マイクロRNA(miRNA)で、人類の敵“がん”を早期発見せよ!プロジェクトスタート!

  by なみたかし  Tags :  

 意外に難しい“がん”の早期発見

“がん”という病気、自分は平気だと思っている方も多いと思う。しかし日本のがんによる全死亡者に対する割合は、30%以上。つまり、約3人に1人ががんでなくなっている。

そもそもがんというものは、通常身体が行っている細胞分裂をする際に、DNAの複製ミスが生じて突然変異によって起こるもの。 さらに厄介なのは他の細胞と違って自滅することがなく、どんどんと増えていってしまうということ。

がん治療で大切なのは、何といっても早期発見。早期発見すれば、治癒できている人が多数いることも事実。また、ほとんどのがんは、かなり進行してくるまで自覚症状がなく、自覚症状がでた段階では、すでに手遅れになっているケースが多い。

しかし、これまでの検診では、がん全体の約65~70%程度しか発見できない。特に肺・乳腺・子宮体部・膵臓・胆管の本当の「治癒可能な早期がん」をみつけることは困難。何と厄介な病気だろうか。

今回は、人類の敵である“がん”に対する朗報だ。8月18日、国立がん研究センター(東京・築地)で、たった1滴の血液に含まれるマイクロRNA(miRNA)を計測して、がんを簡単に早期診断できる画期的な次世代診断システムの開発を目指すことが発表された。

全国の研究者や医師ら約100人が集まり、5年で79億円を投じる大規模なプロジェクトになるという。マイクロRNA(miRNA)とは何だろう?果たして人類はがんを克服できるのだろうか?

サイエンスポータル → マイクロRNAでがん診断法開発

 エクソソーム中のmiRNAが、がんの転移に関係

近年、がん細胞が分泌するエクソソーム(exosome)と呼ばれる顆粒が、がんの転移において重要な役割を果たすことが明らかになってきた。

エクソソームは様々な細胞が分泌する直径30~100nmの膜小胞のこと。電子顕微鏡で観察することが可能である。この膜小胞の中には、タンパク質、mRNA、miRNA(マイクロRNA)などの核酸が含まれている。

国立がんセンターでは、最近、このエクソソーム中のmiRNAが、細胞間で移動していることを世界で最初に明らかにした。

2014年7月2日には、乳がんの特徴である術後長期間を経ての再発、転移について、骨髄中の間葉系幹細胞が分泌する微小な小胞エクソソームが乳がん細胞の休眠状態を誘導していることを発表している。

さらに、2014年4月8日には、大腸がん細胞が分泌するエクソソームに多く含まれるタンパク質の存在も明らかにし、大腸がん患者の血液(血清)から大腸がんが分泌したエクソソームを検出することに成功している。

大腸がん患者194人と健常人191人の血清を解析した結果、従来の血液検査(腫瘍マーカーCEAやCA19-9)とエクソソーム検査を比較して、エクソソームを調べる方が、従来の血液検査では見つけることが出来なかった早期がん検出の可能性が高いことを確認した。

 miRNAのデータベース作製で、がん早期発見へ

miRNA(マイクロRNA)は生物自身のDNAから合成される。miRNAは、細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどのRNAをいい、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているncRNA(ノンコーディングRNA:タンパク質への翻訳はされない)の一種である。

多くのRNA分子、例えばメッセンジャーRNA( mRNA) などはゲノムから転写され、翻訳のプロセスによりタンパク質が産生される。つまりRNA は長きにわたってゲノムとタンパ ク質を仲介するメッセンジャーとして研究されてきた。

しかし近年、全く新しいカテゴリー のRNA が見つかった。それがmiRNA である。ヒトやハエ、線虫などの左右相称動物ではこ のmiRNA は進化の過程を通じて比較的よく保存されているが、こうした左右相称動物の出現以前に分岐したイソギンチャクや海綿動物といった比較的単純な構造の動物でも同様な低分子RNA が存在する。

miRNA もゲノムから転写されるが、mRNA のようにタンパク質に翻訳 されることはなく、18~25 ヌクレオチドの小さなRNA 配列であるmiRNA は、主に翻訳阻害 とmRNA の切断 (分解) という2つのプロセスで標的となる複数の遺伝子を制御しているこ とが明らかになってきた。

ヒトでは700 を超えるmiRNA が同定され (おそらくは今後1,000 を超えると予測)、すべてのヒト遺伝子のうち1/3 もが、これらのmiRNA によって制御を受けるとされている。したがって、もしこのmiRNA に何らかの異変が起きれば、それがわれわれの疾患と深く関係することは容易に想像できる。

今回、ガン細胞のつくるエクソソーム中の“miRNAデータベース”づくりが始まることになった。わずか、7㏄程度の血液検査1回で、複数のがんが容易に発見できる…そんな時代が、数年のうちにやってくるだろう。

画像:DNAとRNA ”RNA-comparedto-DNA thymineAndUracilCorrected” by Users Antilived, Fabiolib, Turnstep, Westcairo on en.wikipedia – http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cb/RNA-comparedto-DNA_thymineAndUracilCorrected.png

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