イルカにはそれぞれ名前があるのを御存知だろうか。フリッパーだのウィリーだのと人間がつけた名前ではない。野生のイルカの話だ。
7月22日『米国科学アカデミー紀要』に発表されたところによると、野生のハンドウイルカ(Bottlenose dolphins)がそれぞれにお互いに固有の名前をつけて呼び合っているという事実を、スコットランドのセントアンドリュース大学のチームが初めて証明した。
イルカは様々な音を出して交信することが知られている。水族館などでイルカの鳴き声を聴いた事のある方も多いかと思う。研究チームが注目したは、そうした交信のなかに、それぞれの個体が発する特殊な音の配列が含まれている点だった。そこで、その特殊な音の配列をそっくり再現して、水中スピーカーを通して再生したところ、特定のハンドウイルカの個体を呼び出す事に成功した。この特殊な音の配列が、それぞれのイルカが持つIDや認識ラベルのようなものだったのだ。つまり、これがイルカの名前である。
イルカはグループを単位として生活するが、なにしろ広大な海のことである。お互いを識別するためには、地上の動物のように目を使ったり、匂いを感じ取ったりといった事は難しい。さらにイルカは特定の海域にとどまったり、巣をもつという事をしない生き物である。そのためにそれぞれに固有の名前をつけて、音を使って認識し合う必要が生まれたとヴィンセント・ジャニック博士は推測している。
今回の研究は「固有の名前を用いた呼びかけに野生動物の応答が観測された初めての事例である」として、研究者たちの注目を集めている。
BBCニュース
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-23410137