4月になれば、毎年見掛ける新社会人。ごくごく当たり前の光景ではあるが、そこから脱落した人間のその後は厳しいものがある。特に、地元で就職しようとした人たちの一部は悲惨という言葉が当てはまる。
厚生労働省と文部科学省の調査によると、今春卒業の大学生の就職率(2月1日現在)は82・9%と、前年同期比で1・2ポイント上回った。また、厚労省の調査によると大企業での採用は3年ぶりに増加するという。
ひるがえって地方はどうなっているのか。中小企業がほとんどである地域は未だ好況の恩恵には与っていない。ある企業経営者は「人口減少でパイが小さくなっている中、新人を入れる余裕はない」と苦笑いする。
実際、他の企業も雇用状況は同様で、採用するのはもっぱら都市部から戻ってきた中途採用組ばかり。ほとんどが30代でUターンした理由は「親の介護」などを挙げていた。
中途採用を雇用している企業のほとんどは「若手を育てるだけの余力がない中、中堅以下の人間を雇う体力がない」と話す。
こうした中、地方で都市部の大学を出て新卒で入社することは非常にハードルが高い。実務経験のない新卒者が参入する余地は、あったとしても極めて狭い。
こうした現状を取材している中、風俗店オーナーに1人の女性を紹介された。個人が特定されるのを避けるため、詳細は記せないが国家資格を持ち、有名大学を卒業したという23歳の佐々木香織さん(仮名)。
「資格があるので事務所などで働こうとしたのですが『生憎、採用できる状況じゃない』と門前払いされることがしばしばでした。紹介状を持って行っても同じ。
企業の採用試験も受けましたけど『資格があるならそういった事務所で働いたほうがいいんじゃない?』と言われて不採用。
都市部で働こうかなとも思いましたが、やはり地元で就職したかったので取り敢えず受けられるところはすべて受けましたが、お祈りの手紙ばかりでしたね(苦笑)」
気付けば内定を得られないまま卒業を迎え、地元に戻ってきた。諦めて都市部で働こうと思ったが、就職する活動資金がない。仕方なく高収入アルバイト誌を眺めて、今の風俗店で働くことになった。
「何でこんなことしているんだろうと思うことはありますよ。嫌な思いもするけれど、誰にも相談できないし。おまけに既卒なので就職できる見込みも不透明ですから、たまに泣きたくなる時もあります」と佐々木さんは涙ぐみながら語る。
複数の風俗店店主によると、佐々木さんのようなケースは決して珍しくないという。そして、就職できずに再度戻ってくるということもままあると……。