【366セルフ易断】其ノ弐 ~清荒神清澄寺~

  by 千徒馬丁  Tags :  

運勢とはピタリと当るものなのかどうかは置いといて、誕生日別の運勢がおみくじ感覚の100円で手に入るセルフ易断。
初詣のテキ屋の中で、もしくは参拝道の途中で、あるいは境内で、自動販売機感覚の易断を見たような見ていないような言われてみたらあったような気もする程度には記憶にある御仁もいることだろう。
そう、それはひっそりと佇む無言の棚なのである。

【硬貨投入貯金箱方式】

易断の本が300円~2000円、易断サイト月額基本料金が300円前後、易断アプリが300~600円前後、運命易断鑑定料が1000円~5000円。

相場からするとセルフというだけで100円で買えるこの易断は破格値であるが、この易断に人が群がっていることを見たことがないし、長い行列が出来ているところも見たことがない。看板がピタリと当ると言っているにも関わらず、人気が出ない。
このセルフ易断陳列棚の前で立ち止まり硬貨を入れて購入している人物を目撃することは少ないものの、しかしゼロではないのだ。私は今年に入ってふたりも見た。てっきり購入者は自分だけだと思っている中で自分以外の他2名を目撃すると十分な人気だと感じるが、商売目線で見ると半年で300円の売り上げということになる。
たまたまタイミングが悪かっただけでもっと購入者はいると計算しイロを付けて半年で倍の4名と見積もろう。年商800円である。いくら無人とはいえ印刷代はかかるだろうに365日で800円の稼ぎでは割に合わないではないか。
それでもこんなに長く未だにこのセルフ易断は廃れない。
初詣限定の書き入れ時しかないと言っても過言ではないのに、廃れない。
ずっと日銭価格でも一定の需要があるから廃れないのではないか。
ただ、その需要が目に見えないカタチなだけで。
そんなわかりにくい需要が発生している、廃れないセルフ易断の魅力をたっぷりお届けしようというのがこの記事の目的である。

【ザ・固定のセルフ】

荒神さんの名で親しまれる清荒神清澄寺。
この参道には荒神時間が流れており、一日の終わりがとても早い。
15時くらいから参道の店々は店じまいの準備を始め、16時には完全にシャッターを降ろしてしまう。
1.2㎞ある荒神さんの参道のゆるやかな坂道を、左右100店舗はあろうかという店にいちいち立ち寄りながら楽しみたいのであれば「昼まで寝てた」というスタートでは遅いのである。

荒神さんは固定のセルフ易断がある数少ないスポットである。

全国セルフ易断マップというのを作るために行脚したわけではないから滅多なことは言えないが、予想では数少ないと思う。
なぜなら中山観音・売布神社・清荒神と頑張れば歩ける範囲内に参拝スポットが並んでいるが、セルフ易断がいつ行っても置いてあるのは荒神さんだけなのだ。

1.2㎞の参道を歩こうというのだから当然お天気の優れている日に参るひとが殆どであると思うが、ふとここで疑問が浮かぶ。
この固定のセルフ易断は雨の日にはどうなっているのだろう。
雨風を凌ぐ設備は用意されているのだろうか。
暴風雨にも負けずその設備を剥いでまで中の易断貯金箱に100円硬貨を投入し易断を購入しようというひとが中にはいるかもしれないが、商売人であれば雨の日に客足が鈍ることは想定してあるはずだ。
だから通常の商売人であれば、このセルフ易断そのものを店じまいすると思う。
しかし、だ。
もともと年商800円でも設置する猛者である。
この目で確かめねばなるまい、近いんだし。
私は小雨の降る中、自転車を走らせた。
濡れながら走らせた、清荒神まで。

【小雨でもセルフ易断が買える清荒神】

小雨だったせいか着く頃にはすっかり雨が上がってしまいあろうことか陽まで差して来た。

おかげでセルフ易断はいつも通りである。

しかし日に焼けて色褪せほのかにカビまで生えている“幸運の手引”から判断すると、多少の雨であれば野晒しの可能性が高い。

幸運が逃げてしまいそうなくたびれ加減である“幸運の手引”を100円で購入する。
私自身は運勢というものは一年更新型くらいに思っているので、初詣で引いたおみくじが私の今年の運勢のすべてだが、その運勢とやらにも真剣に目を通すことはなく、夏までには運勢のウの字もないほどすっかり消える。同じ年に同じ場所の同じセルフ易断であるが、晴れの日と雨の日で運勢の違いがみられるのかもしれないと、購入してみた次第である。

【大雨でもセルフ易断が買える清荒神】

土砂降りのセルフ易断はどうなっているのだろう。
それを確かめるためにわざわざ出向く、もちろん自転車で。
ズブ濡れである。
しかし不思議なことにまたもや着く頃には、陽が差す。

雨天時には殆どのお店が休業する清荒神で、セルフ易断は営業中。
雨は止んでいたものの、大雨対策のままのセルフ易断である。

厚手のビニールで覆われ、しっかりと紐で固定されている。

ゆえにビニールはほんの少ししか浮かすことは出来ず、ビニールが切れている付近にある誕生日の手引はなんとか取り出せるものの、中央付近だと腕の細いひとに突っ込んで取ってもらうか、紐を解いてということになるが、大雨の日になにもそこまでして買おうとしなくても、という気はする。

【=幸運の手引=貴方の運勢】

うるう年生まれもサポートしている幸運の手引は二部仕立て。

せっかくなのでこの稀な誕生日の人の運勢とはいかなるものか、少しだけ触れておきたい。2月29日生まれのアナタは必見である。

第一章(一代の運勢)
断然統率力の所有者であるあなたは金運も吉運、大吉運になっています。

吉運の吉は、下の方が長い「吉」だが、常用漢字でないためにここでは下が短いほうで表記する。これが人名であった場合「吉」の下が長いのか上が長いのかでは大変な問題になる恐れがあるので、2月29日生まれのアナタでなくても十分に気を付けていただきたい。

婦人であれば千客万来 お茶の接待にも忙しく、日毎に十人や二十人の接客で疲れを見せるようなことはなさらないでしょう。こんな人に限って「まあなんてこんなにお金が入るのでしょう」とおっしゃる時代が来ると思います。

まあなんてこんなにお金が入るのでしょう、とは決しておっしゃるな。

第二章(現在の運勢)はおみくじと同じ形式。
職業・結婚・金銭・失物・病気といった各項目に特化した手引である。
一番気になった項目のみ記す。

(失物)街の中から人通りの多い所で落としたものです。発見は困難です。

落とした場所を絞っているようで絞っていない。

【晴天5月と小雨8月の運勢の違い】

晴れている時の私の第一章と小雨の時の私の第一章には違いがあった。

とにかく第一章は金運について語られている。
そして最後に「婦人のあなたは」と婦人にだけ特別に金運のヒントを授けてくれる。
清荒神のセルフ易断は女に優しいのが特徴なのだ。

いかがだろうか。
読み物として楽しむ目的で100円で購入するのだと思えば古本に匹敵する価値があるのがセルフ易断なのである。

※全画像筆者撮影

サルコイドーシス(以下:サル)を患うこと早8年目。そろそろ人間になっているかと思いきや直近の経過観察でもまだサル。しつこいぞ、サル。いつまでだ、サル。 プロフィールのイラストは、入院中の暇つぶしに院内をウロチョロしていた時に知り合った職業が元美少女エロ漫画家の山田課長が、サルの病名普及のためペペペーと描いてくれました。 そんなわけでね、今日はよかったら名前だけでもおぼえて帰ってくださいね、特定疾患『サルコイドーシス』略してサル、難病です☆

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