たかがおまけ、されどおまけ 『インターナショナルプレミアム・インセンティブショー』

  by 古川 智規  Tags :  

池袋のサンシャインで開催されている「第51回インターナショナルプレミアム・インセンティブショー春2015」を取材した。私たち消費者がイベントや販売促進のためにノベルティグッズをもらうことがある。昔はただの「おまけ」としての物品だったが、最近はより良いもの、より高価なものを配る方も、もらう方も求めるようになった。需要と供給があればそこに市場が誕生するのは資本主義の摂理だ。その市場が拡大すれば今度は大量生産による単価の低下、単価が低下した分だけプレミアムを付けられるようになり、全体の幅が広がる。幅が広がれば市場がさらに膨らむという好循環を招く。

そのような拡大を続けるノベルティとインセンティブ、それらの企画品の世界をちょっとのぞいてみたい。いつか紹介したような素敵なノベルティがどこかでもらえるかもしれない。なお、このショーは商談会のため業界関係者のみの招待制入場となっているので注意されたい。

最初に紹介するのはドルヲタさんの間では有名だと言われるキンブラというブランド。要はペンライトなのだが、アイドルのコンサートで振ってるアレだ。ケミカルサイリウムが一時期流行したが、出演メンバーによってカラーが違うのでLEDを使ってあらゆる色を出せるようにしたものが主流だそうだ。

きれいに色がそろっているが、実はこれ無線で一斉制御しているハイテクペンライトだ。これによって既設照明だけではなく観客のペンライトをもってライト演出を図るというものだ。

企業とは関係ないが、もしコンサート帰りに鉄道を利用する場合はホームでペンライトを点灯させるのは厳に慎むべきだ。鉄道の世界で信号機のない場所での赤色灯は緊急に停止しなければならないことを現示する場合がほとんどで、もしホームで点灯させれば運転士が事故と認識して即座に非常制動をかけかねない。実は鉄道会社でも頭を悩ませている問題だ。興奮冷めやらぬ中ではあるが注意したい。

街中で広告入りのティッシュをもらうことは多い。しかし、こんなに多くの種類があるとは思わなかった。

岡本ティッシュのブースで見たのは黒いティッシュ。これは初見だ。どういうところで使うのだろう。葬儀業者なんかには良さそうだが、これもアイデア次第だろう。使うのにも勇気がいるが注目度抜群だ。

販促品というと業者同士が商談をして細かいやり取りをしているようなイメージがあったが、それらを含めてすべてネット上でやってしまう、その名も販促花子。消費者が商品をネットで買うように企業がノベルティをネットで買うのだ。

トコロという会社のブースで不思議なものを見つけた。「マステ」と書いてあるのだが、実はマスキングテープのことだ。マスキングテープというと、いわゆる養生用テープのことで主に塗装の際に塗ってはいけない場所をかばうときに使われる。男性はプラモデルで使ったことがあるのではなかろうか。しかし、このカラフルなマスキングテープを使うのは女性だ。かわいいマスキングテープを封筒や便せんに貼ってデコレートするのが流行っているという。

そこで、あらかじめ印刷を施した適度な長さのマスキングテープをノベルティとして配っている企業があるという。どこにマーケットがあるか分かったものではない。最少100ロットから個人からの注文も受けるという。ただし100ロットでは高くつくので、友達とデザインを持ち寄ってシェアしてもよい。1ロットで8枚のテープが入っているので8人で共同注文するという手もアリだ。

最近はクリアファイルをくれる企業も多い。そのクリアファイルを最高の印刷技術でプレミアムクリアファイルを作っているのがこの大洞印刷だ。世界最小クリアファイルはあくまでも企業PRのために作ったとのことだが、この小ささでちゃんと文字が印刷されているのが技術力を感じる。

大きさがもっと分かるように名刺を置いてくださいと頼んだら、同社の河村さんがクリアファイルで作った名刺を置いてくれた。こっちの方がすごいと思いながら撮影したが、小ささがお分かりいただけるであろうか。もはや最少ファイルに焦点を合わせると名刺にはピントは合わない。

IDカードやスマートフォンをネックストラップに付けている方も多いだろうが、コクーゾでは虫除け機能、香り機能、蓄光機能等が付いたプレミアムストラップを開発している。ストラップをこすったらアップルやストロベリーの香りがするのは面白く女性に人気が出そうだ。

また、虫除け機能はすでに手首や足首に付けるものではドイツのサッカーチームや防衛省でも一部使用されているそうで、ネックストラップに応用しようというものだ。

次はプラスチックのメーカーであるタキロンだが、このプラスチックはサトウキビの搾りかすから作ったエタノールを混ぜて原料としたバイオPETだ。コストは若干高くなるが、環境に配慮した企業イメージを前面に出すことができる。

お次は、削りくずの出ないスクラッチカード。とはいってもカードに限らず普通の紙でもいいし、両面でも構わない。宝くじのような物理的に何かを貼っているわけではなく、印刷技術でスクラッチの機能を施しいているために自由度は高い。アイデア次第だがくじにする必要はなく、名刺の名前の部分をスクラッチにしてしまうとか、女性のプライベート名刺の携帯番号部分に施してしまえば「ここを削って」と言われなければわからないので、教えたくない相手にはただの印刷上のデザインにしか見えない。仮に落としてしまっても個人情報は教えた人にしか見えないというわけだ。

女性社員に持ってもらっているカードのハート部分がスクラッチだ。

外国人の間ではピンバッジを交換する習慣が昔からある。日本にもピンバッジはあるが、交換するというよりも記念品として購入するかもらうものという気がする。東京オリンピックに向けて外国人観光客が多くなる中で、日本にもピンバッジを交換する習慣が根付いてほしいとデザインアンドデベロップメント社は言う。

小さいものだが、日本の繊細なものを造る技術が生きる分野だと思う。外国人がアッというような、クールジャパンピンバッジを製造して頑張ってほしい。

今やノベルティというと安物やつまらないものとは限らない。販売するものの値段によっては結構なものも多い。敷島産業もそんな企業のニーズに応えるべく、あらゆるグッズをそろえる。同社の山縣明子さんに2品だけ選んでもらった。手に持っているバッグは値段は安いがビニールと布を組み合わせたもので、実はあるようでないという。右手に持っているのはおいしそうなチョコレート…ではなくて実は国産ソープで値段は高いそうだが、品質とおしゃれさで勝負したい企業に人気があるという。使うのにはもったいないソープだ。

最後に紹介するのは大阪のフィッシュ。印刷会社であるが今回の出展では最近珍しい活版印刷で勝負する。昔の名刺は触ると文字の部分が少しへこんでいる活版印刷が当たり前だったが、今では活字を組む熟練した技術が必要なのと、デジタル技術の発達ですっかり見なくなった。そんな活版印刷でノベルティを提案しようというものだ。わかる人にしかわからない渋いノベルティだ。コンパニオンが持っているのはコースターと、その活版で非常に味のある、しつこいようだが渋い印刷物が出来上がる。

プライベートで高級紙に活版印刷をして桐箱に入れた1万円もする名刺も人気だそうだ。こうして作られたコースターやポストカードは確かに高級感が漂う。桐箱入りまでしなくても、プライベート名刺を手ごろな紙で活版印刷製作してみてはいかがだろうか。この厳格な雰囲気の名刺は記者も欲しいと思ったくらいだ。

おまけと言えばそれまでだが、されどおまけで、配る側もいいものを渡したい、もらう側もいいものをもらいたい、それを供給する側も趣向と工夫を凝らしてより良いものを開発したい。実はみんながハッピーになれる小さなモノ、しかし大きな市場が広がる夢の商材なのかもしれない。会場の雰囲気はいつまでも笑い声が絶えないような気がした。いつかここで紹介したノベルティがみなさんの手の中で微笑む時が来るかもしれない。

 

※写真はすべて記者が撮影したもの。取材は主催者許諾済みで、取材内容は対象対象に個別に承諾を得て掲載。

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