東京ビッグサイトで開催された「下水道展’15東京」を取材した。
普段はなかなか見ることがない下水道の世界だが、夏休み期間中とあって自由研究にもってこいなのか、親子での来場も目立った。
誰か知っている人がいないだろうかとネタを探して歩いていると、何度か取材で撮影に協力してくれているNanaさんを発見。
彼女の背よりも高い下水管。この下水管をどうやって地下に埋めるのだろうと考えると夜も眠れない。という一節で笑えてしまうのは昔の話。今は埋めるのではなく、マンホールから入れるのだ。いったいどうやって。そのやり方を考える方が眠れない。
実は彼女が指している赤い部分。この部分が四隅についていて、これを外すとなんとトンネルが折りたためる。
折りたたんだトンネルの一部を地下でこの形に組み立てて延々とつなげていくのだ。3ユニットセットで1メートル。最後にまわりにコンクリートを流し込んで固めるだけ。これで眠れるだろうか。
土管は丸いものと相場は決まっているが、最近はそうでもないらしい。
東京都下水道局は大人にも子供にもお勉強のネタを提供してくれる。
この模型は、最近多い大雨による浸水被害をわかりやすくしたもの。
「和田弥生幹線」という直径8.5メートルのトンネルを数キロ掘り、一時的な大雨で河川への放水が間に合わない時に、このトンネルに一時的に貯めておくという仕組み。いわば地下の貯水池だ。
雨が上がって河川に放水しても大丈夫になれば、ポンプでくみ上げてトンネルを空にする。こうして東京の冠水を防ぐ仕組みが地下にある。
下水に油を流すと河川や海に放水するのに大変な浄化費用が掛かる。そこでなるべく油を使わないメニューを提案するコーナー。油を一切使わないのでヘルシーでママにはうれしい。
この油を一切使わないドーナツ。記者も試食したが結構おいしい。会場ではレシピ本を配っていたが、東京都下水道局のホームページにも同じものが掲載されているので、お試しあれ。
(http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/infn0284_5a3.htm)
子供向けのコーナーではマンホールの中に入ったり落ちたりいろいろなポースで写真を撮ってくれるという。
しかし、ここにマンホールはない。
撮影地点と目の錯覚でいかにもマンホールがあるように見えるだけの平面図なのだが、きちんと撮影するとそのように見える。
スタッフの協力を得て記者が撮影したものだが、それらしく見えるだろうか。
東京都下水道局では、会場のビッグサイトから親子向けの無料バスツアーも出していて、子どもに大人気だった。
また、あらかじめ子供たちから研究成果を募集し、その発表会を開いて記者が通りかかった時にはちょうど表彰式が行われていた。
さて、ここはどこだろうか。ちなみに潜水艦ではない。
大人が普通に立てるくらいの高さがある。
宇宙船でもない。原型はポリエチレン製のいわゆる土管だ。
実は大日本プラスチックスが既存の技術を惜しみなく使って開発した「災害用シェルター」なのだ。
津波で流されて揺れてもけがをしないように内部はソフトに作られており、座席は四点式シートベルト装備。
定員10名で上部ハッチから出入りする。窓はガラス製とステンレス製の二重構造で、完全に潜水艦のそれと同じだ。
元々はポロエチレン製なので水に浮く。下に重りを付けることにより船舶同様の復元力があり、転覆することはない。
簡易トイレも装備され、居住空間の下には10名分が7日間生存できるだけの飲料水や非常食、毛布などが入っている。
展示のため、横に開口部を設け入れるようにしてあるが、製品の開口部は上部ハッチだけ。
元が「土管」なので、いくらでも継ぎ足すことができる。
ちなみに気になるお値段はこのサイズで2000万円というから、個人で買えるものではないが、自治体の津波用避難タワーや集合住宅の屋上に設置する等の想定で実際に売るらしい。
同社によると、広報のためにトラックに積んで全国を回る予定だそうで、どこかの街でお目にかかれるかもしれない。
コンパニオンさんの話によると「お子さんが秘密基地だと言ってずっと入りっきりで遊んでました。」と笑っていたが、記者も「秘密基地」案には賛成だが、高い基地になりそうだ。
下水道は普段は目につかない陰の存在だが、衛生、防災上、非常に重要なインフラで、水の循環を考えると捨てる水をいかにきれいにするかによって、将来上水(飲料水)になって帰ってくるときの水質にかかわる重要な存在だ。
マンホールを見た時に少しだけ下水道のことについて考えてみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影