ゲームショウ会場で行われた今年の「日本ゲーム大賞」発表授賞式において、ある“事件”が起こっていた。
「年間作品部門」の大賞に輝いたPS Vita用ゲーム『GRAVITY DAZE/重力的目眩 上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』のタイトル名が発表された時のことだ。
大賞の受賞を事前に知らされていなかった本作ディレクター・外山氏は、感激のあまり完全にテンパってしまい、「正直言ってヤバイですね。完全に想定外。スタッフ一同、頑張って面白い物を作ったつもりではあったけど……マイナーハードだし(ボソッ)」と口走ってしまったのだ。
外山氏はソニー・コンピュータエンタテインメントのJAPANスタジオ所属。つまり、PS Vitaを販売するソニー・コンピュータエンタテインメントの“身内”がPS Vitaを「マイナーハード認定」してしまったというわけだ。
そしてこの“失言”に追い打ちをかけたのが、トロフィー授与のプレゼンターを務めた一般ユーザー。「ゲームの特色のひとつである重力操作が予想以上に面白くて爽快感もあった」と本作への投票理由を語ったあとで、「PS Vitaは発売日に買ったけど、その頃はまだあまり楽しめるソフトがなかった。でも、このゲームを遊んだおかげで購入したことは間違いではなかったと思った」と開発陣を賞賛したのだ。
彼らの正直過ぎる感想のダブルパンチに会場は爆笑。一方、一部関係者は苦笑い。売上本数的にはあいにく振るわなかった本作と、PS Vitaの残念な現状を端的に示す事件だったと言えるだろう。
選考委員会は本作への贈賞理由を「新規性・斬新性に富み、今後のゲームソフトのあり方に一石を投じることのできる作品として高く評価した」と説明。国内の売上本数は10万本にも届かないタイトルだが、ミリオンセラータイトルひしめく他の9作品を押しのけての大賞受賞となった。「ゲームデザイナーズ大賞」で『風ノ旅ビト』を発掘したことといい、ファンからの投票数よりもプロの視点を評価軸の中心に置いた今回の結果は、「日本ゲーム大賞」の結果としては至極妥当だと思うのだが、どうだろうか。
画像:授賞式で壇上に上がった『GRAVITY DAZE』開発チーム。外山氏は右端。
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