カルフォルニアロールに代表されるように世界各国には「外国人が意図的に考案した新日本食」が多数存在する。我が国でナポリタンや汁あり担々麺が生まれたのも同じことだ。
しかし、それらとは違い「正しい伝統的日本食である」という認識の元でとんでもない料理が堂々日本食メニューとして提供されていることも少なくない。ガリがフルーツコーナーに置かれていたりするあのたぐいである。
インドは聖なるガンジス川のお膝元、バラナシにおいて、現地インド人シェフが心の底から「正しい日本食」と信じて振る舞っている数々の珍メニューに遭遇し、少なからずカルチャーショックを感じたのでここにご紹介したと思う。
繰り返すが、以下のメニューはインド人が敢えて現地の土地柄や食文化に合わせて改良したのではなく、これこそが海を越えた異国ジャパンで古くから食されている日本食であると疑いもせずに提供しているということをふまえていただきたい。
その前に、インドにおいて「ラーメン」といえば、それは間違いなく「インスタントラーメン」のことであるという理解が必要である。これはもう100%だ。
これが「野菜ラーメン」と「チキンラーメン」
お分かり頂けるかと思うが、上に乗った具材以外は同じものである。「チキンラーメン」とは我が国における「チキンで出汁をとったスープのラーメン」ではなく「チキンが具材のラーメン」なのである。
そこで「とんこつラーメン」である。
先ほど「“具材名称”ラーメン」と記載したが、今回に限っては具材がとんこつですらない。しかし麺を掘り返してみると丼の底からなにやら衣(だったもの)のような塊が発掘された。
ちなみに同じ店の「とんかつ定食」がこちらである。
「とんかつ」と「とんこつ」を同義語として捉えていることが発覚した。
別の店で、今度は「中華丼」と「野菜おじや」を注文した。余談だが、この場合の中華丼はれっきとした日本食の欄に記載されている(厳密にいえばそのへんの歴史的認識は正しい)。
繰り返すが同じ料理ではない。「中華丼」と「野菜おじや」である。違いは雑炊状の中にかき玉があるかないかのみであると思われるが、中華丼に入る卵ってこういう感じだっけ?という根本的な疑問を感じる前に「丼ものはすべて雑炊加工されている」という方程式がインドに存在することに気付く。
その証拠というわけではないが、これはまた別の食堂の「カツ丼」である。
雑炊加工されてる…。
どこで丼ものがこういう認識になったのかはわからないが、「丼」というすべての料理はラーメンやウドンに代表されるように「汁がこぼれないように丼に入った」料理になったのだろう。言葉というものは難しい。
そこから発展したのがこちらの「からあげ」である。インドの代表的メニュー「タンドリーチキン」を比較対象として並べてみよう。
同じに見える…。推察するに、「からあげ」は「からっとあげた」という認識になったと思われる。確かにからっとよく揚がっていた。
しかし食文化の違いがうまく転んだ例もある。
それがこの「そばめし」である。
日本人が皆揃って顔をしかめるいわゆるモチモチしていない長米種が、炒め物にした場合、独特のパラパラ加減になるのだ。インド人オーナーMr.サントスも自信たっぷり。
日本で食べるようなごく普通の日本食の味を期待するとがっかりする人も多いかもしれないが、外国でしか味わえないという考え方もできる。
海外を旅した際は、敢えて現地の料理人が作るいかがわしい日本食にチャレンジしてみるのも良いかもしれないぞ。