【武道便所】トイレパラダイスvol.2~日本一トイレとその兄弟姉妹~

  by 千徒馬丁  Tags :  

『今日の服装は目立たないようにしてきたからバッチリ』

「大丈夫、ハチの外見はいかにも変態て感じじゃなくてよく考えたら変態て感じだから、堂々としといたらかるく2~3時間いけるで」
バッチリの根拠がわからないハチの気合いの報告に、ハチの外見が変態か否かを基準にドコまで便所に攻め込めるかを説く会話で始まる画像撮影スパルタ指導実践タイプ。

【トイレ雪解けを待つ】

『ココかなァ・・・これホテルで敷居が高い感じがするんだけどココはちょっと入っていけないなァ、中には無理だなァちょっと』
「そのホテルでトイレのこと聞いてきて」

敷居の高いホテルのフロントに行くのを躊躇していたら運良く駐車場に女性がお見送りに出て来、駐車場に車を停めると女性がハチが車内から出てくるのを待っている様子だったので、その女性にトイレがあると思しき庭の入口を聞くと、女性はこう言った。
「今の季節はパンフレットで見るほどキレイな感じではないですよ」
「あ、大丈夫です。あの~・・・珍しいトイレがあると言うのでトイレのほうを見たくて来たんです」
よかったなハチ、庭を愛でに来たと思われるような第一印象を抱かれて。
「そういうことならあちらが入口です、お気をつけて」
お上品な対応を受け、お上品に便所観察をしに来たと告げたハチが、お上品にトイレに向かうと、そこには無情な看板があったと言う。

『ダメだ、冬季閉鎖中』
「冬だからって理由で便所て使えへんくなるん?」
『雪でしょ』
雪、そんなにか。
雪が降っても積もらない地域の関西在住である私には、雪が降るから便所が休む感覚がわからないが、雪国生まれ雪国育ちのハチによるとトイレまでの道中に除雪が入らなければトイレに辿り着くことが出来ないため、積もれば融けるのを待ち、融けないまま再び積もるので辿り着けることはついぞないらしい。
「しゃぁなしやな。春の雪解けを待って画像を撮るとして次いこか」

【朝市のトイレは昼を過ぎると活気がない】

『このトイレのことかな?このトイレの何が珍しいんだろう?』
「小屋みたいやな、わざとかな?」
『朝市のためのトイレだから朝市がやってる時に来たら違うのかもしれないなァ』
「ハチ、ソコまでどのくらいの時間で来れるって?」
『1時間半くらいかな、いやそこまではかからないかなァ1時間ちょっとだな』
「朝市が6時から始まってるとして4時半に家を出たら十分やな。つぅことは4時起きか~なかなか、は」
『行きませんよ』
ハチ、喰い気味に拒否。
「朝市がやってる一番の活気があるだろう時が、そのトイレの本来の姿やろ」
『だろうね』
「だったら、あ」
『行かないよ』
喰い気味ハチの、便所魂のレベルの低いこと。

「ハチの画像は、端が切れる傾向にあるな。外観、撮り直しね。あと上も切れがちやから上ちゃんと入れるように意識して。それにしても活気がないなァ」
活気がないを連呼してハチの便所魂を磨く。

「ハチよ、本気かコレ」
『何が?』
「映り込みはなはだしいで。わざとやんな?画像のおおかた下半分がハチの車のボンネット」
『それ、ボンネットじゃなくて屋根ね』
「そんなんどっちゃでもええねんっ使えへん画像が多いねんっ全部アカン撮りなお~~~~~~~しっ!」

「うーん・・・私には屋根がナナメに見える」
『その屋根、左右で幅が違うように見えるけどな』
「どういうこと?それ画像でわかるように撮れる?んじゃ私、行くとこあるからまた後で。見本のように画像撮って送ってきといて、チェックしたら連絡するわ」

【お問い合わせ先は、市役所建設課景観緑花係】

ハチから送られていた画像を見て閻魔様は激怒した。
9割がたピントが合っていない。
確かに、トイレはピントがズレてしまう素材と映り込みが激しい材質で満ち満ちている。便器もタイルも洗面も、白い陶器。反射する白い陶器はピントが狂う。タンクのレバーも洗面のパイプもさしこみベントも、黄銅。ピカピカに磨かれると鏡よりも映り込む。
私のように8年の経験値があれば誤魔化しがきく程度の映り込みに留め、レンズに手をかざしてはカメラを我に返させピントを合わすことも出来ようが、ハチはいかんせんまだまだ修行の身。しかしそれを差し引いて査定を甘くしても異常にピントが合わない。強いて言うならでかした画像は、この便所に関する問い合わせ先の明記がある貼り紙を撮影したことである。

市役所建設課景観緑花係に電話をすると、屋根がナナメになっているように見えるデザインに何らかの意味があるかどうかという私の質問には「わからない」という回答であったが、35歳の女性職員が耳よりな情報をくれる。
日本一トイレと朝市のトイレはデザイナーが同じであるらしい。
「もうひとつ、庭の中のトイレも紹介されて行ったんですけどね、冬季閉鎖中やったんです」
「ええ、この時期は閉鎖となっております」
「もしかして庭の中のトイレも同じデザイナー?」
「はい、そうです。同じデザイナーのトイレです」
つまり庭の中のトイレも朝市のトイレも、日本一トイレのデザイナーがデザインしているのである。
庭のトイレは日本一トイレの姉妹トイレ、朝市のトイレは日本一トイレの兄弟トイレということだ。

私はこの情報を撮影部隊機動戦士修行僧のハチに告げる。
『へぇ~じゃあのおばちゃんが教えてくれた3つは同じデザイナーてことだね』
「チェーン店巡り、てことや。にしては、日本一トイレと兄弟トイレは同じデザイナーとは思えへんな」
『そうだな、まったく違う雰囲気だったもんな』
「こうなると姉妹トイレがどうかってのが非常に気になる」
『同じデザイナーなのにあれだけ違うもんな、また違った雰囲気なのかな?』
「姉妹トイレは4月からやってさ」
『そっかァ姉妹トイレだけ4月になるってことか』
「記事は3つの比較でいきたいんだけど」
『そうなると画像が要るわけか』
「要るよね。ほんでハチの兄弟トイレの画像ほとんどピント合ってなかったから撮り直し」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
「いつなら撮り直し出来るん?」
『早くても週末だな』
「いいだろう、週末で」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
「ついでやからもっかい日本一トイレも行ってほしいねん、記事の骨子が決まったら足りない画像が出てきた」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
「リベンジしてきたら?女子便所。たった2枚しか撮れてないし」
『今はもうあれで精一杯。こんな短期間で3回も行ったらアヤシイだろ、さすがに。外でやきいも売ってる姉ちゃんには怪しまれてると思う』
画像を送るのと充電の兼ね合いで一旦車に戻り、再び建物に出入りするのを繰り返すものだから、やきいもの売り子に怪しまれているはずだと主張するハチ。
オッサンが気にするほど姉ちゃんはオッサンのことを気にしてはいないから気にするな。

「先週行った時と同じ服装で行って。こっちの画像の関係で違う服装だと困るから」
『なに言ってんだ?こっちの画像って?』
「こっちはこっちでスクショが必要やねん」
『スクショて何が?』
「悪いことは言わん何も気にせず同じ服装で行け」

こうして片道小一時間、足繁く3回目を通う羽目になったハチは、その行動力だけは有り余っているのが功を奏し、市役所に問い合わせて閉鎖中の姉妹トイレの写真を撮らせてもらう約束を取り付けてきた。
燻っていた便所魂がいよいよレベルを上げ始めたようだ。
『ただ、荷物がいろいろと中に入れてある状態らしくて。それがどれくらい画像に映り込むかだよね』
「何年やってると思ってんねん、そこはちゃんと指示出せるから。こっちに荷物移動さしてゆぅて」
『移動させるのかよっ・・・それ、て・・・私がしますよね?』
「アナタ以外に誰がいるんですか?」
『ですよね。動かせる荷物だったら動かすから別にいいんだけどさ、動かせない時にはどうする?』
「何年やってると思ってんねん、その時には映り込みを利用した記事に仕上げるまでよ」
『だったらどの荷物も動かさなくていいだろっ』
動かさないというのと、動かせないというのは似て非なるものである。

【同じデザイナーのデザイン3箇所のトイレを比較するための画像を集めよ、画像部隊機動戦士修行僧ハチよ、燃え上がれ!】

外観の違いを見てみよう。

同じデザイナーではあるが、日本一トイレはトイレ単独の建物ではなく道の駅の中のトイレなので趣が違うのも納得ではある。
姉妹トイレと兄弟トイレがトイレ単独の建物であるが、雰囲気は似ておらずこれが同一人物のデザインかと思える。
姉妹トイレはメルヘンチック、兄弟トイレはレトロモダン。
姉妹トイレには大人用と子供用がそれぞれ独立してあり、子供用のトイレはガンダムをイメージした造りになっているらしい。

平成っ子にまでガンダムが浸透しているということか。

さすがに冬季閉鎖しているだけあって、雪深い。

閉鎖しているんだろうなァと思える出で立ちで開いている門を撮るよう指示を出すと、早くも靴をビシャビシャにしながら撮影するハチ。
まだ門すらくぐっていないのに、コンディションがすこぶる悪い。
「んじゃソコ撮れたらトイレ行こか。閉鎖中やしたっぷり時間かけてもええやんな?まさか管理のひと付き添いのもとの撮影とか?」
『いいや、自由。そもそも許可要らなかったんじゃないか、てくらい』
「んじゃとっとと行け、ハチ」
『ハチ、行きまーす!』
ガンダムは子供に影響するのでなくきっと、子供を連れてきた親世代に作用するんだな、ちょうど40代あたり。
ともに40代の我々はガンダム世代ということになろうか。
「ガンダムって有名やからさ、そのセリフがガンダムってことはわかんねん。アムロが言ってるセリフってのも知ってるねんけど、私ガンダムのストーリー知らへんねん、見てなかったからアニメ」
『ああ、俺も。』
「オマエもかっ」
ガンダムに明るくない我々がお届けするガンダムをイメージした子供用トイレは、ガンダムファンにとってきっとありがたくもなんともないのかもしれない。
ガンダムファンが愛すべきポイントをきっとハチは撮影出来ていないのだろう。
練習台としてなんてハードルの高いトイレを選んだんだ。
私にしてもどのあたりにガンダムが出ているのかが分からず終いであるが、感じることはカクカクしているということだ。

冬季閉鎖中なのでもちろんベンチには誰も座っていないが、私にはココに座って孫を見ているおじいちゃんの姿が見える。
走り回る孫を目で追い、時折立ち上がっては孫の姿を確実に捉えるおじいちゃん。
向こうまで走った孫がこちらへ戻ってくると、何も言わずにおじいちゃんはベンチに座る。
見守っているほうがハラハラするだけのことで、見守られている本人は見守られていることには気づかない。
自分が見守る立場になってはじめて見守られていたことに気づくのだ。
そんな見守りベンチを後ろから見守るガンダムトイレ。

孫よ、おじいちゃんの背中を見たか。
とりあえず、手を洗え。

低めの2つの建物。

ひとつは子供用個室のようである。
秘密基地仕立てかはたまた忍者屋敷仕立てなのかもしれない。
横の倉庫のように見える場所と地下で繋がっていて、脱出ルートになっていたりして。
脱出するにはちょっと距離が近すぎて気休めにしかならないが、本当に脱出ルートになるような距離で作ってしまうと途中で不安になって泣き出す子供が続出しかねないので、距離的にはこれが限界だろう。
これが脱出ルートで繋がっているかどうかが気になる御仁は、4月以降ご自分の目で確かめてみられたし。

積もった雪の真ん中に穴があるということは、蛇口から水が出るということでよろしいか。

トイレが使えなくても手を洗う人間がいる、さすが抗菌・除菌・防臭の国ニッポンの民。

冬季閉鎖中なのにクリスマス限定アーチなどは施さないだろうから、このアーチは年がら年中あるとみてよいだろう。

さすが庭の中のメルヘンチックなトイレである。

ドアの高さ推定2m30ほど、これだけの高さがあるドアがガラスだと重い。

重いドアは圧がかかる。

怪我には十分注意が必要だ。

【兄弟トイレは疑問の湧くトイレ】

兄弟トイレの屋根に雪が積もってしまうとナナメになっている感じがちっとも伝わらないが、この屋根の形状は画像で見るよりも複雑なカタチをしている。

一見まっすぐの普通の軒に思えるが、アングルを変えるとまっすぐではないことがわかっていただけるかと思う。

外洗面の丸いフォルムとレトロなタイルが寒風吹きすさぶであろう雪国であったかいイメージを醸し出す。

色合いもちょうど良い暖色。

私が目隠しだとばかり思っていた板は、

豪雪地帯の雪囲いと言い雪の重みでガラスが割れないための雪対策であるらしい。

細長い板を一枚一枚はめ込んで組んでいくようだ。

雪国は雪かきもあるし男性諸君は冬になかなかの重労働を強いられることと思うが、冬季閉鎖中のトイレでさえも例外ではないようだ。
ひとっこひとりいないトイレにも管理の手が入る。

そんなトイレでひっそりと、ハードルの高い画像撮影練習を黙々とこなす男もまた、なかなかの労働を強いられる雪国の男のひとりであろう。

「アングルが決まらないなら正面・横・ナナメ、微妙に変えて枚数を撮って自分で比べて見てみ?見る目が出来てないねんハチ」

陽射しが足りないのでドアを開け放しにし、人に見られないかとビクビクしながらカメラを構え、出来る限り仰け反ったりしながら撮影するハチは、真剣になるあまりビデオ通話で指示を出している私のアドバイスを聞き漏らす。

漏らす前にキッチリと用を足し、そして用を成せ。
ハチの修行とトイレパラダイズはまだまだ終わらない。

※全画像:筆者および助手ハチ撮影

サルコイドーシス(以下:サル)を患うこと早5年目。そろそろ人間になっているかと思いきや直近の経過観察でもまだサル。しつこいぞ、サル。いつまでだ、サル。 プロフィールのイラストは、入院中の暇つぶしに院内をウロチョロしていた時に知り合った職業が元美少女エロ漫画家の山田課長が、サルの病名普及のためペペペーと描いてくれました。 そんなわけでね、今日はよかったら名前だけでもおぼえて帰ってくださいね、特定疾患『サルコイドーシス』略してサル、難病です☆

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