中国・中山大の研究チームは、4月18日に科学雑誌『プロテイン・アンド・セル』オンライン版に、生育できないヒトの受精卵を使い、遺伝子の改変を行った実験について論文を発表しました。
先天性の疾患の中には、遺伝子の異常によって起こるものが少なからずあります。近年、急速に進歩を遂げた遺伝子の改変を行う「ゲノム編集技術」は、先天性疾患の根治療法として期待が高まっています。
しかしながら、病気を引き起こす遺伝子だけを編集できる精密な技術が確立しているわけではありません。これから細胞が分裂して組織が作られていく受精卵に対して遺伝子編集技術を用いることは、倫理面の問題だけでなく、危険性も高いことから実験については控えるように合意が求められていました。
中山大の研究グループの研究論文によれば、先天性の血液疾患の原因となる遺伝子の編集を行うよう86個のヒトの受精卵で実験。遺伝子編集操作を行った後、71個の受精卵が生き残ったとのこと。また、71個の受精卵のうち、28の受精卵が狙った遺伝子を編集できたことが確認でいたとしています。ただし、狙った遺伝子以外も改変された可能性があり、現時点ではヒトの遺伝子編集技術は実際の治療に応用するには今後の研究が必要と結論づけています。
この研究について、各国から倫理面に問題があるとして批判が集まっています。中山大のグループは、倫理的な問題を避けるために、もともと遺伝子に問題があり、生育が不可能な受精卵を実験に使用したと弁明しました。
非常に有意義な技術であり、実際に病気に関連する遺伝子を編集できるようになれば、対症療法しか対応策がない遺伝性疾患を根本的に治療できるようになります。そのため、非常に魅力がある研究とされていますが、結果を急ぎすぎることによって危険な側面があることから、今後も慎重な研究の進展が望まれます。人を実験に使うわけですから、全員が幸福になる結果を厳密に守りながら、技術を発達させてほしいですね。
※写真は足成 http://www.ashinari.com/2011/05/22-347845.php より