障害者差別解消法の自治体対応要領について

全国の都道府県市区町村が、障害者差別解消法に対応していくための職員対応要領の策定をすることになった。

各自治体は素案を策定して、パブリックコメントの募集を開始している。

このパブリックコメントでのポイントをあげておこう。

ポイント1 職員の対応について定める要領なのだが、職員とは誰を指すのか?市長(区長等)を始めとした特別職もそこに含むのか?また委託先である民間事業所の職員に対してどこまで言及しているのか?

ポイント2 素案や要領策定のプロセスに障害当事者が参画する仕組みを作っているか?

ポイント3 職員の対応の根拠となる自治体の施策の中に差別はないかをチェックして是正する仕組みは盛り込まれているか?

これから、パブリックコメントを書こうとしている方の参考になれば幸い。

また、東京都大田区の障害者団体『大田障害者連絡会』では、Facebookページに【みんなで「(仮称)大田区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」(素案)の意見募集に意見しよう♪】と言うイベントを立てて、地域の関係者にパブリックコメントへの投稿を呼びかけている。
そのイベントへの投稿に、大田区の素案についての意見を秀逸にまとめたものがあるので紹介しておこう。

以下 【みんなで「(仮称)大田区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」(素案)の意見募集に意見しよう♪】への鶴田氏の投稿より引用

A、主に策定のプロセスなどについて
1、パブコメの後の策定プロセスがわからないこと。
  このパブコメを誰と誰が勘案して、どのように策定するのか、そこを明確にして欲しい。
・  
2、参加のデザインの必要性
  とりわけ当事者の参加が必要。
  「私たち抜きで私たちのことを決めないで」という権利条約の核心部分へのより深い理解が必要だと考える。
  その当事者参加の策定プロセスにおいて「合理的配慮」(この日本語訳に問題があるように思われる*が)が必要。
  策定プロセスへの当事者をはじめとする広範な区民の参加がこのような規定に豊かな内容を生む
  参加型のワークショップなどを通して、この中身を作っていくような発想が必要とされている
  形としての「対応要領」も大切だが、その策定プロセスが区民に開かれることで、それが理解啓発にもつながる
・  
3、対応要領策定より前に、そもそも法の精神やこの法律ができた由来から説明するのが親切なのではないか
4、なぜ、この法律が必要なのか、というところまで深めて考察した上で、この対応要領を考えたい
  法律で定められた最低限のことをやればいいという話ではないと思う
・  
5、今回の素案をとりあえずのたたき台として、参加型の策定プロセスを検討して欲しい

6、そのためにできるのが遅れてもかまわないのではないか

***
B、内容について

1、基本方針の必要性
  世田谷区では、内閣府の「対応要領」が組織の対応と個人の対応がごちゃ混ぜだという区内部からの批判で、組織の対応は「基本方針」に、個人の対応は「対応要領」にと明確に分化したと聞いた。大田区でも同様のことが問われているのでは?

2、区の政策として、行われていることが障害者差別に当たらないか、検証することの必要
  障害を持った子どもが区立の学校や児童館、保育園などで必要な「合理的配慮」を受けられるかどうか。本人側から申し出があった時に対応できるかどうか。区立学校などにおけるバリアフリー化に向けた計画も必要だと思われる。

3、相談窓口について
  相談窓口に障害福祉課、地域福祉課、障がい者総合サポートセンターの三ヶ所が挙げられ、集約が障害福祉課になっている。役所の中でも総合的なユニバーサルデザイン的な対応力が問われ、当然障害分野だけの問題ではない。それが、障害関連三ヶ所ではよくないのではないかと思われる。障害以外の関連所管が一次的な受付をするのは確かに大変だし、障害者も相談し易いのは障害福祉課等であることは事実。しかし全庁的な取り組みにするために、区役所全体の総務部門か区長室と障害福祉課の合同で対応の取りまとめを行い、人権に関する部局なども対応できるようにすべき。横浜市では、担当者が相談窓口を障害関連所管だけにするのも差別だろういう認識を持っていたとのこと。

4、「第8条 区は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修及び啓発を行う」について。
  職員全体に向けた研修が必要。その内容も、障害者権利条約や障害の社会モデルについて、単に知識として与えられるのではなく、ワークショップ型で本人の気づきをもたらす様なものにすべき。まず、区長をはじめとした「管理監督者」に、そして、次に対応に問題があるという指摘があった職員に対して、そのようなプログラムの実施が必要だと思われる。区の職員研修部局で、それを含めた全員に対する研修をどのように行うか、具体的な計画を立てることを明記して欲しい。

5、差別解消法関連の相談や苦情等の対応について、障害当事者を含む第三者が検証できるような機関が必要。その結果はプライバシーに配慮した上で公表されるべき。

~~~
「合理的配慮」という日本語訳について
確かに、政府の訳でも法律でもそうなっているので、いまさらという感じはあるのですが、大事なことだと思うので書かせてもらいます。
この言葉のもとの英語は”reasonable accommodation”です。”reasonable”を合理的と訳すのはいいと思いますが、”accommodation”を配慮と訳すことが誤解を生みやすいのではないかと考えます。
辞書(英辞郎)によると”accommodation”は
~~~
〔新しい環境などへの〕適応、順応
〔人を〕もてなすこと
〔人に対する〕便宜、用立て
宿泊設備[施設]、収容設備
〔人に対する金銭の〕融通、貸し付け、 貸付金
〔論争・紛争などの〕調整、和解
〔眼の遠近の〕調節
~~~
となっています。また、『配慮』という言葉を辞書で調べると、
~~~
《名・ス他自》手落ちのない、または、よい結果になるように、あれこれと心をくばること。
「―に欠ける」
~~~
と、あります。合理的配慮には、当事者側(この側が重要)の主張が前提となる、といわれており、「配慮」という日本語には「してあげる」的な響きがあります。
そ れらを勘案すると、これは『合理的調整』とかさらに意訳すると『合理的条件整備』とか訳すのが適当なのではないかと思われます。
すでに法律用語になっているので、大田区で変えるのは困難でしょうが、そのような意味の言葉だという理解は必要ではないかと思います。

引用 以上

参考:

20代前半から障害福祉系の仕事に就き、30才で起業(障害者就労支援を目的としたコミュニティ・カフェ)、31才からの障害児放課後活動施設設立運営を経て、5年前に特活!風雷社中と言う障害者支援と若者支援を連携させたNPO法人を設し現在にいたる。 現状の取り組みとしては風雷社中の代表として障害者ガイドヘルプサービスの提供をメインとして、TransitCafe☀Colors(イベントスペース)の企画運営、大田区の障害福祉系の市民活動へ参画しています。

ウェブサイト: http://dokoikou.jimdo.com/

Twitter: https://twitter

Facebook: https://www.facebook.com/kaminariboy