キングジムが、またおかしなものを開発してしまったようなので、発表会を取材した。
宮本彰社長自ら「面白いものしか作らない!、変なものしか作らない!隙間産業を狙う!」と言い切ってしまうあたりが、キングジムらしいと言えばらしい。
さて、今回発表されたのは、モバイルPC「ポータブック」XMC10で、このネーミングもポータブルとブックを掛け合わせた、何のひねりもないキングジム伝統のネーミングスタイル。この段階でニヤリとしてしまうのがキングジムファンだろう。
しかし、製品はいたって真面目で、ビジネスマンが多用するA5サイズのスケジュール帳や手帳とほぼ同サイズで、フルキーボードで概ねフルスペックのノートPCを作ってしまったのだから、報道関係者もネーミングの失笑を通り越して、感心気味。
12インチノートPCとキーボードを比較すると一目瞭然。何の遜色もない。質量は約830グラムと軽量。
そして、これの開発だけに1年を費やしたキーボード。確かにその機構は特筆ものだが、Windowsユーザーとしてちょっと見で違和感を覚えた。というのは、キーボードがひらがなレスなのだ。
この点について開発者はトークセッションの中で、「カフェなんかでアップルのノートブックを開いているのを見るとかっこいいですよね。そのキーボードにひらがながあると格好悪いということで、あえて英語キーボード仕様を選択される方も多いと聞きました。そこで、我々は最初からひらがなを排して英字だけのキーボードにしました」と述べた。
それだけの理由でひらがなを抜いてしまうとは、さすがに場内からは笑い声が上がり、ようやくキングジムの本領発揮といったところ。
では、記者も真面目にスペックを紹介しよう。
インテルAtomを採用したのは、モバイルバッテリーで本体に給電するのに低電力出なければならなかったため。
また、ビジネスマンの用途では、外出先でそんなに大したことはしない、と完全に出張専用PCと割り切っている。
記憶装置はeMMC32GB、メインメモリは2GB。
インターフェイスは充実していて、プロジェクターに対応できるようにHDMIだけではなくVGA端子も備える。ビジネスマンのプレゼンテーション用途を想定したものだ。
USB端子は900mAの容量が必要なUSB3.0を装備するとACアダプターが大型になるので、あえてUSB2.0のみを装備。実際にUSB3.0対応デバイスはまだまだ高額なので、これで十分と割り切っている。
先に述べたが、本体充電はマイクロUSBで行う。2Aの小型ACアダプタが付属するので、タブレットやスマホの充電器と共用できるほか、モバイルバッテリーからの給電も可能。つまり、フルサイズノートPCのあのでっかいACアダプターやスマホ用ACアダプターという「お荷物」を排除することができる。
バッテリーでの駆動時間は約5時間。
自慢のフルサイズスキーボードは折りたたみ式で、ほぼA5サイズに収まるように設計されている。スライドアークキーボードと称する。
また、キーそのものも質感と使用感を高めるための工夫が凝らされている。
背面端子にはカバーがつく。これは、手に持った時に指が端子類に引っかかることを防ぐためだが、これだけでは終わらない。
さすが事務用品メーカーだと思わせるのは、カバーを本体底面に出すとそのまま足になり若干の傾斜が得られるように設計されている。無駄のない、しかし日本人が考えそうな、かゆいい所に手が届く設計だ。
OSはWindows 10 HOME 64bit版がインストールされている。
また、Mobile Officeと、1年間無料のOffice 365が付く。
発売は2016年2月12日とリリースされた。
そして、気になる価格はオープンプライス。想定価格は9万円前後になるとのことだ。
ビジネスマンは喉から手が出るほどほしい逸品だが、この値段が一番のネックになるかもしれない。
タッチアンドトライコーナーでは実機を触ることができた。
写真はキーボードを折りたたむ途中。
折りたたみ機構は露出しておらず、隙間に物が入り込む、あるいは見栄えが悪いということはない。
キーボードを折りたたんだところ。
画面を閉じれば、このようになる。
背面端子の拡大写真。
左から、遠隔会議で多用されるSkype等で使えるヘッドセットヘッドホン端子、USB、HDMI、VGA、本体給電用マイクロUSB。
背面カバーを本体底面に出したところ。
大きさがわかりにくいので、ICカード乗車券を置いてみた。
他の特徴としては、デジタルカメラからの写真の取り込みが容易なようにSDカードスロット、ディスプレイは8インチノングレアTFT液晶、光学式フィンガーポインティングマウス等を備える。
コアなキングジムファンはもちろんのこと、新幹線や航空機でPCが手放せないビジネスマンは、荷物の軽減や仕事の効率化に導入を検討する価値はあるだろう。くれぐれも本機を用いて本気で3Dゲームをしようとは思わないように。
同社ではすでに専用の問い合わせ窓口を開設しているので、気になる方は問い合わせてみてはいかがだろうか。
株式会社キングジム ポータブック専用窓口
フリーダイヤル(全国共通)
0120-883-911
※写真はすべて記者撮影