1995年、阪神淡路大震災のおり、在日外国人のため災害情報を多言語放送したことをきっかけに神戸市長田区で発足したコミュニティ放送局『FMわぃわぃ』。
けっして利益に走らず約20年もの間、国内外の災害支援や地域共生に尽力してきた気骨ある放送局だ。
そのFMわぃわぃが今、存続の危機に瀕している。
長年の放送で老朽化した機材がとうとう故障してしまったのだ。
機材の新調に必要な費用は少なく見積もっても300万円強……ただでさえ苦しい運営状況のため、自己調達することは不可能。
ファンや関係者によって支援を呼びかける声が広がっているが未だ先行きの見通しは立っていない。
FMわぃわぃ運営スタッフの田口さんにお話をうかがった。
筆者:FMわぃわぃさんは日本でもかなり早い時期に多言語放送に取り組まれた放送局として有名ですね。
田口:神戸市長田区は住民の10%が在日外国人なんですが、阪神淡路大震災の時に言葉の壁で災害情報をキャッチできない方が多かったんです。そういう方に向けて韓国語、ベトナム語、タガログ語、英語、スペイン語、日本語で放送を始めたのがうちの始まりでした。切迫した状況下だったので、当時は無許可放送だったそうです。
筆者:世界中の被災地や、近年では東日本大震災の被災地の支援活動もされているんですね。
田口:そうですね。いわゆるボランティアであったり、被災地の臨災害FM局立ち上げのお手伝いをしています。東北は意外に農家の奥さんで海外出身の方が多いので、多言語放送のノウハウも役に立てていただけますし。岩手県大槌町では、うちで番組をやっていたパーソナリティが移住して局を立ち上げました。
筆者:採算を度外視した社会事業に率先して取り組まれてきたんですね。番組のパーソナリティの皆さんもノーギャラで携わっておられるということですが。
田口:遠方から来られる方もいるのでせめて交通費くらいは……と思うのですが、なかなか実現できずにおります。NPO法人としての助成金、関連事業の収入をまわしてどうにか運営できてる状態なもので。
筆者:広告収入は厳しいですか?
田口:長田区の行政、局の方針に賛同してくれる方や、兵庫高校のOBの方たちに番組枠を買い取っていただいている例はあります。しかし……我々のやり方がヘタな部分もあるのかもしれませんが……長田は体力を持った企業が少ない地域なので今以上にスポンサーを集めることには難しさを感じますね。
筆者:ただでさえギリギリの運営をしている中で、今回さらに放送機材が故障してしまったんですね。
田口:はい。開局以来20年、毎日使い続けている機材なものでいいかげん限界がきていたんです。今年8月、ちょうど私一人が出勤している時に送信機がいきなり止まってしまって……どうにか応急処置はできたんですが12月にまた故障。完全につぶれるのも時間の問題だと思います。
筆者:ラジオ局として存続の危機ですね。
田口:はい。スタッフ、関係者の間で何度も協議したのですが、ここは寄付金を募るしかないということになりました。
筆者:もうそれしか手段がないということですね。今のところ状況はいかがでしょうか?
田口:ありがたいことに大勢の方から寄付をいただき、Facebookなどで情報も拡散していただいてます。ただ、必要な金額にはまだまだ届いていないです。来年が開局20周年……これからも多文化共生のまちづくりや被災地支援に取り組んでいけるよう、どうにか放送を存続させたいのですが。
筆者:そうですね……ところで真面目なお話の途中で恐縮なのですが、今回の寄付のイメージキャラクター『送信機ジィ』は強烈なビジュアルですね……。
『GENKAI』っていうシャツのデザインもなんだかツボで、ガジェット通信の編集者やライターの間で評判でした。
田口:うちのスタッフで絵の好きな者がいまして(笑)一番先に故障したのが送信機だったのでとりあえず送信機ジィ。次に出そうと思ってるキャラクターで『コーデックばぁ』というのもいます。
筆者:コーデックばぁを出す前に寄付が集まればいいんですけどね……。
私欲に走らず、よりよい社会を実現するために身を粉にして歩んできたFMわぃわぃ。誰しもがこのような大事を為せるものではないし、その必要もないだろう。しかし、このコミュニティFMを存続させることができるか否かはこの国に住む僕たちの評価を大きく分けるのではないだろうか。
『FMわぃわぃ 放送機材購入のための寄付』の案内は以下のURL。
http://www.tcc117.org/fmyy/index.php
※FMわぃわぃは電波受信地域以外にもウェブサイト『サイマルラジオ』(http://www.simulradio.info/)で聴取可能。
※画像の一部を『FMわぃわぃ』からご提供いただきました
http://www.tcc117.org/fmyy/index.php