学者100人を集めて華々しく記者会見を行い、呼びかけ人が「私たちは、学問と良識の名において、違憲性のある安全保障関連法案が国会に提出され審議されていることに強く抗議し、それらの法案に断固として反対します。」と大見得を切った「安全保障関連法案に反対する学者の会」。しかし、ネット上ではこの会に対する批判が相次いでいる。学者、つまり専門家以外の人も複数含まれているようだというのだ。
なお、学者とは辞書によれば「学問の研究を仕事としている人」(大辞泉)だという。
「ざりがに探偵団」「定年退職者」という謎の肩書
「安全保障関連法案に反対する学者の会」のwebサイトには、学者たちの肩書も掲載されている。ところが、筆者が調べた所、「学問の研究を仕事としている人」といえなさそうな人も確かに複数含まれているようだ。一体どういうことなのだろうか。
例を上げてみると、こんな感じだ。
○学者というより一般人?
「幼稚園園長」「司書」「詩人」「定年退職者」「合唱指揮者・書家・朗読家」「独立行政法人職員」「労働組合○○(職員?)」「無所属・在野」「ライター」「会社経営」「ざりがに探偵団」「アートコーディネーター」
○まあ、確かに先生とは言いますが…
「弁護士」「作家」「司法書士」「弁理士」「バリアフリー評論家」「牧師」「教会司祭」「短歌会選者」「中学社会科教員」「NGO代表」「言語聴覚士」「舞台音響家」
一見して学者かどうか分からない奇妙な肩書の人が目立つ。これについて「学者の会」に「貴会では学者の定義をどのように定めていますか?」と質問のメールを送ったが、何の返答もなかった。
他のメディアも報じている通り、賛同者に多いのは非常勤講師や助教などで、医師も多い。共産党系の病院グループ「全日本民主医療機関連合会(民医連)」などに所属している開業医や病院の医師なども学者に含んでいるようだ。
賛同者数も疑問、2回の質問にも回答未だなし
この呼びかけに賛同の署名をした学者・市民で、名前が公表されている人をエクセルに逐一打ち込んで計算したが、どうしたわけかサイト上に公表されている人名は現時点までの累計で9527人にしかならないようである。サイトには「学者11,604人、市民24,053人」(7月21日9時00分現在)とあるのだが…サイト上には「人数には氏名非公表の人も含みます」とあり、私の集計にミスがあるかも知れないので、これについても質問したが、まるで回答はなかった。少なくとも、どのくらいが非公表なのか、大学などの研究機関に属している人はどのくらいの割合なのか、サイト上で書くべきではないだろうか?
いずれにせよ、政治活動をするのなら孔子も言うように「必ずや名を正しゅうせんか」(政治の始まりは人それぞれの名分を正すことだ。学者は学者らしい行動を取るべきだ)ということが必要なのではあるまいか。大見得を切って首相を論難すれば自分たちは気持ちはいいだろうが、学者の言動は世間の人に与える影響も極めて大きいものである。
なお、論語は続けてこういう。
「君子というものは知ったかぶりはしないものだ。自分の知らないことには口を出さない方がいい。」
「例えば私は農業については詳しくない、農業のことは私よりも経験豊富な農家の人に聞くべきだ。」
「役に立たないものは、いかにたくさんあっても仕方がない。以下に多くの学問を修めようとも、実用にならない学問では何の役にも立たない」(論語・子路編、諸橋轍次『中国古典名言辞典』より)
(画像は 「安全保障関連法案に反対する学者の会」webサイトより http://anti-security-related-bill.jp/)