平成25年5月11日(土)、世田谷の龍雲寺にてトークセッション「科学と仏教の接点」を拝聴してきた。花園大学と東京禅センターの共催による2008年から続くこのイベントは計10回を数える。
今回は心臓外科医の南淵明宏と2人の仏教系大学教授(野口圭也、佐々木閑)による「生きることと死ぬこと -心臓外科医との対話ー 」。以下、概要をレポートする。
お寺の本堂を借りた満員の会場、心臓外科医・南淵明宏は、いのちの大切さを語るのにあたって「慰安婦問題」を例に挙げて説明した。この問題が作家吉田清治の創作に端を発した経緯を全くご存知ないようだ。1989年の短編小説「一杯のかけそば」に日本中が踊らされた事件が連想され、少し残念。
「病院で幽霊の目撃例が多いのは医療関係者の間では常識」と会場を凍らせたあと、自らがセンター長を務める「大崎病院 東京ハートセンター」の紹介パンフレットが全員に配布された。ジョークのセンスはある。
講師が3人なのに、なぜかワイヤレスマイクが2本しかないため、ほとんどマイクを持たせてもらえなかった野口圭也。ダライラマ14世の来日講演の際、司会を務めたときのエピソードはウケた。
ノーベル平和賞受賞のダライラマ14世に対して「会社の人間関係で悩んでいるのですがどうしたらいいでしょうか」という人生相談やら、「自分はアレクサンダー大王の生まれ変わりなのですが……」と自己紹介する質問者への対応に冷汗をかいたという。しかし、肝心のダライラマ14世がどうリアクションしたかは失念したとのこと。これもかなり残念。
中盤、進行役の佐々木閑が「後半は『死後の世界はあるのか』です」と宣言したあと少し異変が……。その直後に会場の龍雲寺の僧侶に呼び出されて中座。その後、「霊」については一切触れられなかった。
会場となった龍雲寺は臨済宗妙心寺派であり、その宗旨として「霊は認めていない」ためなのか。佐々木閑は専門である「律」について解説。仏教が2500年間存続しえた理由は「律」にありという話で無難にまとめた。
次回は、平成25年10月5日(土)、東京大学駒場キャンパスにて、日本の惑星科学の第一人者である松井孝典を招いて行なわれる予定。今から楽しみである。詳細は東京禅センターを参照されたい。
(文中敬称略)