
[筆者撮影・コラージュ]
<リード>
2025年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻開始から3年が経つ。
もう3年が過ぎようとしているのにウクライナの直面している現実は変わり映えがしない。東部ウクライナのドネツク州工業都市のコンスタンチノフカにロシアが空爆し、少なくとも2人が殺害された、と現地の首長が明らかにした。その後、州知事によればウクライナのドローン攻撃でロシアの都市ベルゴロド地域の国境近くで一人が殺害されている。露ウ相互に戦争の現場で流血沙汰は止まず、無辜な犠牲者が増え続けているのが今の戦況だ。
日本では「Stand with Ukraine Japan」が都内で反戦デモを主催した。
「ロシアに抵抗しているウクライナ人は数多くいる。戦争によって非人道的な環境で拘束された兵士や民間人たち。全身アザだらけで痩せ細り精神的なトラウマを抱えたまま帰ってくる戦争犠牲者。侵攻3年目を迎えた今日、捕虜も軍人も等しく同じ人間だと訴え、不法に殺害されて犠牲になられた人々にこの平和を求めるデモで黙祷を捧げたい」と円陣を組んだままデモ参加者がひざまづいて祈った。
主催団体メンバーの一人で日本在住のイホル・イホナティエフさん(27)は戦争が長期化するのをどう見ているのか?
「今すぐ戦争を止めると2〜3年後にロシアがまた新たな戦争を始めるだろう。それでは本当の平和ではないと思う」と述べ、筆者がゼレンスキー大統領は「平和のためにならNATO加盟と引き換えに辞任も辞さない覚悟がある」と語ったことについて質疑するとイホナティエフさんは「ゼレンスキー大統領は真の平和を望んでいるので今のトランプ氏とプーチン氏が強いろうとしている平和は本当の平和ではないと思う。新たな戦争が始まることのない持続する長期の平和を追求していると思う」と答えた。続けて筆者はトランプ氏がゼレンスキー氏を「独裁者」と呼びウクライナ抜きで平和交渉を進めていることについて伺うと、「今、世界では3つの独裁者がいると思う。核兵器を保有している国の中で国際主義、独裁者に支配されている国は3つある。その1人がトランプ氏だ。ゼレンスキー氏は民主主義的な選挙で選ばれた大統領だ。過去に投票していないかもしれないしそれについて起こり得る動揺でゼレンスキー氏が負けるかもしれないが、今の戦時下でウクライナ人のために必要な指導者だ」と強調した。
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<リード>
【1】ルーマニアに身を寄せるウクライナ難民の心理的ケア
【2】ウクライナ・ロシア両陣営 未だ明らかではない軍事犠牲者数
【3】英国軍ウクライナ地上部隊へ派兵の用意有り
【4】ウクライナ不在の米露首脳間「停戦案」を舵取りできるか?
【5】米国ケロッグ特使会談後に一転するゼレンスキー氏の資源外交譲歩
【6】米国が中国に80%資源輸入依存するレアアースのデメリット
<結び>
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【1】ルーマニアに身を寄せるウクライナ難民の心理的ケア

[©︎Red Cross societies in Ukraine]
ウクライナで活動する国際NGO「Save the Children」が2025年2月17日に詳報した情報によると、ウクライナに住む4人に3人が、この戦争3年間を通して財政難に直面している。特に女性と子供が急増する貧困の矢面に立たされている。しばしば家賃や公共料金、食料価格、衣服、衛生用品が急騰し生活に苦労しているという。「2025年国連人道的ニーズ対応計画」が取りまとめた報告書によれば、ウクライナの家族に彼らの住む家を売却したり、見知らぬ人にお金を無心したり、医療費を使うことを減らしたり、リスクの高い仕事に就くなど、およそ75%近い人が生活に困難を来していることが分かっている。
また「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)」駐ルーマニア事務所には、2024年12月末で一時的に身元引受けしていたウクライナからの「庇護希求者(Asylum Seeker)」は179,737人に上る。心理学者が調整役として介入する作業部会(WS)でステンド・グラスを描いたり、クリエイティブなアプローチをすることをウクライナからルーマニアに逃れてきた難民に促し、7人のウクライナ難民の傷ついた感情を経て「強靭性(レジリエンス)」をもたらすメンタルヘルスの一環として人道支援を行なっていることが明らかになった。
他方、「国連人口基金(UNFPA)」が公表した報告書によると、UNFPAが「性的及び生殖器の健康(sexual and reproductive health : SRH)」に従事する支援が行き届いた345,980人のうち97%がウクライナ人だった。またジェンダーに基づく暴力(gender-based violence : GBV)予防,とリスク軽減、対応サービスから恩恵を受けたのも92%がウクライナ人だったことが分かっている。
【2】ウクライナ・ロシア両陣営 未だ明らかではない軍事犠牲者数
ウクライナ、ロシア共に未だ肝心の「軍事損失数」を明らかにしていない。2024年12月にウクライナ独立通信社「Yuri Butusov(略称:ウニアン)」はウクライナ軍情報源から70,000人の死者と35,000人の行方不明者が出ていると公表した。欧米に情報源を持つ複数の西側メディアは50000から10万人のウクライナ人が戦死したと報告している。
一方、ロシアは2022年9月に6000人のロシア兵士が殺されてから、その軍事的死者数を公表してこなかった。実際には幾分低い死者数だと解釈されている。ロシア独立系ニュースサイト「Mediazona(メディアゾナ)」と「BBCニュース・ロシア・サービス」は名前が一致している殺されたロシア軍兵士は91000人いると確認しており、未だ全容が解明されていない正式な死者数は「さらに多くなると考えられる」と報じている。
付加すると、ロシアのために戦って散った北朝鮮派遣兵死者数は1100人だったと韓国当局は推定しているが、ウクライナ当局は3000人近くに上ると公表。
ロシアの侵攻による戦禍に巻き込まれ死亡したウクライナ市民は数千以上とも見られ、その内情は複雑だ。「国連ウクライナ人権監視団」は12500人の市民が殺害され、28,400数人が負傷したとの統計で一致した。同調査官のダニエル・ベル氏は「実際の数はずっとずっと多く見積もられるだろう」とし、「国際組織には、ロシアによるウクライナの占領地へのアクセス権はないに等しいからだ」という。2022年ロシアがマリウポリを単独で掌握した時、何万もの人が死を覚悟したという。異なるウクライナ公式統計で20,000から80000人もの間の推定値が出ていた。ウクライナ占領下のロシア・クルスク州ではウクライナ軍が8月に打ち出した侵攻作戦で350数人に及ぶ市民が殺害された。またベルゴロド州もウクライナ軍の規則的な攻撃に晒された。攻撃に遭った両州政府が2024年末に統計を公表した。
行方不明者は、ウクライナ当局が2025年2月までに63,000人の名前を登録しその行方を追っている。またロシアは公式な人数を把握してはいないが、2024年11月に首都モスクワで行われた政府会合で、ロシアの国防次官アンナ・ツィビリョワ氏が語ったところによれば行方不明のロシア軍兵士の家族からDNAテストを要請する声が48,000人寄せられているという。
【3】英国軍ウクライナ地上部隊へ派兵の用意有り

[©︎BBC「スターマー英首相、ウクライナの平和維持のため地上部隊派遣の「用意」あると
」(2025年2月17日)]
英国のキア・スタマー首相は、今年発足した2期目のトランプ政権が、ヨーロッパの存在抜きにウクライナ戦争を終わらせるためにロシアとの開かれた会談を行うと公表した後、ウクライナに関する緊急首脳会議を行うため西洋の首脳をフランスに集った。
米国のキース・ケロッグ ウクライナ侵攻終結担当特使は「デュアル・トラック(交渉:地政学的現状に即し、インド太平洋地域と中国の両方を大きく関与させる形を取ることで実現できる可能性がある交渉)」を議論したが、ウクライナ側はその会議には出席しなかったであろうと語った。同月16日にはトランプ氏自身がウクライナ問題は交渉の一部にしか過ぎないと斬り捨てている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ウクライナについてウクライナ抜きで米国とロシア間だけのあらゆる決定を決して受け入れることはできない」と「NBCニュース」の記者会見で語った。
スタマー氏同様、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、ポーランドのドナルド・トゥスク首相、スペインのペドロ・サンチェス首相、オランダのディック・スホーフ首相、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相。さらに欧州評議会アラン・ベルセ連邦大統領、欧州委員会フォン・デア・ライエン委員長、NATO(北大西洋条約機構)マルク・ルッテ事務総長も同様にエリゼ宮殿で集い、主催したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は「非公式な会談だった」と述べた。
「Daily Telegraph」紙によれば、スターマー氏は「必要であれば、平和的な取引を強化するために英国軍をウクライナの地上部隊に派兵する『用意はできているし、そのつもりだ』」と語ったという。
欧州の外交努力とは、同月12日にロシアのウラジミール・プーチン氏と行った、トランプ氏の「長い電話会談」に続くもので、ウクライナ特使のケロッグ氏はその時点でも「ウクライナ問題でヨーロッパには着くべき平和的交渉のテーブルは用意していない」と欧州を軽んじていた。
【4】ウクライナ不在の米露首脳間「停戦案」を舵取りできるか?

[©︎日本テレビ「トランプ氏『資源はよこせ』」プーチン氏「ウクライナを支配下に」(2025年2月14日)]
米露それぞれの代表特使がウクライナ戦争を終結させるためにサウジアラビアでハイレベル協議を行なった。4時間の協議を終えてロシア側は「肯定的かつ建設的な協議だった」と語った。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のマルコ・ルビオ国務長官が協議しウクライナもヨーロッパも招かない当事者不在の会合だった。
「BBC」のリヤド支局特派員がルビオ氏に「米国はウクライナを傍に追いやるつもりか?」
と尋ねたが、ルビオ氏は答えなかった。ロシア大統領府によるとプーチン氏は「もし必要なら、私にはゼレンスキー氏と話す用意ができている」と語ったという。だがゼレンスキー氏は「ウクライナ抜きの和平交渉は再度認めることはできない」と繰り返し話したという。
この米露ハイレベル協議にラブロフ氏は3つの鍵となる条件で合意に至ったとしている。
(1)両国の代表特使は互いにできる限り早く大使館への銀行送金を規制することを含む外交使節にとっての障害を取り除くこと。
(2)ウクライナの和解に関するプロセスを開始する。米国は代表者を任命すること。さすればロシアもロシア側の代表者を任命するつもりだ。
(3)米露の全面的な協力を再開し、様々な分野で拡大するための条件を整える。
だが、ラブロフ氏はウクライナのNATO加入の一案はロシアにとっての「直接的な脅威」を代表するものになることを危惧している。協議中ずっと注目されたのはトランプ氏が次のように発した言質だった。「ジョー・バイデン前米国大統領の最大の誤算の一つだった。」と批判した「西側諸国の中で最初の首脳だった」からである。ラブロフ氏からはプーチン氏がNATOの拡大とウクライナのNATO同盟国への吸収はロシアにとって「直接的な脅威」としての行為になるだろうとくり返し説明してきていることが語られた。「幾つかの他の旗の下で武力行使することによって何かが現れたとしても、何ものも変えられない。そんなものは絶対的に受け入れることなどできない」と。
ロシアが一貫してウクライナのNATO加盟に反対してきたのは、根源的にNATO軍にその国境に近すぎる場所まで進軍を許すことになりかねないと恐れてのことだろう。
しかしながら、2008年にNATO同盟国は、ウクライナが完全に加入することができたはずだし、ゼレンスキー氏は全面的なウクライナへの侵略に至るプロセスのために最優先処理されるべきだと加盟を求めていた。
トランプ現米政権は「それは現実的な結果にならない」と語り、この野望を諦めたとされている。
だが2025年2月20日に、トランプ氏とゼレンスキー氏の激しい鍔迫り合いから1日明け両氏の亀裂はさらに深まったと「BBC」が報じた。トランプ氏は電話会談したゼレンスキー氏のことを「独裁者」とレッテルを貼り、ヨーロッパは紛争に平和をもたらし損なったと指弾した。またトランプ氏は、2022年2月にロシアにウクライナ侵攻されて以来、戒厳令下にありゼレンスキー氏の大統領職は事実上の選挙を拒否した一時停止中にあることも糾弾したとホワイトハウスは確認した。しかしながらサウジアラビアでの米露ハイレベル協議を受けて戦争当事国のウクライナが除外されたことに反感を抱いたゼレンスキー氏も早期にトランプ氏がロシアによって煽られた「偽情報空間の中で生きている」と声明を出して相互に糾弾しあっているとBBCは事実確認した。
交渉は世界の首脳たちの反応を引き起こし、中でもドイツのショルツ氏はトランプ氏の発したコメントに対し、電話をかけて「虚偽であり危険だ」と忠告した。英国のスタマー氏もゼレンスキー氏と電話会談し、ウクライナの指導者を支援する。「戦時中に選挙を一時停止するのは完全に合理的なことだ」とゼレンスキー氏の擁護に回った。
ロシアのプーチン氏は、「喜んで早期にトランプ氏と会談する」意向を示し、そのために「より一層の準備をしなければならならない」と付け加えた。一方でプーチン氏は「戦争を終結するための会談から誰もウクライナを除外していない」とも語っている。
【5】米国ケロッグ特使会談後に一転するゼレンスキー氏の資源外交譲歩

[©︎BBC” Trump ‘very frustrated’ and Zelensky must strike minerals deal, says adviser”(Feb. 21 2025)]
だが米国のマイク・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官がゼレンスキーと会談したところによると、ゼレンスキー氏は和平交渉のテーブルに戻る必要があり、米国の求めるウクライナの重要鉱山への立ち入りを許可する契約を結ぶことに前向きに転じたという。
2月19日にトランプ氏がロシアとの戦争の間中、米国がウクライナに提供してきた支援と同量を反映できるだけのウクライナの持つレアアース鉱物の共有を求めてきたが、ゼレンスキー氏はこれを拒否したという。このコメントはゼレンスキー氏とケロッグ特使による首都キーウでの会合に影を落とした。ウクライナはリチウムやチタニウム、石炭、ガス、石油、ウラン鉱床を含む、重要な元素と鉱物の巨大な鉱床を保有している。その供給価値は10億ドルは下らないと見做されている。翌20日、ウォルツ氏は「ウクライナの保有する希少価値の高い鉱物レアアースの取引きをこれまでの援助の見返りに交換条件にする」と示唆した。米国が既にウクライナに提供してきた支援の賠償名目でさえある。ウォルツ氏は「米国はウクライナ人に対し信じがたいほどに歴史的な機会を与えてきた」と語り、またそれはウクライナにとって望むべく「持続可能」で「最良の」安全保障になったはずだと付け加えた。だが、ゼレンスキー氏はこの申し出を拒否し、「私は売国奴になりたくはない」と米側が持ちかけた交渉を蹴った。
あくまで強気なゼレンスキー氏と首都キーウで会談したケロッグ氏は「ウクライナの指導者はウクライナ戦争を終わらせるために米国と『投資・安全保障協定』を結ぶ用意はできている」と公表した。その会談は「生産的だった」とゼレンスキー氏は歓迎したという。
トランプ氏が喉から手が出るほど欲する「レアアース」とは米国でいかなる価値を持つのか?「米国地質調査所United States Geological Survey : USGS)」の「2024年純輸入依存度」によれば、レアアースの主要輸入国は中国(香港含む)、マレーシア、日本、エストニアで80%を占め、ランキングは28位だ。「2024年米国の主要な重要鉱物統計推定」ではレアアースは一次生産が1,300、見かけの消費量が6,600、主要輸入国は中国(香港含む)、純輸入依存度は80%である。また「2024年世界の主要な重要鉱物統計推定」を概観すれば、レアアースの主要な輸入国は中国で、主要国の生産が270,000、世界生産量合計は390,000、世界全体割合は69%を占めている。

[©︎「米国地質調査所(USGS) 」「2024年純輸入依存度」]

[©︎「米国地質調査所(USGS) 」「2024年米国の主要な重要鉱物統計推定」]

[©︎「米国地質調査所(USGS) 」「2024年世界の主要な重要鉱物統計推定」]
【6】米国が中国に80%資源輸入依存するレアアースのデメリット

[©︎日経ビジネス「トランプ氏と習近平氏との奇妙な取引き」(2025年2月12日)]
つまり、トランプ氏の本当の狙いは、中国に80%も依存している米国の資源供給の不利な状況を巻き返し来たる中国との貿易戦争への備えを盤石にしておきたいからではないか。
トランプ政権に交代する以前は、「資源外交」で反欧米のロシアと中国の関係を強めてきた。ロシアは生産量で世界2位の天然ガスと3位の原油というエネルギー資源をパイプラインを通じてEU諸国に輸出し、資源を「武器化」して政治的な戦略にも使ってきた。特にウクライナ政権が欧米寄りになるとその供給を制限することで圧力をかけ、市民の経済や生活を混乱に陥らせていった。2022年2月にロシアがウクライナ侵攻してからは欧米諸国の経済制裁への対抗措置としてEU諸国への40%をロシアに依存していた天然ガス供給を制限された。特に55%をロシア依存していたドイツがエネルギー価格の高騰に苦しむことになった。しかし、国際的に孤立したロシアは中国やインドなどをEU諸国に代わる資源の輸出先として担保し、プーチン氏と中国の習近平国家主席は互いを「戦略的パートナー」と位置付けその結びつきを深めた。その背景にあったのが「資源外交」だったのだ。
2014年3月、ロシアによる一方的なクリミア半島併合した2ヶ月後にプーチン氏は訪中し、天然ガスの取引きを交渉した。結果、30年間にわたる天然ガス販売と東シベリアでのパイプライン建設を取り付けたのだ。そして2019年にはロシアから中国へ直接天然ガスを送る新パイプラインの「シベリアの力」が完成。2022年12月にはロシア東部最大の「コヴィクタ・ガス田」でも操業が始まり、全面開通した。さらには2025年までに「シベリアの力2」の稼働も計画されている。
他方、EUの欧州委員会は「リパワーEU」というロシア産化石燃料からの脱却計画を打ち出した。ウクライナへの蛮行を働くロシアには依存できないと国際社会からの孤立化を狙った「脱炭素化エネルギー戦略」だ。「リパワーEU」は「クリーンエネルギー移行の加速」「省エネルギー」「エネレギー調達の多角化」の3本の柱で構成される。2030年までに脱ロシアを目指すことを掲げ、ロシアに代えて米国や中東などで算出する「液化天然ガス(LNG」」
の確保を急いでいるという。しかしドイツにはLNG受け入れ基地がなかったため、2022年5月からLNG 貯蔵船受け入れ拠点基地を建設し、同年12月にはウィルヘルムスハーフェンを完成。ブルンスビュッテルやシュターデの建設計画にも着手しているという。さすれば輸入していたLNGを自国で供給する音ができると目算されている。ドイツのみならず、スペイン、イタリア、ベルギー、ポーランドなどでも基地建設計画が進み、EU諸国の脱ロシア化は着々と進んでいると見做されているのだ。
<結びに>
立ち戻って祖国の安寧を奪われたことに3年目を迎える反戦デモを行った主催者のウクライナ市民の声に今一度、耳を傾けよう。前出の英国のスタマー氏が「ウクライナが望むなら英国軍をウクライナの地上部隊に派兵しても構わない」と発言したことについて筆者が前出のイホナティエフさんに聞くと「今のウクライナ問題だけではなく全世界の問題だ。最初はヨーロッパの問題だった。しかしロシアの侵攻は全ヨーロッパが結束してウクライナを武器や兵士などどんな形ででも応援しなくてはならない。」と指摘。さらにトランプ氏がウクライナのレアアース鉱物を資源外交交渉の条件に突きつけてきたことを筆者が問うと、イホナティエフさんは「トランプ氏が個人的に望んでいるものではなく、ちゃんとレアアース資源を渡したからには、ウクライナの主張を尊重した上で米国が行動すればこそのフェアな取引きになるだろう」と力強く語った。