がん、脳卒中、心臓病、糖尿病に加え、厚生労働省がうつ病を「5大疾病」に指定して2年が経った。しかし、患者は増加の一途をたどり、減少する気配を見せない。
厚労省が行った患者調査によると、2011年の総数は958万人。日本人のおよそ13人に1人が精神疾患に悩まされているという状態だ。
厚労省の統計によると、患者数が増加したのは02年から。430万人余前後で推移していた患者数が711万人と急増した。
最近、メディアで向精神薬に対し否定的な記事を目にする機会が多くなった。
国立精神・神経医療研究センター(東京)の調査では、依存症が増加しているという。2000年~12年で向精神薬で薬物依存症になった患者数は2倍に。覚せい剤や脱法ドラッグに次いで3位。全体の15・1%を占めている。こんなニュースを目にしたことはないだろうか?
上記の薬物と並べられたら、服用中の患者の背筋が冷たくなるだろう。「自分は、そんなものを飲んで依存症になってしまうのではないか?」。こう考えたとしても不思議ではない。
「メディアでは『向精神薬が危険だ』と煽りますけど、そんなに危険な薬を出す訳がないでしょう。オーバードーズしたって、致死に至る薬は殆どありません」。別の医師は昨今の報道に苦笑する。
この医師によれば、身体的依存が抜けるのは種類にもよるが、10日ほど。問題は薬物に依存してしまう原因にあるという。
どの患者も好んで大量服用する訳ではない。「投薬しているが、病気が一向に治らない」。こうした不安が患者をオーバードーズに駆り立てる。
「心の病気はすぐ治るものではない。落ち着いて気長に待つしかない。無理をすると却って悪化するだけです」
不安を煽るのは我々メディアの得意芸。しかし、無知のまま報道すると一層周囲の偏見を招き、病人を更に薬へと手を伸ばしてしまうことになる。