上川隆也・佐々木希主演での『火車』、木村佳乃・中村蒼主演での『魔術はささやく』と、映像化が相次いでいる宮部みゆき作品。40冊を超える著作を一度は手にした方も多いことだろう。しかし未だに手が出ない人や、どれから読めばいいかわからない人もいるのでは?
そんな貴方に贈る宮部みゆき初心者ガイド。まずは宮部みゆきの著作傾向を掴んで、自分好みの1冊を探してみよう!
4大傾向“現代”“江戸”“社会派”“ファンタジー”
先に挙げた『火車』は多重債務問題をテーマとした重厚な社会派作品である。他にも直木賞を獲った『理由』、中居正広主演で映画化された『模倣犯』など、現代社会の闇を描いた作品は人気が高い。
その一方で江戸時代を舞台にした作品群は、魅力的な登場人物が活躍するシリーズが多い。人に見えないものが見える少女・お初を主人公とした『震える岩』『天狗風』をはじめ、『あんじゅう』は、少女が奇妙な話を集める中で自分と同じように心に傷を持つ人々と触れ合う近年の良シリーズである。
また、宮部みゆきは文壇界でも屈指のゲーム好きで知られており、その体験を下敷きにしたファンタジー色の強い作品も多い。アニメ映画化・コミカライズされたことで有名な『ブレイブ・ストーリー』は、ごく普通の小学生が勇者として異世界と友を救おうと奮闘する物語である。唯一のナンバリング作品である『ドリームバスター』シリーズは、精神体になった犯罪者を追いかけて人々の夢の世界にやってくる少年とその師匠が主人公だ。同名ゲームをノベライズした『ICO』はゲーム好きには良く知られた作品だろう。
読みやすさイチオシ『ステップファザー・ステップ』
肩の凝るような話は嫌だ、現代が舞台でさらっと読める本はないものか……そんな本をお探しの貴方にオススメなのが、1996年発刊の『ステップファザー・ステップ』である。
両親がそれぞれ家出し、中学生の双子の兄弟がだけが住む家に泥棒に入った男性は、双子に捕らえられ“お父さん”役を強要される……というのが話の序盤。双子と泥棒のテンポよい掛け合い、3人が直面する、ちょっと面白く、切ない物語が全7編収録されている。最後には双子が愛しくてたまらなくなること請け合いだ。
なお、『ステップファザー・ステップ』は児童向けの青い鳥文庫でも発売されている。親子でそれぞれ本を読み、感想を語り合うのも良い夏休みの思い出になるのでは?