「シン・ゴジラ」、塾講師による感想文
私は、小学生の頃に「ゴジラ」の第一作を見た覚えがある。まだ小さかったので、とても怖かった。でも、ゴジラに罪はなくて原爆の放射能のせいで(つまり、人間のせいで)あのような化け物が生まれたというメッセージは、しっかりと受け取った。
それを、直球ではなくて怪物の姿を借りて表現した監督はスゴイと思う。
その後のゴジラは単なる怪獣の対決映画になってしまったけれど、それでも面白かった。ところが、今回の「シン・ゴジラ」は、こちらが中年になったからかもしれないが、評判ほど面白くなかった。
もちろん、映像は格段に良くなっている。ミニチュアの町やおもちゃの戦車ではない。ところが、見終わっても感動がない。アメリカに住んでいた経験から断言するが、「シン・ゴジラ」はアメリカではヒットしない。
日本の政治家や官僚機構がドタバタしても、違和感しかないだろう。
何をやっても歯が立たない驚異的な生き物というほどでもない。
「だから、核兵器を地上から無くさないと」
というほどのメッセージ性もない。
人物も軽い。私たち地方に住んでいる人間には
「東京でドタバタやっている」
程度の話だ。
軽薄短小と言われて久しい。受験業界でも同じで、教師が盗撮しても誰も驚かないほど頻発している。自分の教え子に手を出しても、名前も出ずに転勤するだけの場合も多い。隠蔽体質だ。
どの業界も、重厚さに欠ける。こうして、日本は衰退していくのだろうか。
私の塾は30年以上もった。塾を支持してくれた人たちのおかげだ。私は一人で塾講師、会計、事務、宣伝広報などを担当した。成長にともない講師の方を雇ったけれど、結局自分で英語も数学も担当した方が授業レベルを維持できると判断した。
人件費がかからない分だけ、月謝の額を抑えることができた。
そういうギリギリの覚悟が「シン・ゴジラ」には感じられなかった。やはり、エンターテインメントだけでなくて、何かしらのメッセージがないと重厚感に欠ける。