『縞模様のパジャマの少年』ジョン・ボイン作(岩波書店)

  by みほこ  Tags :  

第二次世界大戦中、ヨーロッパで暮らしていたユダヤ人のおよそ1100万人のうち約600万人が、アウシュビッツをはじめとした強制収容所で命を落としたといわれています。あの時代、強制収容所に入れられたら命はないと思われていました。この『縞模様のパジャマの少年』は強制収容所を背景にした、二人の少年の物語です。

軍人の息子ブルーノが、父親の仕事の関係でベルリンから遠くはなれた田舎に引っ越しをするところから物語は始まります。
ブルーノは探検に出かけます。そして鉄格子を挟んだ場所から、同い年のシュムテルと出会います。シュムテルの住む場所は、ブルーノの部屋からみえる異様な光景の場所。収容所だったのです。
軍人の息子ブルーノとユダヤ人のシュムテル、二人の友情を軸に物語は進んでいきますが、二人には悲しい結末が待っています。

ブルーノは戦争についてよくわかっていません。父親の仕事に疑問を感じながらも軍人の父親を尊敬しています。シュムテルは自分が収容所に入れられている理由は分かっているけど、収容所で行われていることについてはわかりません。ラストは知らないことが引き起こした悲劇なのですが。これを悲劇と思うのは本を読んだからであって、ブルーノとシュムテルには悲劇ではなかったのかもしれません。
ブルーノの父親がすべてを知る場面。ブルーノの父親が登場することで悲劇のなかに唯一救いを持たせています。

ナチスのユダヤ人迫害については、隠れ家生活を書いた、アンネ・フランクの『アンネの日記』や強制収容所からの生還を書いた、V・Eフランクルの『夜と霧』といったノンフィクションが知られていますが、この『縞模様のパジャマの少年』はフィクションです。軍人の息子とユダヤ人の友情。現実ではありえないことがあったかもしれないと思わされるのがフィクションの凄さだと思いました。

 

 

 

 

 

野球はスワローズ、好きなキャラクターはつば九郎、使っている手帳はあな吉手帳。最近ランニングを始めました。興味があることは、色彩心理学です。

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