彼岸花を見ると、申し訳ない気持ちになる。
あれはまだ保育園に通っていた頃。
「彼岸花には毒があるんだよ」という根も葉もない友達の言葉につられ、“正義”の名のもとに、片っ端から攻撃を加えていった。
道端に咲いているもの、人様の庭に咲いているもの…見境なかった。
私たちの攻撃は、なぜか“おしっこ”だった。
彼岸花を攻撃する術など沢山あっただろうに、なぜか、私たちはこの方法を選んだ。
群生を見つけては、その根本へ目掛け、来る日も来る日も放水した。
水量に限界があったため、中間と担当を決めたりもした。
かくて、私たちの集落は平和が訪れた。
…今となって思えば、あれは単に“旬”が終わって枯れ果てただけなのかもしれない。
今日、大家さんの庭で珍しい色の彼岸花を見つけた。
思わず尿意をもよおしたが、攻撃に出ることはなかった。
あれから30年。
…大人になった。