緊急事態宣言が延長された首都圏だがテレワークが推奨される中で行政も手をこまねいているわけでもない。
お願いだけでは何も進まないし、実際にテレワークを実施しようとする企業が多くなっているのも事実だが、個人側の事情でそうもいかない問題もある。そんな諸問題を少しでも改善してもらおうと東京都が行っている政策の一端を取材した。
自宅でテレワークをしようにも、通信環境の問題であったり、自宅内のスペースの問題であったり、社内のミーティングであればさほど問題にはならない子供が同じ部屋にいることで発生する問題等、例を挙げればきりがない。
そこで東京都が都内多摩地区のホテルを一定部屋数テレワークのためのサテライトオフィスとして提供している。取材目的での部屋の確保も難しいほどの人気で、1時間だけ予約ができた「京王プラザホテル八王子」を取材した。
この政策の仕組みはいたって簡単で原則として9:00~19:00までの時間で1回につき1部屋を利用することができる。利用料金は税込み500円と破格で、もちろん東京都の予算でホテルに対して補助が出るので利用者の負担は500円でよいというものだ。都内在住や勤務等、いくつかの利用条件はあるものの条件さえ合えば、快適な自分だけのオフィスが1日だけ手に入る。
一般のシングルの部屋をデイユースとして貸し出すので、机を使用して仕事をするのはもちろんのことベッドで昼寝をしてもいいし、部屋のシャワーを利用しても構わない。
ホテルによると八王子周辺に住んでいて都心に通勤するサラリーマンが、その出勤地を「京王プラザホテル八王子」に変更して仕事をする方が多いという。
高層ビルがそれほど多くない八王子市内が同ホテルからだと一望できるので、市内に住んでいても自宅からは望めない景気がそこにはある。ちょっと窓の外を見るだけでいい気分転換になるようだ。これは地区内どのホテルでも事情は同じだろう。
ネット環境だけで済んでしまう仕事もあれば、オンラインミーティングに参加してする仕事もあろう。しかし会社に行くがごとくスーツを着用する必要がないので、普段着にほど近い服装で駅には入っていかずにシティホテルに入っていくという非日常もワクワク感がある。その上で、静粛で誰にも邪魔されない環境が整っているのだから集中して仕事だできようというものだ。
全員がテレワークをできるわけではないが、少しでも人の動きを最小限にして快適な新様式の働き方を提供しようとする東京都の社会実験的な試みだ。予約状況を眺めてみる限りは大成功といえるのではないだろうか。
このような取り組みは期待値の高い政策であることには違いないので、ぜひとも継続してほしいものである。
※写真はすべて記者撮影