『REANIMAL(リアニマル)』レビュー:子どもの目から見た不明確で不条理な世界! 新鮮な恐怖を味わえる今プレイすべき一作

「リトルナイトメア」シリーズの開発スタジオによる新作ゲーム『REANIMAL(リアニマル)』がとうとう発売となった! 同じ開発スタジオが作っているだけあって、「リトルナイトメア」シリーズに近い雰囲気を持っており、シリーズファンとしては見逃せない一作。しかしそれだけでなく、この人気シリーズとどう差別化を図ったのか? という点も興味深い。

当然のように筆者は発売日に自腹購入し、クリア! そこで、この記事で本作のプレイ感を紹介したい。

なお物語の核心など、直接的なネタバレは避けるものの、「ゲーム内容を一切知らずにプレイしたい!」と思う人は、ぜひ記事を読む前にゲームをプレイしてほしい。「買うかどうか判断するために、面白いかどうか知りたい」という人のために結論を先に書いておくと、気になっているのなら「買い」だと思う。「リトルナイトメア」シリーズファンの期待に応えつつ、新鮮な恐怖を与えてくれる一作に仕上がっている。

地獄のような世界を舞台に少年少女たちの戦いを描くホラーアクションアドベンチャー! 『REANIMAL』

『REANIMAL』は、地獄のような世界を舞台に少年少女たちの戦いを描くホラーアクションアドベンチャーゲームだ。とはいえ、これだけだと「『リトルナイトメア』シリーズと何が違うんだ?」と感じるかもしれない。

まずは、そもそも、「リトルナイトメア」シリーズの開発スタジオがなぜシリーズの新作ではなく、完全新作である本作を作ることになったのかという点に触れておこう。「リトルナイトメア」シリーズは、『リトルナイトメア2』までスウェーデンのゲーム開発スタジオであるTarsier Studios(ターシア・スタジオ)が開発してきた。ただ、販売はバンダイナムコエンターテインメントが手掛けており、作品の権利もバンダイナムコエンターテインメントが保有。

その後、ターシア・スタジオはスウェーデンのゲーム企業Embracer Group(エンブレーサー・グループ)に買収された。先に書いた通り、「リトルナイトメア」シリーズの権利を持っているのはターシア・スタジオではない。このため、「リトルナイトメア」シリーズの開発は、『アンティル・ドーン 惨劇の山荘』などの作品で知られるイギリスの開発会社・Supermassive Games(スーパーマッシブゲームズ)が担うことになった。

こうした経緯によって、「リトルナイトメア」シリーズ最新作『リトルナイトメア3』は、Supermassive Games(スーパーマッシブゲームズ)によって開発されている。一方、本シリーズから離れたターシア・スタジオは、完全新作として本作『REANIMAL』を開発することになったのだ。

「リトルナイトメア」シリーズと本作は、いくつかの点で似たものを持っている。

たとえば、先に挙げた世界観。ディフォルメ調の少年少女たちがダークな世界であがく……という基本的な世界観は、「リトルナイトメア」シリーズも本作も共通している。また、パズルアクションをこなしながらステージを進んでいくというゲームの基本的な流れも一緒だ。

ちなみに、『リトルナイトメア3』と本作は、別々の開発スタジオが作っているにもかかわらず、どちらも主人公が2人用意されており、協力プレイが前提。

だが、ゲーム内の要素を具体的に見ていくと、本作の方向性が「リトルナイトメア」シリーズとは大きく異なっていることに気づくだろう。

本作と「リトルナイトメア」シリーズとの大きな違いといえるのが、舞台となるフィールドの広がり。「リトルナイトメア」シリーズは、状況によって移動方向が変化することはあったものの、2D版『スーパーマリオブラザーズ』のように画面右へ右へと向かう一方通行が基本。これに対し本作は、移動方向が固定されていない。

そしてこうした移動方向の差が、世界観に影響を及ぼしている。本作は「リトルナイトメア」シリーズと比較して、現実的なのだ。

もちろん、ディフォルメされたキャラクターのルックスに合わせて、風景や建物も若干のディフォルメが施されている。また、ホラーゲームとしての独特な空気感を再現するため、現実を誇張したようなデザインも多い。しかし本作の描写は、ファンタジーや夢の世界の風景ではなく、本作の世界での確かな現実なのだと感じられる。

この点で、「リトルナイトメア」シリーズの描写は明確にファンタジー寄りだった。そもそもタイトルが「リトルナイトメア=小さな悪夢」なのだから、これは意図的なものだろう。そして筆者としては、一定方向にしか進行できないという要素にも、「悪夢っぽさ」を感じてしまう。

また、「リトルナイトメア」シリーズは「脱出」をゲームの目的としており、これもまた「悪夢らしい」と感じる。「逃げようとして先に進むものの、なぜか先に進むことができない……」というシチュエーションは悪夢の典型例ではないだろうか? 自由な方向へ移動できないという設定が、すでに悪夢的なのだ。

一方本作は、最終的には「脱出」を目指すものの、基本的な目的は、「仲間の救出」。この目的は自由な方向へ移動できるというスタイルに、極めて高いレベルでマッチしている。どこにいるかわからない仲間を探すため、いろんな場所を探索する……という状況になるからだ。

そして、主人公がいろんな場所を探索する中で、トロッコや船、車といった現実的な乗り物を動かすこともある。オープンワールドゲームのように、自由にいろんな乗り物を使えるわけではないものの、「状況に応じて乗り物を乗り換え、先に進んでいく」構成は、物理的な手ごたえを感じさせ、現実味が強い。あくまで筆者が受けた主観的な感想に過ぎないのだが、こうした点から、本作と「リトルナイトメア」シリーズが目指す世界観は明確に違うものだと感じた。

ちなみに、『リトルナイトメア3』と本作では、仲間の挙動という点でも差を感じた。『リトルナイトメア3』も本作も、ともに2人の主人公が協力する形でギミックを解いていくゲームだ。この点はソロでプレイする際も同じで、ソロプレイ時にはもう一人の主人公をCPUが担当する。

このCPUの挙動が、違う。『リトルナイトメア3』のCPUは、次の行動を先読みするようなかたちで動く。このため、場合によっては、CPUの行動によって、プレイヤーが気づく前に「次に何をすべきか」わかってしまうことがあった。

一方本作は、CPUの行動によって「次に何をすべきか」がわかってしまうということはない。CPUの行動開始が、プレイヤーの行動に追従するようなかたちになっているからだ。とはいえ、「CPUキャラクターの動き出しが遅くて、足手まとい」なレベルにはなっていない。

こうしたCPU挙動の違いによって、『リトルナイトメア3』と本作では、ソロプレイ時の体験に差が生まれている。『リトルナイトメア3』はアクション性の比重が高く感じられるのに対し、本作は探索や謎解きの比重が高く感じられるのだ。どちらの体験を重視するかによって、『リトルナイトメア3』と本作で評価が変わるように思う。

ちなみに筆者としては、どちらの作品も好きだ。……こう書くと、日和見しているように見えるかもしれないが、「カレーもピザもどっちも大好き」という感覚に近い。

『REANIMAL』とは何か? 考察の楽しさは健在

ところで、「リトルナイトメア」シリーズの楽しさには、「考察の楽しさ」も存在していた。我々の見る夢が、「あの夢はどんな意味だったんだ……?」と、しばしば感じてしまうように、「悪夢(ナイトメア)」である「リトルナイトメア」も、ストーリーが明確ではない。

もちろん、ストーリー上で「何が起きているか」は分かる。しかし、それが「何を意味しているのか」が明確じゃない。だからこそ、そこには「考察」の楽しさがあった。

この点において、より現実的な描写が行われている本作『REANIMAL』ではどうかというと……バッチリ「考察」の楽しさが存在している!

本作の描くストーリーは、作中の現実世界の出来事だと、確かに感じられる。また「リトルナイトメア」シリーズでは避けられていた、セリフによる直接的な表現が存在している。だから、一見「リトルナイトメア」シリーズよりもストーリーが理解しやすいように思えるのだが、本作のストーリーの「意味」を理解するのはそう簡単ではない。

というのも、まず、本作で登場する異形のクリーチャーたちや、世界観の背景が明確には説明されない。とはいえ、プレイしていて不親切だとは感じず、むしろ「現実的」だと感じた。なぜなら主人公は子どもたちだからだ。

子どもの視点から世界を見たとき、「そこで何が起きているか」という「現象」は観測できても、「その現象にどんな意味があるのか?」というところまではわからないことが多い。だからこそ、子どもたちは大人に問う。「あれは何? どんな意味があるの?」と。

しかし質問を受けた大人が、期待するような回答をしてくれるかというと、そんなことはない。回答できても、それは実際の意味の一部でしかないことが多いし、そもそも大人とはいえ自分の知識では回答できず、あいまいにごまかすことだってあるだろう。つまり、子どもにとっての世界は、「正確な意味が説明されない世界」。

だからこそ、本作は「現実的」なのだ。

これに加えて本作には、たびたび不条理な描写が登場する。たとえば、さきほどクリーチャーに食われたはずの仲間が、一定時間経過後に再登場するといった描写だ。あまりに無説明に描写されるので、「あれ? さっき見た演出は、自分の勘違いかな」とも思ってしまう。あるいはゲーム的な都合か? それとも、幽霊なのか……?

確かに現実世界で起きているのだが、不明確さと不条理によって、真相を掴むことが難しい。だけど世界観は魅力的だから、ついつい「考察」してしまう……。そんな、映画でいうなら『イレイザーヘッド』(1976年)、TVドラマ『ツイン・ピークス』(1990~1991年)等で知られるデヴィッド・リンチ監督作品のような楽しさを、本作は持っている。

不明確・不条理だからこそ感じられる新しい恐怖! ホラーファンは買いの一作

先ほど書いた「不明確」「不条理」という言葉は、一般的にはネガティブにとらえられる言葉だろう。だが、ホラーファンの視点から見ると、この2つの言葉はポジティブなものと捉えることが可能だ。というのも、「不明確」「不条理」にこそ、新鮮な怖さが宿るからだ。

たとえば、『リング』や『呪怨』といった名作ホラー映画は、「怖い」ことで有名だ。実際に初めて観たなら、その怖さに一人では夜中トイレへ行けなくなってしまう人もいるほどだろう。

ただ、これらは、名作だからこそシリーズ化されている。シリーズ化によって作品ならではの恐怖表現が繰り返されたことで、恐怖表現も、やがて「そう来ると思った」という「お約束」的表現になってしまう。こうなってしまうと、初見のときほどの怖さはない。

一方で、本作の恐怖は違う。本作は「不明確」かつ「不条理」だからこそ、我々の知る既存のイメージからは想定できない怖さがある。また世界観のみならず、クリーチャーのビジュアルや動きも斬新だ。

だからこそ、「なんなんだ、これは!?」という怖さが味わえるのだ。この新鮮な怖さは、恐怖を求めるホラーファンにとっては、まさにお金を払う価値のあるものだろう。もし今体験しなかったなら、時間の経過に伴い『REANIMAL』的な表現が世の中に出回ってしまうはずだ。

そうなると、今後『REANIMAL』的な表現を味わえたとしても、それが「新鮮な恐怖」ではなくなってしまう可能性があるのだ。つまり、今でなければ味わえない新鮮な恐怖を味わうには、今『REANIMAL』をプレイしないとダメなのだ。

従って結論としては、気になっているのなら「買い」だと思う。ぜひ買ってプレイし、新鮮な恐怖を味わい、考察の楽しさに没頭してほしい。

(文/田中一広)

ガジェ通ゲーム班

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