、特徴描写が「不当である」と不快感を述べた。

この、キャメロン首相というのは、メディアに無防備なところがある人なのか、よくこういった失敗をしでかす。日本の政治家のような致命的な失言はしないのだが、どうも周りを気にせずに割と思ったことを口にしてしまう人らしい。

昨年、キャメロン首相は、イングランド北部のヨークシャーの住民について、「お互いを憎み合っている人々」という極端な表現をして物議をかもした。2人の代表的なヨークシャ出身のクリケット選手を例に出し、「ヨークシャ人というのは彼ら以外の人間が嫌なのかと思っていたのですよ。でも、彼らがヨークシャ人同士でも嫌だったとはね。」
この件は、クリケット選手たちが「冗談のひとつだ」ととらえて大事にはならなかった。

また、最近では、首相が女王にスコットランドの独立国民投票結果(「独立を望まない」が過半数に達したという結果)を話すと、女王が非常に上機嫌でその喜びを語ったという、ふたりの仲睦まじい様子を、撮られたこともある。

これらすべては、王家の人々や政治家などのプライベートな会話であり、公式に発表されるべき記録ではない。通常、明け透けに一般大衆の目にさらされるようなものではないのだが、イギリスの報道はときどきこういったものをニュース番組で流す。うがった見方をすれば、裏に政治的な意図があるようにも見えるのかもしれないが、我々がこういうものにふれるにつけ、王室や政治家に親近感のようなものが生まれてくるのは間違いないと感じる。今も健在の英国王室人気や国民の政治に対する関心度などは、こういうオープンな報道体制がひとつの原因だと私は考えている。

昨年9月で短くて永かった1年9か月のルーマニアのブカレスト滞在を終え、やっとイギリスに帰還。現在、まさかの完全専業主婦に。毎日、ケーキを焼いたり、スーパーでお買い得品探し。 書くことが好きであり、批判的な文章が多くて、少々皮肉っぽくてうがった見方をした書き方が、いろいろ物議をかもすことあり。