クレーンに巨大な荷物を掛けちゃおう!技能系国家資格の基本中の基本の「資格」とは……?
今まで、「就職や転職をする時に、ライバルに一歩差を付ける為に、履歴書に書く事が出来る様な資格」の取得体験レポートを執筆して来た筆者ですが……。
この度、特に就職や転職に有利だと言われる「技能講習による資格」を取りまくる事にしました。
さて、「技能講習による資格」とは、そもそも一体何の事を指すのでしょうか・・・?
「技能講習による資格」とは・・・?
事業者は、一定の、危険で有害な業務に労働者を就かせる場合に、労働安全衛生法などで定められた、「免許」もしくは、「技能講習」・「特別教育」を受けた者を就業させる必要があります。
「免許」という名称の資格ではありませんが、「技能講習による資格」は、立派な国家資格であり、有資格者は、現場で重用される傾向があります。
そんな「技能講習による資格」[リンク]は、指定の教習所で学科と実技の講習を受講して、修了試験に合格する事で、修了証が交付され、資格を取得する事が出来ます。
とはいえ、シロウトがいきなり「技能講習」を受けに行こうとしても、何をどうすれば良いのか分からない人が大半ですよね。
「困ったもんだ。」
「都道府県労働局長登録教習機関(技能講習教習所)」で資格取得が可能!「技能講習による資格」の取得方法とは?
「技能講習による資格」の取得については、以下の方法があります。
所定の技能講習教習所(都道府県労働局長登録教習機関[リンク])による学科及び実技講習の受講
所定の技能講習教習所では、学科や実技の講習が行われ、修了試験に合格する事で、修了証が交付され、資格を取得する事が出来ます。※資格取得後、該当の作業に従事する場合は、修了証原本を携帯する必要があります。
※特定の技能講習を既に修得している場合には、一部の受講科目が免除される事があります。
取得した資格には有効期限が無いので、資格は生涯有効となります。これは有り難いですね!
「さて、『技能講習による資格』は、どれを受験しようかな・・・・?」
「技能講習による資格」を最初に受講するのは、どの資格が有利なのか考えてみよう!
ここで悩ましいのが、まず最初に「技能講習による資格」を受講するのは、どの資格が良いのか、という事です。
基本的には、これから就職しようとする業界で必要な資格の講習を、最初に受講すれば良いのですが、まだどんな仕事をしたいか、漠然として決まっていないのであれば、筆者オススメの資格があります。
その資格とは・・・!
それが、『玉掛け技能講習』です。
『玉掛け技能講習』とは・・・?
「『玉掛け技能講習』・・・?」
「玉掛け」と言っても、何もボール状の物を釣り上げる、という意味限定の作業ではありません。
「玉掛け」とは、語源は諸説ありますが、内容としては、ロープ等を用いて、クレーン等で荷物を吊り上げ下げする為の作業の事を指します。クレーンのフックに荷を掛ける時も、フックから荷を外す時にも、共にこの資格が必要となります。
「玉掛け技能講習」の資格を取得する事で、吊上荷重(フック自身の質量も含めた、最大の荷重)1t以上を含めた全てのクレーン等の玉掛け作業を行う事が可能になります。つまり重量無制限で玉掛け作業を扱える資格となります。
「す・・・凄い!」
受講資格には制限なし、つまり作業経験ゼロでも受講可能です。(ただし就業が出来るのは18歳以上からです)
講習科目は以下の通りです。[リンク]
学科
クレーン等に関する知識(1時間)
クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識(3時間)
クレーン等の玉掛の方法(7時間)
関係法令(1時間)
実技
クレーン等の玉掛(6時間)
クレーン等の運転のための合図(1時間)
計19時間 学科2日、実技1日の計3日間講習
「ところで、何で「玉掛け技能講習」が、筆者オススメの資格なんですかぁ・・・?」
理由は三つあります。
まず一つ目は・・・。
玉掛け作業は、すべての現場作業の基本である。
現場作業を行う場合、荷や道具を運ぶ際、必ずある場所から別の場所に移動させる、という行為が伴う事は多いです。そんな時、手で持って運べない荷物は、クレーン等で吊って運ぶ事になり、玉掛け作業の出番となります。そういった時に、「資格無いから出来ませーん」、では、周りに「お前使えないなー」、と現場で幻滅され、仕事を外されてしまいます。ここで資格を持っていれば、逆に、「お前使えるな」、と評価されるかもしれません。
二つ目は・・・。
「玉掛け技能講習」の資格を既に修得している場合には、他の資格を取得する際、一部の受講科目が免除される事があります。
「玉掛け技能講習」の資格を持っていると、他の「技能講習による資格」を取得する時に、一部の受講科目が免除されます。
例えば・・・。
床上操作式クレーン運転技能講習・・・「玉掛け技能講習」の資格を持っていると、床上操作式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識、及び床上操作式クレーンの運転のための合図の講習が免除
小型移動式クレーン運転技能講習・・「玉掛け技能講習」の資格を持っていると、小型移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識、及び小型移動式クレーンの運転のための合図の講習が免除
ようするに、「技能講習による資格」のうち、「玉掛け技能講習」の資格を持っていると、上記資格受講時に、学科の「力学」と実技の「運転のための合図の講習」が免除される、という訳です。これを利用しない手はありませんね。
三つ目は・・・・
「玉掛け技能講習」は、結構覚える事が多いので、ヤワラカ頭の若いうちに資格を取っておく方が断然有利!
だという事です。
「技能講習による資格」は、実際、難易度自体はいずれも高くない、とは言われていますが、筆者が体感した所では、『玉掛け技能講習』は、いわゆる「覚える事が結構多い」為、なるべく記憶力やモチベーションが高い、早い時期に受講した方がいいな、と感じました。何より今後、他の資格を受講する時、既に勉強した経験が生きてくるため、楽に感じる事と思いますよ。ホント。
「将来的に資格が必要になる可能性も有りうるなら、「玉掛け技能講習」の資格を取るのは、今がチャンスだ!」
と、今回もノリで押し切る事にしました。
と、いう訳で、この度、筆者は、一念発起して、『玉掛け技能講習』の教習を受講してきましたので、体験レポートをご報告致します!
クレーンに巨大な荷物を掛けちゃおう!技能系国家資格の基本中の基本『玉掛け技能講習』の教習を受講して来ました!体験レポート!
まずは、最寄りの技能講習教習所を探してみると致しましょう。
主な技能講習教習所は以下の通りです。
コマツ教習所
https://www.komatsu-kyoshujo.co.jp/index.html[リンク]
コベルコ教習所
https://www.kobelco-kyoshu.com/[リンク]コベルコ教習所の特徴
https://youtu.be/dY5QqlPBCIo[リンク]
キャタピラー教習所
http://cot.jpncat.com/[リンク]
大半の人は、クレーン・デリック運転士免許や、小型移動式クレーン・床上操作式クレーン運転技能講習などの資格は持っていないでしょうから、受講時間は標準の19時間コースを選択します。
玉掛作業者[リンク]
区分
玉掛け技能講習 – 吊上荷重1t以上を含めた全てのクレーン・デリック・移動式クレーン・揚貨装置の玉掛け作業
玉掛け特別教育 – 吊上荷重1t未満のクレーン・デリック・移動式クレーン・揚貨装置の玉掛け作業
荷の重さで区分するのではなく、吊り上げるクレーンなどの能力によって区分される。荷が100キログラムでも、クレーンが2.8tであれば技能講習が必要。受講資格
技能講習、特別教育ともに制限なし
(但し就業できるのは18歳以上なので技能講習・特別教育に年齢制限を設けている場合もある。)技能講習
技能講習は都道府県労働局長登録教習機関において行われる。講習科目や時間数は玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号)に基づく。
修了済みの特別教育の実務経験の有無などにより所要時間は異なる。原則は19時間。
クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許又は揚貨装置運転士免許を受けた者は、下記学科2及び実技2が免除され、15時間。
床上操作式クレーン運転技能講習又は小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者は、下記学科2及び実技2が免除され、15時間。
旧クレーン運転士免許又は旧デリック運転士免許を受けた者は、下記学科2及び実技2が免除され、15時間。
労働安全衛生法施行令第20条第6号もしくは第7号の業務又は労働安全衛生規則第36条第6号もしくは第5号から第17号までの業務に6か月以上従事した経験を有する者は、下記実技2が免除され、18時間。
鉱山保安法第2条第2項及び第4項の規定による鉱山においてクレーンの運転の業務に1か月以上従事した経験を有する者は、下記実技2が免除され、18時間。
鉱山においてつり上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンの運転の業務に1か月以上従事した経験を有する者は、下記実技2が免除され、18時間。
おおかたの教習所は、電話やネットで問い合わせや登録をすれば、カンタンに講習の予約が可能です。教習所の指示に従い、修了証の交付に必要な写真を撮りに行き、身分証明書の控えをコピーして、受講料を振り込みます。
以下受講申込書見本です。
キャタピラー教習所/技能講習受講申込書[リンク]
必要書類が揃ったら、技能講習教習所に、電話かメール、FAX、web等で申し込みを行います。
今回は、希望通り、最寄りの技能講習教習所を予約する事が出来ました。記事ネタ的には面白くないですが、遠距離受験はマジでシャレにならないので、良しとしましょう。
受けてきました『玉掛け技能講習』講習!
講習初日の朝、少し早い朝食を取り、講習会場に向かいました。技能講習教習所は、どこも遅刻厳禁です。余裕を持って出かけましょう。『玉掛け技能講習』の学科講習は、この手の講習には珍しく、計算問題を解くのに電卓持ち込み可です。あと、作業用の手袋は、皮手袋を忘れずに持って行きましょう。安全靴もこの際履いておきましょう。
講習1日目(学科講習)
『玉掛け技能講習』の学科講習は要所要所で、「ここ重要ですよー!」みたいな感じで進んで行きますが、ペース配分的には想像以上に結構ガンガン飛ばしていきます。覚える内容が結構多い。
よくネットでは、『玉掛け技能講習』は合格率が高いので、寝てても合格する、みたいな事を書かれている所もある様ですが、これから『玉掛け技能講習』の講習の受講を考えている人へのアドバイスとしては、
「寝ていては受かりません。少なくとも、講習中はフルの集中力を駆使して全力で受講しましょう」
・・・とこれだけは肝に銘じて受講される事をオススメ致します。
『玉掛け技能講習』の学科の内容は、クレーン等に関する知識(1時間)/クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識(3時間)/クレーン等の玉掛の方法(7時間)/関係法令(1時間)を2日に分けて学びます。クレーンに関係する講習が多いですが、ある意味、クレーンの資格とセットで取得する資格とも言えます。
講習の内容は、ある程度、常識の範疇で分かるものもあるのですが、講習で初めて覚える事も多く、脳がフル回転しました。
学科の内容としては、いくつか抜粋すると、以下の様な内容になります。
「力」の合成、分解、モーメント、力の三要素「大きさ」「向き」「作用点」について(力学は今後の他の技能講習で何度も出てきます。きっちり覚えましょう)
物体の1立方メートルの質量について(鉄とコンクリートの比重は忘れずに!)
円柱の体積は、半径X半径X高さX円周率で細かく計算しなくても直径の2乗X高さX0.8で、ざっくり計算してOK!(現場では体積計算もスピードが要求されるのです)
玉掛け用ワイヤロープのつり角度と張力、太さと安全荷重に注意
ワイヤロープのヨリの種類を覚えよう(通常は普通Zヨリを使用)
電気に関しての知識(感電に気を付けよう!)
玉掛け用つりチェーンの安全係数や種類・・・etc.
などといった所です。結構覚える事がたくさんありますねー。でも実際現場へ出たら、覚えていないと命に関わる事ばかりです。命がけで覚えましょう。
講習初日は、家に帰ってから一度復習しよう、と思って帰宅したのですが、脳が疲れていたので爆睡してしまいました!
おいおい、大丈夫?
講習2日目(学科講習及び試験)
講習2日目は、夕方に講習がすべて終わったら、直ちに学科の試験という流れになりました。
昨日に引き続き、以下の様な内容を学びました。
玉掛け用具の種類について(沢山あります。きっちり覚えましょう)
玉掛け用具の点検について(ワイヤロープがキンク[リンク](捻じれ)したら使用禁止!)
玉掛け用具の選定について(荷の質量や重心、つり角度や安全荷重に注意!適当に吊ると死にます)
玉かけの作業方法・基本動作(これ重要)
質量の目測(これ重要)
合図の方法(合図の方法は今後の他の技能講習で何度も出てきます。きっちり覚えましょう)
関係法令(目的、検査、安全装置について)・・・etc.
などといった所です。ふう。
ホント覚える事がたくさんありますねー。特に物体の質量=比重(水は比重1ですが、鋼(鉄)は1立方メートル当り7.8tなので、比重7.8、コンクリートは比重2.3)X体積となる事をしっかり覚えておきましょう。
全ての講習が終わり、頭がテンパッている状態ですぐに試験です。
試験問題はマークシート式で、概ね「〇〇について、正しい(間違っている)ものを選べ」、といった形式の問題が多い様です。
意味を逆に取り違って回答しない様注意しましょう。
(大体、自信満々に「〇〇について、〇〇しても良い」とか、文末で「〇〇ではない」とか否定して書いてある回答は、ちょっと疑った方が良いかもしれません。)
30分経った時点で、ほぼ試験を受けた全ての人が回答を提出したので、その後採点が行われ、全員めでたく、学科合格となりました。良かった!
今日は脳が疲れました。おやすみなさい・・・。
講習3日目(実技講習及び試験)
講習3日目は、「実技」の講習となります。
実技の講習は、色々とテストのメニューがてんこもりです。
質量の目測テスト
なにやら試験会場内には、カバーを掛けてある謎の物体が置いてあったりするのですが・・・。実はソレの体積を目測して、比重を掛けて、質量を計算する、というテストがあります。
比重については、どの材質がテストに出るかは流石に分かりませんので、それとなく、「ああ、あの物体は長さと幅、高さはこれくらいだから体積もこれくらいかなー」・・・と、あらかじめ心の準備くらいはしておきましょう。円柱や、T字型鋼材の質量計算問題が出るかもしれません。最後に1.2を掛けて余裕を持った質量を出す様にするのがコツです。
まだまだ有りますよ。
ワイヤロープの選定問題
安全荷重表に基づき、ワイヤロープの種類や荷物の質量、吊り角度やつり上げ方法などの指示に従い、ワイヤロープの太さを選定する問題が出ます。一見凄く難しそうですが、試験前にある程度コツ(回答ではありません。)は教えて貰えるので、慌ててパニックにならなければ、多分大丈夫です。
そして、メインの実技講習はコレ。
玉掛け作業
テキストのうち、この項目は実技に出る、という事で、あらかじめ覚悟しておいた方がいいです。
3人が1組になって、1人は指揮者として、残りの2人は補助者で、実際の玉掛け作業を行います。全員が指揮者・合図者を体験出来る様、ローテーションで講習が行われます。
これがとにかく覚える事が多い、というか、「何か一つ作業するたびに指さし呼称する」ので、作業が終わるまで結構時間がかかります。でもまあ安全には代えられませんね。荷物の確認から、吊り具の点検、荷掛け、退避、フックの調整、地切り~(中略)~作業終了まで、きっちりと安全確認しながら指さし呼称を行い作業を行いましょう。合図の発声はハキハキ行うと、試験官の先生には好感触かもしれません。
さあ、最後の難関の実技試験です。南無三・・・!
・・・何度か合図の確認に手間取りましたが、なんとか合格点までには達しそうな回答率で実技試験をクリア出来ました。良かったー!
その後すぐに合格発表があり、修了証が交付され、資格を取得する事が出来ました。
「クレーンに巨大な荷物を掛けちゃおう!技能系国家資格の基本中の基本『玉掛け技能講習』。
とっても就職や転職に有利な資格ですね!」
※Girlsイラスト:http://furu-yan.jimdo.com/(筆者自筆)[リンク]
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※写真:ぱくたそ https://www.pakutaso.com/[リンク]