織田信長といえば日本史の中でも屈指の人気を誇る英雄で、コーエーテクモの「信長の野望」シリーズを始め戦国時代を扱ったゲームやアニメには必ず登場する人物である。
その信長の一代記で、「信長もの」の元ネタになっている太田牛一・作の軍記物『信長公記』(しんちょうこうき)が、世界遺産になるかもしれないのだ。
ユネスコの世界記憶遺産の国内公募が2015年6月23日で締め切られたが、それに際し、『信長公記』の太田牛一自筆本(国重要文化財)を所蔵する建勲神社(京都市)の公式ツイッターが世界記憶遺産への申請を出したことを発表した。『信長公記』は文部科学省から発表された候補リストにも掲載されている。
現在、ユネスコ記憶遺産(国際登録)国内公募が行われていますが、建勲神社蔵の重要文化財「信長公記」(太田牛一自筆本)について、昨日申請書を提出しました。
— 建勲神社 (@kenkun_jinja) 2015, 6月 13
『信長公記』は織田信長の側近、太田牛一(おおた・ぎゅういち)が「目撃したところを記したもの」(甫喜山景雄の説)ではないかと言われており、信長生前から書きためていたメモを後にまとめたもので、史料価値も高いとされており、それ自体がかなり面白い。後に別人が改変したものが辻講釈に使われ、江戸市民にも親しまれていた。現在は角川文庫ソフィアから原文が、新人物文庫からは現代語訳が出ており、「小説より面白い」とamazonレビューでも好評なようである。
『信長公記』というスーパーファミコンゲームもかつてやのまんから発売されていた。
(やのまんのスーパーファミコンゲーム『信長公記』)
日本ユネスコ国内委員会「今回は申請不備以外は全て掲載した」 正式決定は2017年夏頃の予定
なお、世界記憶遺産の国内公募を管轄している文部科学省・日本ユネスコ国内委員会の担当者に電話で取材したところ、「今回のものは申請書に不備がなかったものを全て掲載している」とのことで、一次選考は2015年9月になる予定と発表されている。一次選考では候補に16件申請された内から、2件残り、ユネスコによる正式な決定は2017年夏頃の見通しだ。
文化財や世界遺産に詳しいメディア関係者によると、
「今回申請された16件については、第二次世界大戦中にユダヤ人を救った杉原千畝関係の文書や、一度落選した特攻隊関係資料などがあり、諸外国の報道も杉原関係文書と特攻隊資料の2つが多いようだ。日本国内の戦乱の記述に留まる『信長公記』は、世界記憶遺産の基準である『世界の特定の文化圏において多大な影響を及ぼしたもの』とまで言えるかどうかはなかなか難しいかもしれない。『信長公記』にルイス・フロイスなどの宣教師との交流が書かれていれば良いのだが、太田牛一はそこのあたりを十分書いていないのはマイナスかもしれない。織田信長という人事態が、日本以外でどれくらい知られているかどうかが世界遺産登録への鍵になるのではないか。」という。
織田信長について書かれた「信長公記」が世界に羽ばたく日は、果たして来るのだろうか。吉報を待ちたいのだが…
(画像出典:1,ウィキペディア「織田信長」より https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%94%E7%94%B0%E4%BF%A1%E9%95%B7#/media/File:Odanobunaga.jpg
2,amazon やのまん「信長公記」 画像キャプチャー
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%84%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%82%93-%E4%BF%A1%E9%95%B7%E5%85%AC%E8%A8%98/dp/B00019P7X0)