対面キッチンのカウンターで腰骨を強打する。
なぜ、こんな位置に腰骨があるのか…。
背の高さも“ほどほど”が望ましい。
久しぶりに温泉へ行った。
脱衣所では恰幅のいいオジサンや筋肉隆々のお兄さんが自慢げに裸体をさらしている。
私は一番隅っこでコソコソと服を脱ぎ、一応、きちんと畳む。せめて“育ちの良さ”くらいアピールしたい。
「190センチくらいあるの?」
突然声をかけられ、思わず“前”を隠しそうになり、踏みとどまる。自信がないわけではない、と胸を張る。
「だいたいそのくらい…あります。」
「そうかぁ。いいなぁ。」
こんなふうに見ず知らずの人に声をかけられるのは初めてのことではない。
エレベーターの中を中心に結構な頻度で発生している。
やはり…背の高さは“ほどほど”が望ましい。
温泉に行くと、湯船に首まで浸かる。
というより、隠す…体を。
マッチョへの憧れを抱いてかれこれ20年。
大器晩成型なのか、未だ貧相なボディーのままだ。
努力をしていないわけではない。
毎晩のように筋トレらしき行為は行っている。
しかし、筋肉を鍛えているというよりも、筋と関節を動かしている感覚しかない。つくづく“針金”に生まれていなくてよかったと思う。シコシコ動かした結果、金属疲労で断裂するなど面白すぎてシャレにならない。
以前、ショッピングに行った際、マネキンを指して「スタイルいいよね~♪」と感嘆する声を聞いた。服を着せるために作られたボディーは、きっと魅力的なのだ。
見る人が見れば、金属ハンガーのような私のボディーは…魅力的だろうか?
“服を着せるために作られた”…という点では、マネキンに似ていると思うのだが…。