みなさま、古代ギリシャで最大の崇拝を集め2000年間も続いた密儀、「エレウシスの秘儀」をご存じでしょうか?
なんとあの西洋哲学の基礎を築いたソクラテスやプラトンも「エレウシスの秘儀」に入信していました。
そこでは「キュケオン(Kykeon)」という飲み物がふるまわれ、それを飲んだプラトンは
「本質的に神と一体になれる飲み物」
と評しています。
あのプラトンをしてそこまで言わしめた「キュケオン」。
これは非常に好奇心がくすぐられますね!
さっそく調べて再現したいと思います(`・ω・´)!!
キュケオンについて
「エレウシスの秘儀」はその名の通り、外部には極秘で行われていた密儀だったため、現在でも内容はよく分かっていません。
当時儀式の内容を外部に漏らして死刑宣告を受けた者もいるほど、厳格に秘密が守られていました。
しかし「キュケオン」は「水、ミント、麦」でできていることは分かっています。
ここから「キュケオン」がどのような飲み物だったのか推理したいと思います。
麦について
古代ギリシャではマッザという大麦のケーキを、古代ローマではパルスという大麦のお粥を、人々は日常的に食べていたと言われています。
麦は当時の人々にとって重要な栄養源で、非常に親しみのある食品だったのです。
なぜ神と一体になれるの?
当時の人々は麦角菌が付着した麦を摂取していた可能性があると言われています(出土した容器や人骨から麦角菌が発見されているそうです)
麦角菌には幻覚作用があり、その強さは、この幻覚作用を発見したアルバート・ホフマン博士がそれを利用して幻覚剤LSDを作り出したほどです。
つまり、エレウシスの秘儀では「キュケオン」=「麦角菌が入った飲み物」を飲み、幻覚作用によって強烈な神秘体験をして、熱狂的な信者を獲得していったのではないかと考えられます。
キュケオンのレシピ
ではキュケオンはどのように作るのでしょうか?
キュケオンは「かき混ぜる、かき混ぜて濃くする」という意味があり、「こういう飲みものだったのではないか?」という推測のもと、さまざまなレシピで再現がなされています。
水の代わりに赤ワインで煮たり、小麦粉やチーズ、ハチミツなどを使ったプディングのようなレシピが一般的に知られています。
今回は「図解 食の歴史/ 高平鳴海 (著)」に書かれている
農民などはこの大麦のひき割り粉にミントを混ぜた「キュケオン」という清涼飲料水を飲んでいた。キュケオンは聖域での儀式の時にも飲まれたという。
というシンプルな方法で作ってみようと思います。
調理
大麦のひき割り粉が家になかったので、大麦を茹でてミキサーにかけます。
とろみが出てきたら刻んだミントと加えて水を足し、10分ほど煮込みます。
完成!
実食
全く想像通りの、ミントの香りがする濃いおもゆです(笑)
特に美味しいわけではないですが、栄養が体に染みこむ優しい味です(*´ω`*)
ミントの清涼感で気分がリフレッシュされるので、仕事中の軽食に良いかもしれません。
なによりも、時空を超えて数千年前の人々と同じものを食べるのは感慨深いものがあります。
非常に簡単に作れるので、良かったら試してみてください!
<画像引用>
デーメーテールの石彫刻画像(トップ画像):photo by Zde via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Demeter_and_Kore,_marble_relief,_500-475_BC,_AM_Eleusis,_081135.jpg
その他画像は全て筆者撮影
<参考図書>
図解 食の歴史/ 高平鳴海 (著)
古代ギリシア・ローマの料理とレシピ/ Andrew Dalby、Sally Grainger(著)、今川香代子(翻訳)