ただのエンターテイメントではない 圧倒的なスケールと、未来への警鐘

  by 草薙 斐  Tags :  

“地獄の扉が、開く――。”

劇中のモーガン・フリーマン演じるアメリカ合衆国下院議長の台詞である。一体地獄の扉とは何なのか?

この作品はただのエンターテイメントではない。ホワイトハウスが陥落するという、いかにもハリウッドメイクの「ブロックバスター」という感じがするが、膨大な情報、取材に基づいた「あり得る」話なのだ。原題は”OLYMPUS HAS HALLEN”,直訳すれば「オリンパスは落ちた」という意味になる。オリンパスとはギリシャ神話で「神々の住む山」のことである。けれどこの映画は神話の実写化ではない。つまりオリンパスとはホワイトハウスを指し、この言葉はシークレット・サービス達が使う隠語である。劇中では、ジェラルド・バトラー演じるマイク・バニングが、「ローマはどうだ?」と同僚に投げかけるシーンがある。ここでいうローマとは大統領たちが動いている中枢部のことだ。その他にも隠語や専門用語が多く出てくる。非常にリアリティがある脚本なのである。

では、「地獄の扉」とは何か?ケルベロス・コード、この言葉を頭に入れて劇場に向かって欲しい。ケルベロスとは、同じくギリシャ神話にて出てくる「冥界の番犬」、ここでは「地獄の番犬」と解釈しておいた方がいいだろう。ケルベロスを突破して、テロリスト達の最終目的として得たいものを知れば、同じく「地獄の扉が開く」とつぶやいてしまうかも知れない。

そして、このフィクションで描かれた地獄の扉が開いてしまう光景は、決してあり得ないことではない。ジェラルド・バトラー曰く、「9.11の以前、アメリカの情報機関はテロリストに対する想像力を失っていた。この映画は、テロに対する想像力を掻きたてるだろう」と。

エンターテイメントとして楽しんでもらいたい反面、テロに対して脅威を感じ続け、考えることを説いてくれている作品だ。

<作品概要>
エンド・オブ・ホワイトハウス
6月8日(土) 新宿ピカデリー他全国ロードショー
(C)2013 Olympus Productions,Inc
配給 アスミック・エース

公式サイト 『エンド・オブ・ホワイトハウス』
http://www.end-of-whitehouse.com

映画、依存症、英語、アメリカ文化について研究しております。ホームページでは気ままにTIME誌の記事を訳していたり、海外ドラマに解釈をつけたりしています。

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