どうも、ヒャッカベです。
“苦手な人でも見られるスプラッター映画レビュー”の連載ということで今回が初回となるわけですが、僕、会う人会う人に必ず語り聞かせてるスプラッター映画の話がありまして、それを今回、記事にしちゃおうと思います。
正直、僕はこの映画に関しては日本で一番語っている自信があります。
そんなわけで今回ご紹介するのは、『ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー』です。
ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー(2004年/日本)
様々な怪異な因縁により封印されていた幻のホラー
同時多発!予測不可能!これが噂の”ザッピング・ホラー・ムービー!!
若手女優たちが次々と業界を去った、いわくつきの作品。《Story》
老舗デパートの閉店後に7人の少年少女達がやってくる。目当ては夏休みイベントのオープン前夜である「お化け屋敷」。そのデパートには少年の幽霊が出没するとの噂があり、肝試しに最適だったのだ。突如、謎の中華面が現れ、中華包丁で襲いかかってくる。それは、10年前、両親を惨殺された少女のトラウマ治療の為のショック療法だった筈なのだが・・・
――YouTube予告編 紹介文より
(※予告動画には多少ショッキングな表現が含まれていますので、ご注意の上でご覧ください)
まず初めに言っておきたいのは、上記の予告動画およびあらすじは、今回僕がご紹介したい内容とはまったく関係ないということです。
いや、もちろん、動画もあらすじも紛うことなく『ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー』のものなんですが、この映画の凄いところは、本編以外のところにあるんです。いやマジで。
本編、だけどまだ本番ではない時間(残り60分~15分)
本編は、大きく三つのブロックから成っています。
一つ目は、楊天福氏扮する中華料理人風のストーリーテラー(いや実際に楊氏は中華料理人をされている方なので別になにも扮してはないんですが)が、中華料理屋のキッチンを舞台に独特な日本語で語る、アバンストーリー部分。
世にも奇妙な物語でいうタモリのアレをものすっごい「え?」って感じにしたような内容です。
二つ目は、2分弱のショートドラマ。
中華料理屋で三船美佳がハゲのボーイにハゲハゲ言いまくる、という内容。
いやほんとにこれ以上言い表しようがないのでしょうがないです。
そしてこの部分はまったく1ミリもスプラッター映画ではないです。
そして三つ目が、先述のあらすじの内容のドラマで、こちらがおよそ40分。
低予算ながらも趣向を凝らしたスプラッターシーンの数々が楽しめる、なかなかの良作となっています。
ちなみにスプラッターシーンの数々は予告動画に全部余すことなく映ってます。
要するに、
・楊天福(オープニング)
・三船美佳ハゲ連呼
・楊天福(インターバル)
・40分のドラマ
・楊天福(エンディング)
っていう構成ですね。ちなみに、楊天福(エンディング)で発せられる氏のせりふ「今のは ヒトツの おとぎバナシィーーー」は、僕のモノマネレパートリーの代表作となっている、というのは完全に余談です。
さて、ここまでトータル45分ほど。
ちなみに本DVDの尺は60分。
そう。
この残った15分こそが、『ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー』を『ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー』たらしめる最重要パートなのです。
ここからが本番、以降ネタバレあり(残り15分~10分)
本編45分終了後、砂嵐のエフェクトがかかったかと思うと、画面に突如、中華かぶり面(上述のパケ写にあるお面)が登場します。
で、爆発します。
いやほんとに、やすーいCGで、バリーン!と爆発。そしてタイトルロゴが現れます。
「え?え、なに?」と思う間もなく、画面にはバイクに乗った人物が登場。
その人物が地下駐車場みたいなところに入り、バイクを停め、かぶっていた中華かぶり面を脱いで、現れた長い髪をふぁっさあーっと振ったところで(女性ライダーだったようです)、あなたはひとつの違和感に気付くはずです。
そう、ラップです。
BGMとして、めちゃくちゃサグい日本語ラップが流れ始めているのです。今までさんざんふんわり中華風を押し出していたのに、ここにきて急にJラップ。
……うーん、まあ、でも『バトルロワイアル』のエンディングもDragon Ashだったし、Jスプラッターと日本語ラップは親和性あるっちゃあるかぁ……と思ったんですが、歌詞が完全に「日本のヒップホップ最高」みたいな内容でまったく映画の内容とかぶってません。
そんなゴリゴリのヒップホップと共に、画面にはさっきまで見ていた本編45分のいいとこどりダイジェストが流れます。ぶっちゃけこれだけ見てれば本編の内容がほぼわかります。
更にダイジェストの合間合間に、おそらくいま流れているこのBGMを歌っているのであろうラッパーの皆さんのかっこいい映像がちょくちょく挟まれます。なんだか、そういうPVみたいな感じの仕上がり。
で、ほへーっと眺め続けること5分弱。
ようやくBGMと映像が終わり、黒背景にスタッフロールが流れ始めます。
BGMは別のラップ。
ちなみに歌詞の内容はやっぱりヒップホップのことを歌っているもので、ここまで見た皆さんは、もう完全に「ヒップホップっていいな」って思い始めていることでしょう。
衝撃の展開!括目!(残り10分~2分)
で、スタッフロール終了後、なんと、ストーリーテラー楊天福氏が再登場!
なにやら「好奇心はやっかいですねー」みたいなことを語り始めました。
「おっ、またなんか始まるのか?」と期待した直後、映像は砂嵐と共に、さきほど中華かぶり面ライダーがやって来た地下駐車場へと変わります。
駐車場では、さっきのダイジェスト映像のときにちょくちょく合間に挟まってきていたヒップホッパーの皆さんが座ってダベっている真っ最中。
「てか○○、遅いね」
「遅いねー」
「やばい、CD持ってんの○○だ」
「オケがなくちゃなんも出来ねえ(笑)」
……あれ? これなんの映画?
そんな視聴者の困惑など知る由もなく、駐車場には次々に別のラッパーの車が到着。
あっという間に10人弱ほどのラッパーが画面上を埋め尽くしました。
そして、本編のキモとなっていた都市伝説的存在“けんじくん”のことについてなぜか言及し始めるラッパー。
「けんじくんが、夜な夜なハコに踊りにくるらしいよ」
「シェイクしちゃうんだ?(笑)」
けんじくん、完全に茶化されました。
その後、ラッパーの皆さんはみんなで仲良くお菓子を食べ、歌い、大いに盛り上がります。
……いや、ほんとにこれなんの映画?
言い知れない恐怖に包まれた衝撃のラスト(残り2分~終わり)
そうこうしている内に画面はゆっくりとフェードアウト。
残り時間はおよそ2分。
ここまででもすでに大いに時間を持て余している感がありますが、なんとまだ2分もあるのです。
本編が終わって13分間、ヒップホップを聞かされ続けラッパーの映像を見せられ続けてきた僕にもう怖いものはありません。
さあ次はなんだ?どんなラッパーが登場するんだ?と意気込む僕の眼前に現れたのは、一枚のドアでした。
じっとドアを見る僕。
ちょっとだけ開いたまま、微動だにしないドア。
なぜかオペラ座の怪人チックなBGM。
依然としてドアを映し続け、まったく変化しない画面。
そして、ゆっくりと流れていく時間……。
……なんか怖くなってきました。
僕、この映画のこのシーン、初見のとき見た時間が深夜三時半ごろだったので、マジでなにかヤバいDVD借りてきちゃったんじゃないかと思って部屋で一人でそわそわしましたよ。
しかし!
残り45秒で画面にようやく変化が訪れるのです!
ドアからそっと、三船美佳が顔を出してこっちを覗きました。
そして、わりとすぐ引っ込みました。
変化、以上。
そのあと、BGMが止み、ラストまで10数秒間無音になります。
無音。
ドア。
画面を見つめる僕。
そして制作委員会のクレジットが入り、ようやく終了です。
見たら絶対誰かに話したくなること間違いなし!
この『ブラッディ・ナイト・ア・ゴーゴー』、とにかく見たら絶対誰かに話したくなります。
「俺こんな映画見たんだよ!ドアが!ラッパーが!楊天福が!!」
そんな熱弁むなしく、相手は「は?なにそれ?」みたいな半信半疑のリアクションを返してくることと思います。
きっと「狼が来た!」と訴えたのにみんなにウソだと思われたあの少年の気持ちが味わえることでしょう。
でも、この“見たことを誰かに話したくなる”って、実はものすごいエンターテイメントとして正しいなー、と僕はしみじみ思うのです。
というわけで、今回、この記事を読んで「そんな映画ほんとにあんのかよ」と思った方は、ぜひ、お近くのTSUTAYAで探して借りてみてください。
ほんとにあるから。
以上、百壁ネロでした。
(※topの写真は著者撮影の所蔵品。レンタルして見た後日、手元に置いときたくなってAmazonで買いました)