アナゴン(阿那含)。あまり聞きなれない言葉です。響きがカネゴンみたいです。でも仏教では非常に重要な言葉です。とくに初期仏教では悟りへの四つの段階がありまして、ブッダのことをアラカンといい、そのつぎの聖者をアナゴンといいます。アナゴンはこの世にもどって来ないひとという意味です。
そういうと、ひとはみな亡くなってもうもどって来ないのだから、みんなアナゴンではないかという疑問が湧いてきます。ところが、仏教では輪廻転生を説きますので、死んでもまた生まれ変わってくるんです。天界に往ったり、地獄に往ったり、ふたたび人間となったり。みんな輪廻転生します。
でもアナゴンになると、輪廻することはありません。生前はニルバーナという悟りの境地に近づくので、感覚的な欲望や怒りなどの煩悩を断ってしまい、いつでも禅定に入れるようになります。そして亡くなると天上界に生まれ変わり、それから漸次ニルバーナに入ると言われています。アナゴンは肉体を捨て、天上界で精神的な生命として暮らすのです。
漢訳:阿那含、不還、不來
Skt.:anāgāmin
Pali:anāgāmin
仏教語大辞典 中村元著 p6d.
The practical Sanskrit-English dictionary
http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/apte/
The Pali Text Society’s Pali-English dictionary
http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/pali/