人気漫画家が日本テレビアニメ第2話のデキに納得いかず「今すぐやめて」「やめないなら僕が連載やめる」と言った結果

人気漫画家として日本のみならず海外でも知られている巨匠・森川ジョージ先生。代表作の『はじめの一歩』は多くのファンを楽しませているだけでなく、生きる勇気を与える作品として愛され続けている。

森川ジョージ先生が納得がいかないデキだったアニメ

あまりにも人気がある『はじめの一歩』は、連載開始からさほど時間が経たないうちにアニメ化の話がきたのだという。しかし森川ジョージ先生はアニメ化に興味がなかったため、断っていたとのこと。その後、強い熱意を伝えてきた会社があり、アニメ化を許諾したそうだ。

しかし、アニメの第2話まで観たものの、森川ジョージ先生が納得がいかないデキだったようで、「約束と違う、今すぐやめてくれ。やめないなら僕が連載をやめる」と制作会社に伝えたという。そして……。

<森川ジョージ先生のXツイート>

「漫画の映像化。漫画家さんの特に新人さんに向けて。はじめの一歩は連載開始してわりとすぐに何社からかアニメ、映画の話がきました。そういうことに全然興味がなかったのでお断りし続けました。10年ほどして大勢で会いに来てくれた会社がありその熱意に頷き「40巻買ってくれた読者を失望させないでほしい」という条件を出しました。2話目を観てすぐに「約束と違う、今すぐやめてくれ。やめないなら僕が連載をやめる」と制作会社言いに行きました。関係者全員パニックです。でも自分は納得いかなかった。会議の末「必ずクオリティを上げる」という言葉を貰いとりあえずは引きました。その後素晴らしいデキになり信頼関係ができて脚本チェックもしなくなり全面的にお任せしました。本当に素晴らしかったので初代、二代目の監督にもお礼を言いました。一生懸命やってくれているのは承知の上だったので「申し訳ない」という気持ちと「納得できない」という気持ちが入り混ざり、しかし優先すべきは読者だと自分に言い聞かせ行動しました。舞台化は「喜安浩平君を脚本に迎えていただけたら全てお任せする」という条件を出しました。講談社の担当編集者、番組プロデューサー、制作会社はよく動いてくれて経過と結果を必ず報告してくれました。以上が自分の経験です。あまり表に出すことではないのですがね」

「走り出したものを止めるのはエネルギーを使うし勇気がいります。自分もあの時の心労は思い出したくもないです。他にも例があります。納得いかず本当にアニメの放映を二週間止めて話し合った作家とか。連載に支障をきたすからやめてくれと自らアニメを打ち切った作家とか。話が違うと裁判して勝訴したとか。自分は原作者が偉いなどと言いません。しかし作品と読者を守れるのは原作者だけで、その責務があります。尊敬と感謝を忘れずに、そして堂々と自分の意見を言ってほしいと思います」

「原作を改変、脚色して成功した例も山ほどあります。「あそこはどういう表現になるのかな」と楽しみにしている作家が多いのも事実です。信頼関係ができた後は自分もそうでした。そもそも漫画と映像では演出方法に大きな違いがあり原作そのままというのは至難の業です。原作者を含め全員が尊敬と感謝をもって携わることが一番なのだと思います。感謝の優先順位ですが漫画家の場合、圧倒的に読者です。そのことを忘れずに。これは自分だけの主観的な意見なので一つの参考としてとどめておいて下さい」

「映像化は作品を広く遠くへ届けるための選択肢の一つです。必須項目ではないですよ」

「そうです日テレです。素晴らしい仕事をしてくれました。今回 局が悪い、制作会社が悪い、出版社が悪いという意見が散見されますが時間に追われながらもみんな一生懸命だったと思います。責められるべき関係者がいたとしてもそれは時間が何らかの答えを出してくれると思います。誰が悪いではなく原作者は悪くないという話にしたいです。責務を果たそうとした勇気と、作品から伺える才能を称えたいです」





森川ジョージ先生自身の人柄と「期待してくれているファンを裏切らない」という強い決意

森川ジョージ先生が語ってくれたエピソードから、森川ジョージ先生自身の人柄と「期待してくれているファンを裏切らない」という強い決意を感じる。そして、制作会社をはじめとした関係者にも恵まれたことが、アニメが良作に仕上がった理由といえるかもしれない。

熱意をもって進めていくことが大切なのでは

いま現在、漫画家とドラマ関係者の関係性について、「誰が悪い」「誰の責任」という話題がインターネット上で議論されている。しかし、そのような犯人捜し的な思考よりも、それぞれがよりよい作品に仕上げるにはどうすれば良いかを考え、熱意をもって進めていくことが大切なのかもしれない。


※冒頭イメージ画像はフリー素材サイト『写真AC』より

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