【無責任なつぶやき笑】最先端「馬鹿とハサミは使いよう」とは?

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深夜二時、僕は自宅でシステム開発の作業を続けている。技術の発達とは、時に嬉しく、時に厳しくもある。メリット、デメリット、その両面が潜んでいるのだ。今の僕の状況のメリデメをあげれば、こうだ。

メリット――
自宅で気楽に仕事ができる。出勤時のような諸々の拘束はなく、休憩のタイミングも自由だ。人の目も気にならない。なんならテレビを見ながらだって作業できる。休日であれば、わざわざ出勤する手間が省け、時間の節約にもつながる。

デメリット――
四六時中、パソコンさえあればいつでも仕事ができてしまう。“もう帰宅した後で会社にいないから作業できません” が通用しない。加えて、外部からの誘惑(テレビなど)が多く、集中力を欠きやすい。また仕事に関するメリハリがなくなり、だらだらと長時間作業をしてしまう傾向が強い。

ところで皆さん、僕のこの状況に違和感を覚えないだろうか?

この話をすると、大抵こう突っ込まれる。「家で仕事なんて、今時どういう会社なの?」っと。昨今 “個人情報保護” の観点から、あらゆる業界で、社外への資料の持ち出し、データ類の持ち出しを禁止している会社が多い。パソコンの持ち出しなど、言語道断だろう。だから皆(特にIT業界外に就職している僕の友人ら)一様に、「その会社おかしいんじゃないか?」と言うのだ。

しかし、そこには反論させてもらいたい。

個人情報の扱いに敏感であるのは、どこよりも僕の業界だ。IT業界に席をおきながら、そこの意識が希薄である会社など、あろうはずがない。むしろその分野での最先端を走っている。だから当然、僕の会社でも、一時は『自宅にパソコンを持ち帰っての作業』など死滅している。それを今、僕が行なっているということは、つまり数々の問題をクリアし、それを可能とする技術が確立されたことを意味する。よって僕からすれば、逆に「君の会社、まだシンクラ無いの?」となる。

さて、それでは前述の『シンクラ』とは何か? 

もちろんこれが良くも悪くも自宅作業を復活させるに一役買ったアイテムだ。『シンクライアント(thin client)』の略で、システムエンジニアは略して『シンクラ』と呼ぶ。

「何それ?」と疑問に思う人も多いだろう。これは大雑把にいえば、あえて最低限の機能だけに絞った低価格のノートパソコンのこと。中でも特に “データの処理や保存能力を一切持たず、表示・通信・入力の機能のみを持ったもの” を『ゼロクライアント(zero client)』と呼ぶ。

まあ要するに、非常に頭の悪いパソコンということだ。

驚くなかれ、奴らはパソコンなのに一切の情報を記憶(保存)できない。パタンと閉じれば、「はい、それまで」だ。シンクラを落としたり、盗まれたりしても中身は空っぽ。何の情報も盗まれる心配はない。windows端末では使えて当たり前の office機能(ExcelやWord)も使えないし、もちろんメール機能もない。インターネットは接続できるけれど、その履歴も一切保存されない。

今の話を聞くと今度は「えっ、office機能無し? そんなパソコンでどうやって仕事するの?」っという疑問が沸くことだろう。答えは簡単。

“シンクラで仕事はしない”

これだけ答えると「おいおい、何を言ってるんだ。それじゃあ今までの話は何だったんだ!」っと突っ込まれてしまうから、少し補足しよう。

“シンクラは利用する。しかしシンクラでは仕事をしない”

これが今、僕が実践している自宅作業の方法だ。

もう少し細かくいえば、僕には会社に、シンクラとは別で自分用の作業パソコンがある。出勤時はもちろんそれで仕事を行っている。そこへシンクラからリモート接続して作業を行なう。

遠隔操作というヤツだ。

もちろん僕の会社にある作業用パソコンは、頑強なセキュリティ下におかれている。作業用パソコンのIPアドレス(パソコンの設置場所に付けられる住所や電話番号のようなもの)を入力し、何種類ものパスワードを入力し、諸々の手続きを経て、ようやくリモート接続が可能となるのだけれど、そうして自宅からシンクラを利用して仕事をするのだ。

この手法を取った場合、つまりは自宅にいながらにして “会社のパソコンで仕事を行なっている” に等しい。メールの受発信などは会社側のパソコンで行ない、シンクラではそれを遠地から見ているだけ、という形になるのだ。資料の作成、保存も同様だ。よしんば何らかのデータがシンクラ側に残ろうとも、奴はそれを記憶しておくことができない。閉じればその瞬間に忘れてしまう。シンクラは鶏よりも記憶力の少ないノートパソコンなのだ。三歩も歩く必要なく、閉じた時点で全てを忘れる。

発想の転換とは、正にこういったことだろう。

高い機能を持たせ、ガチガチにセキュリティで固めたノートパソコンでも、盗んだ者がそのブロックを100%破れないという保証はない。しかし逆に中身がすっからかんなら、どんなにITスキルの高い泥棒であっても情報は盗めない。盗むもの自体がないのだから。もちろんシンクラを解析し、僕の会社側の端末のIPアドレスなどを割り出すこともできない。なぜなら……そう、奴は恐ろしく物覚えが悪いから。これほど泥棒泣かせなことも他にないだろう。

――さて、ここで視点を変えて考えてみよう。

【ここからが僕の無責任なつぶやき↓↓↓】

どんなものも使い方次第で大きな力を発揮する。
となれば、それは自分自身に対しても言えるのではないか?

例えばスポーツでもそうだ。背が高い、背が低い。そういったものは己の努力ではどうすることもできない。サッカーやバスケットでは、一般的に背が高い方が有利と言われる。しかし背が低いからこそ、空中戦ではなくドリブルやパスに活路を見いだし、その分野で己の能力を最大限に活用している世界的プレーヤーがいる。要は使い方なのだ。

さて、では僕は、僕の個性・特徴を正確に把握し、上手く利用できているだろうか?

……甚だ疑問だ。

僕はよく自宅のいろいろな場所で電気を消し忘れてしまい、家族に注意を受ける。もはやこれは癖ともいえる。指摘された直後は覚えているけれど(シンクラさながら)ちょっと時間が経つとまた忘れてしまうのだ。

こんな個性も発想の転換で、どうにか有効利用できないものか? 

僅かな振動で発電できる床さえ設置できれば、僕のもう一つの悪癖は家族から注意されなくなるのかもしれない。『貧乏ゆすり』ならぬ『発電ゆすり』、発電量が大きければそれを売電して大金を稼ぎ……貧乏ゆすりで金持ちに! そうなれば、もはやそれは『金持ちゆすり』だ。しかし、まあ現実的には……設備投資に莫大なコストがかかるわけで、とても元は取れないだろうけれど(泣)

皆さんも一度、自分の悪癖を上手く活用できる方法を考えてみてはいかがでしょう?

作家を志すシステムエンジニアです。小さな文学賞を受賞し、2014年に念願の自身1作目をハードカバー出版。現在2作目の出版 および 新たな賞の獲得へ向け、システム開発の傍らで鋭意執筆中。ミステリ、ファンタジー、SF、ラノベなど、幅広く挑戦しています。好きな作家サンは伊坂幸太郎サン、坂木司サン、隆慶一郎サン、伊藤計劃サンなど、挙げればきりがありません。何よりも文章を書くことが好きで、ライターとしても執筆していきたいです。