
テンセントグループ傘下の中国最大級のオンライン小説・漫画プラットフォームを展開する閲文グループと、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、空間機構はキャラクターや物語といった「IP(知的財産)」を活用した新たなビジネス展開に向けて協業基本合意を締結した。締結文書署名式を取材したのでレポートする。

今回、日本での最初の取り組みとして大阪・戎橋の「TSUTAYA EBISUBASHI」において、閲文グループのIPを展開するポップアップストアを展開する。また「ノベルフォーミュラ日本GP」という新たな小説投稿コンテストを実施する。また、受賞作品を縦型動画、漫画、アニメ化、さらにドラマやゲーム化への検討を予定する。

これは日本の作家や読者にとって大きなチャンスとなり、小説家やクリエイターがグローバルなプラットフォームで作品を発表する貴重な機会であり、今後のコンテンツ産業において重要な一歩となるだろう。

調印式には、閲文から王晨(おう・しん)副総裁、CCCからは鎌浦慎一郎執行役員が、そして空間機構からは高龍太郎代表取締役が臨んで、これらの協業の基本的事項に合意したことを内外に示した。

中国語と日本語が飛び交う中で、印象的だったのは中国関係メディアの出席者が多かったことだ。日本では出版社でないと本としての出版が難しく、それに頼らなければ自費出版するしかないのだが、オンラインで公開された小説に対して出版社を介さずに読者がいわゆる投げ銭のような対価を支払うことが一般的になっている中国市場では、このようなビジネスモデルが国際化することは大きなニュースとなりえるのだろう。

ゲスト登壇した大阪観光局経営企業部長の田中嘉一氏はコメントの中で「ノベルフォーミュラ日本GP」を大阪で開催することの意義と謝辞を、また授賞式も大阪でしてほしいことを付け加えて会場の笑いを誘ったのは、さすが大阪といったところか。

「ノベルフォーミュラ日本GP」開催の発表会では、日中の各界から登壇者を招き、双方の文化比較とともに新しいデジタル技術を用いたコンテンツの発信に期待を寄せた。

今回協業に合意した各社の役割は次の通り。閲文グループは、中国国内で数億人規模の読者を持つウェブ小説や電子書籍を中心に展開する大手企業。オンラインプラットフォーム「起点中文网」や「云起书院」をはじめとする数多くの人気作を生み出しており、それらの作品は漫画化、アニメ化、映画化等、多岐にわたるメディア展開がされている。さらに、閲文グループは中国のエンタメ業界で非常に大きな影響力を誇り独自コンテンツ文化を創出している。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、「カルチュア・インフラを、つくっていくカンパニー。」をミッションに、企業向けには知的資本を活用して課題解決を目指すソリューション事業、パートナーシップを通じて新たな価値を生み出し、新しい事業機会を創出するコンサルティング事業を展開する。そして生活者向けには新たな価値を提供しながら知的資本を蓄積するリテール&スタイル事業を行う。
空間機構は、長年の日中エンタテインメント、カルチャー、コンテンツビジネスへの投資やプロデュースの成果と経験を活かし、新たな日中のIP事業やカルチャーとインバウンド融和の展開をマネジメントする。
※写真はすべて記者撮影