10月28日の日経メディカルオンラインが、「喫煙者は痛風になりにくい?」という見出しで、興味深い記事を紹介しています。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/acr2013/201310/533264.html
痛風というと、おじさんの病気というイメージがあるかもしれません。また、痛風という病気を初めて聞いた人もいるかもしれませんので、少々解説を。
痛風とは、老廃物として排出されるはずの尿酸という物質が血液中に増え(高尿酸血症といいます)、関節炎を起こした状態をいいます。
尿酸という物質が血液中に増えて、体内で結晶状態になると、異物を排除する白血球(正確には主に好中球)が、尿酸の結晶を攻撃するようになります。その結果、血管や他の組織が炎症を起こして、激痛が起こるようになるのですが、俗に、風が吹いただけでも激痛が起こるほど痛いということから、痛風と呼ばれてきました。
体内で尿酸が増える理由については、お酒の飲みすぎ、高カロリーなものを食べすぎて太ることが大きな原因とされています。ただ、比較的健康に気をつけた生活を送っている人も痛風になることがあるので、遺伝や他の原因があるのではないかと言われてきました。
さて、「喫煙者は痛風になりにくい?」という日経メディカルの記事ですが、10月26日の米国リウマチ学会で報告されたスタンフォード大学メディカルスクールWeiqi Wang氏の研究報告を根拠にしているようです。
スタンフォード大学メディカルスクールのWeiqi Wang氏らは、1948年から2002年の統計データを調べ、調査開始時に、痛風にかかっていない人を対象に(痛風にかかっていないという判断は、X線診断、医師による診断、痛風薬の服用、自己申告を根拠にしているようです)最長54年間追跡調査を行っています。
同氏は、カプランマイヤー法という、疫学調査などで信頼されている統計方法を使い、痛風の原因となる飲酒や太りすぎなどの原因を排除して、喫煙者と非喫煙者を調べたところ、喫煙者のほうが痛風にかかる人が少ないことがわかったと報告しています。
また、面白いことに、喫煙者が痛風にかかるリスクが少ないことが分かったのは男性のグループのみとのこと。女性の喫煙者のグループは、喫煙と痛風との関連性を見出せなかったと報告しています。
Wang氏は、男性については、タバコが痛風の発症を抑える可能性があることを主張していますが、同時に、タバコのどのような物質が痛風の発症について影響を与えているかについては分からないので今後の研究が必要だと述べています。
「まあ細かいことは抜きにして、痛風予防に役立つならのためにタバコを増やそう」という男性もいるかもしれません。Wang氏は、タバコが健康を損ねる原因になっているのは間違いないので、喫煙は勧められないという、医学者として信頼できる意見も述べています。
この研究発表においても、喫煙者と非喫煙者のグループを分けるにあたって、タバコを吸っているかどうかの確認を、自己申告を根拠にしています。したがって、喫煙が痛風の発症を抑制する原因については、少なくとも今後の研究を待ったほうがいいでしょうね。
そういえば、喫煙が乳がんの発症にかかわる遺伝子を抑制するという研究発表がありましたが、私の母は、乳がんと肺がんのダブルパンチで逝きました。
たばこを吸う方は、食生活を見直して、睡眠不足や運動不足にも気をつけながら、くれぐれも適量を。そして、お子さんやタバコを吸わない方に配慮して、喫煙可能な場所でタバコを楽しむようにしてくださいね。