ありとあらゆるものがネットの時代、書店の分野でもネット化が進んでいる。
業界専門誌等の調査によると、書籍市場そのものの推移は将来にわたりほぼ横ばいと予想されているが、内訳でみると2020年には紙の書籍が75パーセント、電子書籍が25パーセントになると見られている。また販売ルートも同年にはネットでの販売が38パーセント(紙・電子を含めた合計)に上ると予測されている。
電子書籍市場においては、主要な供給元が流通系、印刷会社系、書店系と多くの市場参加者が乱立している。
今回はその中で紙でも電子でも、通販でも書店でもシームレスに選択と購入ができるサービスhontoを実際に使ってみた、というよりも使わざるを得ない状況だったのでレビューする。
hontoは、本を印刷する側の大日本印刷が丸善、ジュンク堂書店、文教堂と組んでサービスを提供している。
まずは会員カードとポイントをチャージするチケットを手に入れる。
写真のものは5000円で5250円分のポイントが付いたものだ。
書籍の購入や管理はhontoというアプリを利用する。
また、検索やお気に入りの登録等はhonto withというアプリを利用する。
まずはスマホ上でカード番号をリンクさせて会員登録を行う。
この段階では会員登録だけで1円のポイントも入っていないが、無料電子書籍は利用できる。
ポイントをチャージすると残高が増える。5250ポイントしかチャージしていないのに、5251ポイントとなっているのは、いろいろとポイントが増えるキャンペーンを行っており、チャージする前に記者が1ポイントすでにゲットしたので5251ポイントとなっている。
書籍の価格について簡単ではあるが解説をしておく。紙の書籍(以下、実本と呼称する)は、タバコや新聞と同様に再販売価格維持制度(再販制度)という私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(独禁法)の適用除外となっていて、日本全国どこで購入しても一律の値段で基本的に価格の直接的な値引きはない。基本的と書いたのは、ポイントサービスで還元したりプレミアムを付けたりすること自体は消費者の利益になるので再販制度違反とはされていないからである。
「大学では安く売ってるじゃないか」という向きもあるだろうが、生協のある大学すなわち生活協同組合では「共同購入」という形態を取っているため再販制度の履行義務がない。したがって組合員のための共同購入の結果として安く販売されているに過ぎない。
一方、電子書籍はこの制度の対象となっていないので価格自体が安い場合が多い。
ところで、記者はたまたまインタビュアーの仕事で名古屋に滞在していたが、専門的な記事を書かなければならなかった。言い回しや用例について普段の記事では必要としないので所有していない記者のバイブルとされている「記者ハンドブック」という書籍をどうしてもこの場で手に入れなければならなかった。
まずはここでhontoを活用する。
地理感のない名古屋の地でホテルの部屋で検索した結果、栄の丸善に在庫があることがわかり行くことにした。どの階のどんな棚に存在するのかもわかるので、在庫を含めて書店に電話して確認する必要はない。アプリは、なにも電子書籍だけで使うものではない。
ホテルから3ブロックほど歩くと丸善書店が見えてきた。
アプリの指示通り3階に上がり、マスコミ・ジャーナリストという書棚に確かにあった。
ものはついでで、語学留学についての本を見たかったので以前にYouTubeの動画で勧められていた「English Grammar in Use」という書籍について近くの店員さんに聞いてみた。
場所を教えてくれるだけかと思っていたら、「この書籍には英語板と米語版がありまして、3つのカテゴリーに分かれています。最近はイギリス英語版が人気のようですよ」と、売れ筋から内容まで教えてくれた。記者はそもそも英語板と米語版があることすら知らなかったので、こんな情報が手に入るのは書店ならではの活用法だろう。結果として記者には難しかったので購入には至らなかったが、ネット上で話題になっている書籍であっても自分に合う合わないはリアル書店で手にとって、見るしかない。
さて、記者ハンドブックを購入するのだが、会員カードもしくはスマホ上に表示されたカードをレジで見せてポイントから精算する。
このあたりは、電子マネーで慣れているので誰でも迷うことはないだろう。
その夜、ホテルで記者ハンドブックを活用して記事を書き上げることができた。
地元の書店であれば、どこにどんな本があるのかは理解しているが、土地勘のない出張先や旅先で、しかも専門書となると基本的にお手上げのことが多い。在庫の有無から、在庫がある最寄りの書店を案内してくれるのはありがたい。
さて、語学留学の専門書は諦めたが、旅行ガイドブックは買わねばならないだろうと有名な地球の歩き方を検索する。これは電子で十分なのでざっと見てみると、実本にある「フィリピン」だけではなく、中身が分けられた「分冊」の形で売られていたのは電子書籍ならではの強みだろう。マニラとセブの分冊分を2冊購入してもフィリピン1冊よりも安いので、フィリピン全国版をカートから削除した。
若いころに読んでいて強い印象を受けた島田一男氏の推理小説「捜査官シリーズ」をもう一度ゆっくり読んでみたいと思っていたのだが、古い本ですでに書店での取り扱いはなかった。もちろん文庫本だったために記者も保有していない。しかし、電子書籍では販売されていたので3冊を選んだ。
先に、色々なキャンペーンをアプリ上で行っていると書いたが、お得なクーポンも多く発行されている。
もちろん電子で発行されるクーポンなので印刷したり持ち歩いたりする必要はない。
ただし、再販制度の制約から電子書籍でのみ使用可能な場合が多い。
カートを進めて精算に向かう。
新規会員登録した際にもらった30%OFFクーポンを使用する。
すでに実本として記者ハンドブックを購入しているので残高は3200ポイント。
書籍5冊を購入して3240円が必要だったが、3割引きで2268ポイントが差し引かれてこの際の支払いは0円で済んだ。
元々ポイントチャージ時に250円分のプレミアムが付いていたので、1000円分以上お得になった計算だ。
ところで、実本を書店で購入したり、通販で購入することももちろん可能で、電子書籍でダウンロードすることも可能だが、問題は蔵書管理。
実本は自宅の本棚に並べればいいが、電子書籍はそうもいかない。このアプリで購入したりhontoカードで書店で購入したりすれば電子書籍は即、実本は1日程度でアプリのライブラリやマイ本棚に自動登録される。
写真は無料で読める漫画も入っているが、電子書籍はダウンロードして読了後はクライドに戻すことができる。つまり、スマホやタブレットのメモリーを圧迫しないのだ。クラウドには購入した電子書籍はずっと保管されているので誤って端末から削除しても安心だ。むしろ節約のために読んだ後は、次に読みたくなるまで積極的に削除して構わない。
現在では複数の端末を持っている場合も少なくないが、5台までは同期することができる。
記者はiPadミニを持っているので、こちらにも同期させてみた。
読みやすいフォントをダウンロードすることができたのは良いサービスだろう。
文字だけの小説だけならなスマホでも構わないだろうが、地図や写真が多く入った書籍や漫画はタブレット端末が都合が良い。
書店、通販、電子、実本とシームレスに書籍の世界を渡り歩くことができるhonto。
本が大好きな人にとっては蔵書管理もできるので、検討してみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影