JR中央線に乗って車窓から外を眺めていると突然目に飛び込んでくる横断幕。
「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」
これは「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「天空の城ラピュタ」「崖の上のポニョ」といった数々の作品で著名な宮崎駿監督の発案によりスタジオジブリのスタッフが制作し6月16日にスタジオジブリの社屋に掲げられたものだということです。この件に関してスタジオジブリでは基本的に取材を受け付けておらず、詳しくは8月に発行される小冊子で明かされる、とのこと。
それなりに大きい横断幕ですけど、建物が線路からやや離れた位置なので、よく注意していないとわからないですし、イラストなども、遠くからなので良く見えないんです。というわけで、近くに行って、もっと良く見てきてみました。
これが横断幕の全体像です。左に「いちご」のキャラクター。右に3つの「ひまわり」のキャラクターが配置されています。
宮崎監督が小金井市のために作ったイメージキャラクター「こきんちゃん」を彷彿とさせるほのぼのとした絵柄ですね。
スタジオジブリに関してはテレビ番組や報道などで何度も映像つきで紹介されているのでご存知の方も多いでしょうが、東京郊外の小金井市という場所にあり、社屋はいくつかに分かれています。テレビで見かける緑に包まれた社屋や宮崎監督のアトリエ、福利厚生施設等は別棟となります。このあたりには「となりのトトロ」を思い出させるような大きな木もあり、一種独特の雰囲気です。
不思議な偶然といいましょうか、スタジオジブリの真横には、東京電力の変電所があります。JRに電力供給するためのもののようです。
そのためでしょうか、スタジオジブリの周辺には電線や鉄塔がかなり多いような気がします。
「原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と書いたスタジオジブリの周りが電線と鉄塔で覆われているというのは、なにか奇妙な偶然だなと感じました。
それにしても原発事故の後、骨太なメッセージを発信している作家やアーティストは意外と少ないような気がします。今思い出すだけでも、村上春樹さん、小林武史さん、斎藤和義さん、高村薫さん、大江健三郎さん、坂本龍一さん、澤地久枝さん、瀬戸内寂聴さん、鎌田慧さんなど、その数は限られます。作家やアーティストがこれらの問題に対して何も感じないということはさすがにないと思いますが、何もメッセージを発信しないまま終わるとしたら、それは表現者としてどうなのだろうという疑問は感じてしまいます。この話を友人としたところ
「みんな、大事なことは海外メディアにしゃべってる気がする……日本のメディアのせいなのかしら。」
と言っていました。メディアがやらせてくれないのであれば、ネットで直接やればいいような気もしますし、スタジオジブリのような方法もあるんじゃないかと思います。果たして、表現者達は、一体、なにを恐れているのでしょうか。感じたことすら表現できないとしたら。それは由々しき事態ですよ。
飾らない、ストレートなメッセージでもよいのではないかと思います。荒削りな表現でも、わたしたちが考えたり、話し合うきっかけをくれるだけでよいのではないかと思います。