この時期やたら秋を強調したビールが並んでるけど差はあるのか? 調査してみた

  by 矢野 竜広  Tags :  


8月と言えば、夏真っ盛りである。
 
蝉は激しく鳴き、少年達の肌は日増しに黒くなり、インスタ女子達はナイトプールに行く。そんな夏のど真ん中であるにもかかわらず、スーパーやコンビニのビール売り場では既に「秋」の文字が躍っている。

こういう秋限定アイテムって、本当に差はあるのだろうか?本家ビールのスピンオフ風にリリースされているけど、そもそも本家とは違うのか。また、並べて飲んでみたら違いはわかるのだろうか。無類のビール好きライターでビアエッセイストを自称する矢野(@beeressayist)、気になったので実際に買って飲んでみた。

まずは、サッポロ『麦とホップ 秋の薫り麦』を飲んでみる。

1本目に選んだのは、新ジャンルのサッポロ『麦とホップ 秋の薫り麦』。普通、紅葉のイメージでラベルの色を赤にするところ、こちらは紫色を選んでほんのり差別化に成功している。

ただし、問題は味である。プレスリリースを見ると、
 
「ひと手間かけて弱火でじっくり丁寧にローストすることで生まれた、香り豊かな焙煎麦芽を一部使用」とある。
 
…これはもう飲んでみないとわからない。とにかく実飲!
 
あれ? ものすごくストンと喉に入ってくる気が。横にいた妻(そこまでのビール好きではない)にも飲んでもらうと、「え? 普通の『麦とホップ』よりはどっしりしてるよ」とのこと。そうか、と一口、もう一口と飲んでいくと、確かに本家の『麦とホップ』より明らかに重くなってきた。飲みごたえが蓄積されてくる。そして、最初はちょっと酸味が強いかな? と思っていたけど、飲み進めていくうちに酸味が馴染んできた。

これは「一口だけで判断してはならない!」という戒めのようだ。一口目の印象と後半の印象が結構異なる。確かに秋の夜長に、味の移り変わりも含めてゆったり楽しみたいアイテムである。

というわけで、次行ってみよー。

詳細は公式情報を
http://www.sapporobeer.jp/product/sapporo/akinokaorimugi/index.html [LINK]

続いては、サントリー『京の贅沢』でホップに唸る。

今回選んだ4本のうち、サントリーだけが本家のスピンオフ系ではなく、さらに新製品としてリリースしていた。コンセプトはズバリ「京都」。京都はもちろん春夏秋冬存在している街だが、パッと思い浮かべるイメージは秋である。「で、何で京都を名乗れるの?」というと、サントリーの京都工場で造ったから。この「大手なのに地ビール的側面を打ち出す」っていうのは、キリンの47都道府県よろしく最近の流行りかもしれない。

さあ、そんなことはさておき、実飲!
 
グラスに顔を近付けた時点でかなりホップの柑橘系の香りを感じたけど、実際に飲んでみてもかなりホップを感じて苦みも強い。調べてみると、アロマホップを2倍使用しているらしい。ちなみに、ホップには大きく、苦みと香りを付ける役割があるのだけど、アロマホップというのはその名の通り、主に香りを付けるために使われるホップのこと。
 
麦芽に関しては、うまみ成分を多く含む“旨味麦芽”を1.3倍使用しているとのこと。やはり秋は「どっしり」がキーワードのようである。こちらはアルコール度数も6%とやや重だ。
 
でも、うん、この『京の贅沢』はホップ強めという意味で、かなり差別化ができている印象である。
 
詳細は公式情報を
http://www.suntory.co.jp/news/article/12955.html [LINK]

3本目はアサヒ『クリアアサヒ 秋の膳』で個性に迷う。

続いては、アサヒビール『クリアアサヒ 秋の膳』。パッケージから判断するに、いかにも「まあ、秋が来たから秋仕様のものも造りますか」的なお手軽さを感じる。クリアアサヒは今、販売が好調だからできるだけ本家のイメージを損なわないようにしたいのだろう。
 
特徴は、

・低温で長時間かけてじっくり焙煎した特別焙煎麦芽を一部使用
・重厚な香りと苦みが特長のドイツ産アロマホップを使用

ここら辺だろうか。
 
『麦とホップ 秋の薫り麦』のプレスリリースのデジャヴのようで区別が付くのか不安だが……実飲!

正直、あんま区別つかねえっす!

こちらも一口目は結構ライトな印象なのだけど、後味はそれなりに重さを感じなくもない。そして、「重厚な香りと苦みが特長のドイツ産アロマホップ」はどこだ!? と探したくなってしまう。切れ味が持ち味のアサヒだけに基本スッキリ系である。ただ、このアイテムはアルコールの辛みを結構感じるので、そこが他と違う点と言える(アルコール度数は6%。麦とホップは5%)。
 
まあ、『秋の膳』と食事と合わせることを推しているようなので、料理と合わせたらまた印象が変わるかもしれない。実際、プレスリリースでも「秋が旬のさんまやきのこなどの食材との相性が良い秋限定の新ジャンルです」と謳っている。
 
詳細は公式情報を
http://www.asahibeer.co.jp/news/2017/0710.html [LINK]

締めの重鎮『キリン秋味』で納得させられる。

最後は「since1991」を前面に出す、もはや長らく日本の秋を彩ってきた『キリン秋味』。今回の4本の中では、唯一の「ビール」であり、そのぶん値段も高く(他のほぼ倍)、さらに26年という歴史。これはもう前提条件からしてして圧倒的な横綱感が漂う。
 
特徴をプレスリリースから拾うと、

・通常ビールの約1.3本分の麦芽をたっぷりと使用
・アルコール度数は少し高めの6%
・味覚の秋にふさわしい、じっくりと楽しんでいただけるコクと味わい
・秋ならではの旬の食材とともに、豊かな秋の到来を楽しんでいただける

 まさに、「麦芽1.3倍」「度数6%」「じっくり楽しめる」「旬の食材とともに」と秋限定ビールの特徴を余すことなく満たしている。むしろ、この商品が秋限定ビールというジャンルを作り上げたと言っても過言ではないだろう。
 
さて。実飲!

うん、間違いない!
 
まさに王道の味わいである。新ジャンルの「どっしり」とビールの「どっしり」はこうも違うのか、と誰もが思うはずである(好みはあるだろうけど)。なんだろう、一口飲んだ瞬間、「そうそう、秋のビールってこれだったわ」と思わされるのである。
 
『キリン秋味』は別格。
 
これは覚えておいて損はない情報だろう。
 
詳細は公式情報を
http://www.kirin.co.jp/company/news/2017/0705_02.html [LINK]

飲み比べてわかったこと~みんなちがって、みんないい~


というわけで、飲み比べをしてわかったこと。
 
それは、秋のビールって何となくラベルが似てるけど、やっぱりそれぞれ結構違うぞ!
 
ということ。超ざっくりまとめると…
 
・サッポロ 麦とホップ 秋の薫り麦 → やや重系新ジャンル
・サントリー 京の贅沢 → 京都よりホップに個性あり
・アサヒビール クリアアサヒ 秋の膳 → 食事と合わせたいキレ系ビール
・キリン 秋味 → 別格のどっしり感
 
こんな感じだろうか。七輪でサンマを焼きながら、みんなでワイワイ飲み比べたらきっと楽しくなるはず。皆さんもぜひ飲み比べをしてみては?

矢野 竜広

1980年生まれ。東京都出身、妻の故郷である鳥取県に移住したライター、ビアエッセイスト。 立教大学を卒業後、広告制作会社勤務のコピーライター、事務所所属の構成作家を経てフリーランスに。愛してやまないビールを、飲むだけではなく学びたい!と数々の講座を受講。ビアバー巡りにも勤しむ。そんな大のビール好きが高じて、『ビールの図鑑』(マイナビ、2013)、『日本のクラフトビール図鑑』(マイナビ、2015)の執筆に携わり、地ビール会社にも勤務。NHK文化センター(鳥取教室、米子教室、梅田教室)でビール講座の講師を務める。その他著書に、詩集『そこに日常があった。』(文芸社、2002)、『・ツナ缶×1』(Kindle版、2014)、『「結ぶ」と「築く」~鳥取・大山町の移住者たちが挑んだ婚活事業~』(∞books、2016)。趣味は一人旅、ノンフィクションの書籍を読むこと、ドキュメンタリー鑑賞。

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