先日、米国オレゴン健康研究大学の研究者グループが「ヒトの皮膚細胞」と「DNAを除去した未授精ドナー卵」からヒトES細胞を作り出すことに世界で初めて成功した、というニュースが流れました。再生医療への可能性が開けたことでも話題になっています。
ES細胞は「細胞を生む細胞」の幹細胞の一種。幹細胞は人間の体内にもありますが、「身体のあらゆるタイプの細胞を作れる」のがES細胞の特徴です。ES細胞の研究が進めば、脊髄損傷や心筋梗塞、厚生労働省が特定疾患に認定している多発性硬化症やパーキンソン病への治療の可能性が広がると期待が集まっています。また、今回作り出したヒトES細胞による再生医療は免疫拒絶が少ないとされています。
ヒトES細胞はヒトの皮膚細胞をヒトの未受精卵に移植して出来た「人クローン胚」が由来です。人クローン胚の滅失でヒトES細胞が樹立する一方、人クローン胚を胎内に戻すと人クローン個体が誕生してしまいます。もちろん日本では「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」(2000年公布)の第三条で禁止されています。
研究グループを率いたShoukhrat Mitalipov博士は「安全で効果的な幹細胞治療開発には研究すべき点がまだ多いが、ヒトクローン胚を生み出したということは再生医療の実現に向けた大きな一歩だ」と述べています。Mitalipov博士は2007年にサルの皮膚細胞からES細胞を生み出した経験があります。
ちなみに、今回のヒトES細胞作成は、クローン羊・ドリーを生み出す際に用いられた「体細胞(⇔胚細胞)核移植法」によって成功しています。スコットランドで産まれたドリーは、今から17年前の1996年に誕生し、大きな反響を呼びました(2003年に亡くなっています)。
画像: 米国オレゴン健康研究大学のウェブサイトのキャプチャー
http://www.ohsu.edu/xd/about/news_events/news/2013/05-15-ohsu-research-team-succe.cfm