Google Pixelのデザインの粋に触れ、機種変に誘われる展示(辛酸なめ子)

  by 辛酸なめ子  Tags :  

このところデザイン性の高さでも注目を集めているGoogle Pixelシリーズ。国立新美術館で開催された「GOOGLE HARDWARE DESIGN STUDIO DINING TABLE, 2024」という展示に伺いました。ミラノサローネ国際家具見本市でも発表された展示とのことで、センスの良さへの期待が高まります。

会場は美術館の展示室ではなく、無料で入れる一階のスペースで、花柄の壁紙の前に大きなテーブルが設置されていました。そして、Pixelシリーズがテーマのテーブルセッティングが展示。家電量販店やサイトで何度も眺めて検討したPixel 9シリーズ。展示に添えられている「Made by Google」と書かれたメニューの紙には、それぞれのデザインコンセプトが記載。ピンク、グリーン、黒、グレー、ブルーなどのデバイスと、それにマッチした小道具も置かれていて華やかな雰囲気です。

展示全体のキャプションには「色は私たちの感覚を生み出し、知覚に働きかける力を持っています。繊細かつ驚くべき方法で、静かに私たちに語りかけてくるのです」と、色の持つ力について解説されていました。iPhoneのカラーバリエーションとはまた違った、絶妙な色の展開です。デザインは元ジュエリーデザイナーで、作品が有名博物館に所蔵されているレジェンド、アイビー・ロス氏が手がけています。「Human(人間性)」「Optimistic(楽観性)」「Daring(遊び心)」という3つのキーワードがデザインの哲学という、意識が高いデザイナーです。

また、Pixelのデザインは、完成まで約2年もかかるほど、細部にこだわっています。値段が高くなるのも納得……です。ただ、どんなに素敵なデザインでも、ケースやカバーを装着することになるのがもったいない、とPixel 6に黄ばんだアクリルケースを装着している身としては思います。いつかカバーやケースが不要の頑丈なモデルを出してほしいところです。

通路を歩く人も時々流し見していて、わりと注目度が高い展示です。 Google Pixel 9の鮮やかなピンクは「Peony」。「創造性を刺激し、 限界に挑戦する鮮やかなピンク」などと説明に書かれていて、ビンク色のキャンドルやお皿が周囲に置かれていました。お皿の上には、製品にも使われているピンクのリサイクルガラスが乗せられています。デバイスの好物の料理なのでしょう。

黒は「Obsidian」。「磨かれた火山ガラスを思わせる、濃厚で神秘的なブラック」だそうで、リサイクルされたアルミニウム、ガラス、プラスチック、希土類元素などで作られています。黒いマカロンなどのオブジェが展示。それぞれのテーブルマットは、Google CMFチームが紙で編んでいるようで、さすがのセンスです。CMFとは?と思い調べたら「Color, Materials and Finish」の略のようでした。色や素材の仕上げを統括しているプロフェッショナル集団なのでしょう。

グリーンがかった灰色は「Hazel」。「グレーでもグリーンでもない、ユニークな影の色調からインスピレーションを得た色」だそうです。お皿には、リサイクル素材の糸と大理石のボールが乗っていました。各デバイスは、何%かリサイクル素材が含まれているそうで、環境への取組みも積極的に行なわれています。

今回、かなり色がかわいくて惹かれたのはGoogle Pixel 9 Pro の「Rose Quartz」。少し青みがかったピンクがおしゃれです。説明には「クールな自信とほんのりとした甘さのバランス」とありました。お皿には手染めの薄い円形のシリコンが重ねられ、層になっていて、リサイクルプラスチックがちりばめられています。ちなみにこのセッティングに置かれている石は、なぜかローズクォーツではなくてロードクロサイトのようでした。

そして高貴な白のデバイスはPixel 9 Pro「Porcelain」。日本の陶磁器からも影響を受けたという繊細な色合いで、「砂の微妙な変化、時代を超えた中立性、そしてささやくような優雅さ」とメニューには書かれていました。ナプキンリングの代わりにGoogle Pixel Watchが巻かれているのがなんともおしゃれです。

センスあふれるテーブルセッティングで、Pixel機種変欲が高まりました。QRコードから展示のアンケートフォームにつながったのですが、解答例に、自画自賛のコメントが綴られていて、自信のほどがうかがえます。

例えば「今回の展示で Google Pixelのデザイン思想を知り、Google Pixel のデザインについて、どんな印象を抱きましたか? また、どんな印象の変化がありましたか?」という質問に対しては「例:ガジェット類は地味でいいと思っていたけれど、Pixelのカラフルな色味がかっこいいと思った / いまの時代に求められるデザイン / ほかにはない唯一無二なデザイン」など……。自然とほめ言葉の入力に誘導されます。

「テクノロジーと人間性の調和」がテーマの一つでもある今回の展示。ポジティブな感想や賞賛の言葉で人間性に訴えたら、デザイナーに届くでしょうか。これからも続々と素敵なデバイスを出してもらいたいです。

「GOOGLE HARDWARE DESIGN STUDIO DINING TABLE, 2024」

開催期間:2024 年 12 月 11 日 (水) ~ 2024 年 12 月 23 日 (月)
開館スケジュール:
月曜日 10時00分~ 18時00分
火曜日 休館
水曜日 10時00分~18時00分
木曜日 10時00分~18時00分
金曜日 10時00分~20時00分
土曜日 10時00分~20時00分
日曜日 10時00分~18時00分
入場料:無料
特記事項:展示には触れられません

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。

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