今回は比較的手に入りやすい「鹿肉」を使った料理を紹介してみましょう。若干、
「アナグマも鹿も手に入らないだろ!」
と言う人は狩猟免許を取得して狩猟グループに入る事をオススメします。市場では手に入れにくい肉が「無料」で手に入るので趣味も兼ねれば一石二鳥です。
そして筆者的にと言うかライター的な立場で悩むのが
「鹿肉を生食で食べる事を推奨するか否か?」
ってのがあります。昨今の食肉関係の事件などを考慮すると「必ず加熱して食べましょう」と書いておいた方が無難ですが、そこをあえて
「自己責任で食べるならいいじゃん」
的な方向で進めておきます。まあ、あくまでも「こういう食べ方があるよ」みたいなニュアンスなんで、お前ら全員ん生で食えって話ではありませんので御了承下さい。
ちなみに「なぜ鹿肉を生で食べてはいけないのか?」って所も説明しておかないとイカンと思うのでザックリ説明しておきましょう。
E型肝炎に感染している鹿を生で食べた場合「E型肝炎」(HEV)に感染する事があります。他にも開発途上国などで飲料水から感染する場合もあります(こちらの方が確率としては圧倒的に高い)
症状が重いと「急性肝炎」が発症し38℃以上の高熱が数日間続き、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、右季肋部痛などが現れ、その後褐色尿、黄疸が現れるらしいです。
成人の場合は腎不全を伴うことがあり、不顕性感染で終わることは少なく、重症化する傾向があります。
と、非常にヤベェ感じで、これじゃ鹿肉を生とか自殺行為に思えますね。まあ開発途上国の水を飲むのと変わらないっちゃ変わらないのですが。
国内では鹿肉を生で食べて「E型肝炎」が発症した事例が確認されましたが、同じ鹿肉を少量しか食べなかった家族は発症しなかったようです。
さらに細かく調べると東京都の奥多摩地区で駆除された鹿の「E型肝炎ウイルス」の保有状況を「東京都健康安全研究センター微生物部」が調べた結果、
野生の鹿の肝臓(29 頭分)、血液(28 頭分)および腸内容物(24 頭分)の肝臓、血液について PCR 検査を行った結果、いずれからも HEV 遺伝子は検出されなかった。
また、ELISA 法による HEV 抗体検査を行った結果、肝臓は全てが陰性であったが、血液 28 検体中 4 検体が陽性となり、14.3%の鹿に感染履歴があることが示唆されたそうです。
「14.3%」とかなり高い確率で鹿が「E型肝炎」に感染した事があると言う事です。しかし、あくまでも履歴であり、検査した鹿を仮に食べたとしても「E型肝炎」に感染しません。
ただし、鹿が発症している時に大量に生食すれば、かなり高確率で「E型肝炎」が発症する恐れがあると言う事です。
つまり、タイミング悪いと「E型肝炎」になる確率がスゲー高いので生食は止めましょうと言う話です。
ちなみに豚や猪からも検出されていますし、牛や馬からも検出されているので、どれを生で食べてもそれなりの危険性があると言う事ですな。
あと知らない人の為に言っておきますけど、豚と猪は絶対に生で食べては駄目です(最近は無菌ブタとかあるけどね)
こちらは凄い確率で肝炎になると思って間違いないです。
と、言う危険を知った上で「美味しい鹿の食べ方」の話すを進めましょう。
「鹿の刺身」の材料
鹿肉 ・・・適量
日本酒 ・・・適量
醤油 ・・・適量
ニンニク・・・適量
以上です。もはや分量の意味がない感じですが、酒と醤油の割合はセンスです。漬けこんで食べる時に塩っぱ過ぎない程度の割合でお願いします。
まず鍋に日本酒と醤油をいい感じの割合で入れて軽く煮立たせます。冷めたらビニール袋に入れて、そこへスライスしたニンニクを入れます。
ニンニクは刻んだりすると強い抗菌・抗カビ作用をもつ化合物「アリシン」と言う奴が出るので殺菌作用は半端ありません(なお、時間と共に効果は薄れる模様)
そして大きな鍋に湯を沸かし、そこへ新鮮な鹿肉を入れて軽く茹でます。ガッツリ茹でればそれだけ安全ですが、より生っぽく食べたい人は加減しましょう。絶対的な安全が欲しい人は普通に「チャーシュー」(煮豚)を作るつもりで火を入れれば100%安全になります。
ちなみに、これは鹿肉の表面に付着した雑菌を死滅させる為の工程です。鹿肉は屋外で解体される事が多いので、お世辞にも衛生的に解体されているとは言えません。さらに肉の表面に付着した血も流せるので、タレが汚れないメリットもあります。
肉は熟成させた方が美味しいのですが、肉は外側(外気に触れている側)から徐々に腐敗も進むのです。この「腐敗」を遅らせる為に、肉の外側を加熱殺菌しておくのです。
そして表面を殺菌したら先ほどのタレに漬け込みます。タレの入った袋に鹿肉を入れたら空気を抜くようにして袋を縛ります。こうすると鹿肉が空気に触れないので、より雑菌が繁殖しにくくなり腐敗を遅らせる事が出来るのです。
あとはタレごと冷蔵庫に入れて保存。鹿肉の鮮度や状態により賞味期限は上下しますが、一週間程度で食べきるつもりでいて下さい。
一般的には鹿肉を刺身で食べる場合は冷凍しますが、やはり冷凍すると味が落ちるので、筆者的にはタレに漬け込むのがオススメですね。醤油の塩分とニンニクのアリシンで殺菌効果が最高に高まったタレの中で雑菌が繁殖する事はほぼ不可能(でもE型肝炎は加熱しないと駄目)
タレに漬ける事で「ニンニク醤油味」に限定されてしまいますが、どうせ食べる時はニンニク醤油で食べるので問題ないでしょう。
そして時間と共に肉は熟成が進み柔らかくなります。この「熟成」は冷凍したら進まないし、かと言って冷蔵庫に入れて外気に触れたままでは生食は不安。それを解決したのが「タレに漬け込む」と言う方法なのです。
あと「どうしても生は不安」と言う人もいるので、そういう人にはタレを回しかけてレンジで適度に温めると安心して食べて貰えるのも利点です。鍋でチョロっと温めても良いでしょう。