激しいかゆみと炎症をともなうアトピー性皮膚炎。現在は、炎症を抑えるステロイド外用剤と保湿剤を塗ることで
症状を緩和させることが、主な治療法となっています。
鳥取大学農学部の東和生助教授らがオランダの科学雑誌に、蟹の殻から取れるごく細い繊維であるキチンナノファイバーが、皮膚の炎症を抑える作用があることを発表しました。
蟹というと、一般的にはアレルギーの方にはあまり好ましい食べ物とはされていませんが、発表が事実なら、アトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚の炎症が起こる病気に悩む方にとって朗報になりそうです。
キチンナノファイバー(CNF)は、蟹の殻の主成分を処理し、10ナノメートル(ナノは10億分の一)まで微細にしたもの。水分を混ぜるとジェル状になることから、保湿作用があるとして、市販の化粧品に利用されています。
東助教授らは、ジェル状態に加工したCNFを人工的に皮膚に炎症を起こしたマウスに塗り、経過を観察。
結果、アトピー性皮膚炎の指標となる白血球の一種好中球が減り、炎症に影響を与える物質とされているNF-KBの活性度が1/3になったことを確認しました。
また、かゆみの原因になるヒスタミンについても良い結果が得られたとしています。かゆみを引き起こす免疫グロブリン(IgE)は、CNFを塗ると、何も塗らない状態よりも、1/3程度に減り、炎症やかゆみが抑えられていることがわかりました。
アトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚に炎症を起こす病気では、ステロイド外用剤を使うことが一般的となっていますが、漫然と使い続けると皮膚が薄くなってしまうなどの弊害も指摘されており、皮膚科専門医の指導の下で留意して行うことが重要です。
CNFが、アトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚疾患の治療薬として画期的なものになるかは、これからの研究をまたなければなりませんが、実用化されれば、今よりも体に負担が少ない治療になるのは間違いなさそうです。
※写真はイメージ 足成より http://www.ashinari.com/2009/06/22-022816.php