「核軍縮外交」から一変 ウクライナで核脅威が高まる今こそ爆心地「広島」から『核兵器廃絶』『世界恒久平和』のG7サミット意義付けを

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[出典:「NHK」「広島G7サミット開幕」(2023年5月19日)]

 2023年5月19日から開幕した「広島G7サミット」が最終日の21日を迎えている。
 ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過し、現在行われている「広島G7サミット」に先駆けて「長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)」は2023年2月24日に声明を公表していた。
 2023年2月21日、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は「新START条約(NEW Strategic Arms Reduction Treaty)」の一時停止に言及し、米露間の唯一の軍備管理と軍縮の枠組みを事実上、ご破算にした。同月23日にプーチン氏はまた、陸海空の核能力の増強(事実上の「軍拡」)を宣言し、米露間の緊張を高めた。相互の現場検査や対話の終了を通じて信頼醸成に貢献してきた新START条約をいつか来た「軍拡」への道へと再び歩ませ、「軍縮」は閉ざされたものになるかもしれない緊急事態を迎えている。
 RECNAは現在のロシアの立ち位置を強く非難する。核ブラックメールの伴う、その精力的な侵略行為に即座の停戦を急がせ、法に基づく国際的秩序を回復させるよう働きかける。
 新START条約の一時停止の上で「軍拡」に走るのは、核軍縮を成し遂げるための交渉任務を図る「核不拡散条約(NPT)」違反であり、即時のウクライナからの撤退と新たな軍備管理と軍縮の枠組み作りを確立することこそが今のロシアに突きつける命題である。
 G20サミット宣言(2022年11月15日)ではロシアを含む他の締約国が「核兵器の使用も脅威の行使も法的証拠として認めることはできない」と一致した。「核保有国と核の傘を共有する締約国は、核兵器の役割のより劇的な削減に向かって踏み出すことと同様、危機管理手段の履行を通じた信頼醸成を含む核リスクの削減手段を優先順位に置く責任がある」。
 全ての諸国は、いわゆる「安全保障のジレンマ」を乗り越える努力を期待されており、共通の安全保障を成し遂げる道筋を模索している。「核軍縮の実質的な推進を目指す著名人のグループ(2018年3月29日)」は、「核抑止は『グローバル・セキュリティー』の危険で長期に及ぶ基礎となるものである。そして全ての締約国はより良い長期的な解決策を模索すべきだ」とし、
その上で来るべき「広島G7サミット」は「核抑止を乗り越える創造的な議論のための初めの一歩にならなければならない」と希望を滲ませた。
[出典:Research Center for Nuclear Weapons Abolition, Nagasaki University(RECNA)( February 24, 2023) ” Statement on the One-Year Anniversary of Russian invasion of Ukraine”]

 この様に核軍縮が非常に厳しい状況に直面している中で迎えた広島G7サミットを開催する議長国の日本は、いかなる「核軍縮外交」を展開すべきか?
 当面の喫緊の優先課題として、核軍縮の基盤を形作る「3つの規範」を挙げておきたい。
1)核不使用・威嚇(non-use/non-threat)
2)核不実験(non-testing)
3)核分裂性物質(プルトニウムや高濃縮ウラン)不生産(non-production)
の規範形成・維持・強化を推進することを提案する。その上で日本が掲げる「法の支配による国際秩序」の一環として位置付けることも可能とする。
 
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「核軍縮外交」から一変 ウクライナで核脅威が高まる今こそ爆心地「広島」から『核兵器廃絶』『世界恒久平和』のG7サミット意義付けを

<リード>
【1】「グローバルサウス」の関係からも普遍的な核不使用メッセージを弱めぬ対露中への力強いコミットを
【2】米中対立で広島G7サミットに対抗する「中央アジアサミット」を主催した中国の狙い
【3】突然のウクライナのゼレンスキー大統領のG7合流で「核軍縮外交」の潮目が変わる?
【4】狙われるザポリージャ原発 地政学的要衝クリミア半島・黒海に続く「陸土回廊」エネルホダル市の戦場から
【5】広島県内 被爆者団体による記者会見から汲み取れる想い
【6】G7各国首脳らが原爆資料館視察で何を思った?
【7】カナダ在住被爆者サーロー節子さんが抱いた「核軍縮に関するG7の首脳広島ビジョン」への疑念
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【1】「グローバルサウス」の関係からも普遍的な核不使用メッセージを弱めぬ対露中への力強いコミットを

 

[筆者コラージュ作成]
 
 長崎大学多文化社会学部の西田充教授は「あらゆる軍縮外交の努力をするとは、G7のみならず国連やG20などの多国間外交、東アジアサミットやアセアン地域フォーラム(ARF)などの地域外交、さらには中露などとの2国間外交など全てのステークホルダーに核不使用の徹底を呼びかけることが必須だということである。」ことを前提条件とした上で、
「これまでのG7においても様々な声明で「ロシアの無責任な核のレトリックは受け入れられない」と表明されてきた。だが、そこには「核不使用の記録の重要性を想起」するのみで、ロシアによる核不使用が認められないというメッセージが欠落している。さらに普遍的な核不使用・威嚇の「規範」を形成、維持、強化するという決意が表明されていなかった。自らの核抑止政策との整合性を気にしている可能性はあるが、それでは西側先進国のご都合主義との色眼鏡で見られてしまい特に「グローバルサウス」との関係性からメッセージの普遍性が弱まってしまうとの見方もされていた。」との問題認識を示した。「グローバルサウス」と呼称されるインドのナレンドラ・モディ首相、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領、ベトナムのファム・ミン・チン首相らがG7首脳とは別に招待された来賓を一部とし、冷戦時代に「第三世界」と呼ばれていたアジアやアフリカ、中南米などの新興・途上国を指すもの。ウクライナ情勢では欧米側にもロシア側にもつかず、中間的な立場を取る国が多いとされている。
 「広島G7サミット議長国の日本に最も求められているのは、ロシアによるいかなる核兵器の使用や威嚇も認められないとの強いメッセージを発した上で、ロシアに限らず一般的にも容認できないとの力強いメッセージを打ち出すことが期待されてきた。また北東アジアでは、北朝鮮による突出的ミサイル発射実験への国連安保理による制裁は継続している。しかしながら中露による制裁の履行は緩慢で、北朝鮮の核・ミサイル開発・配備は加速度的に進んでいるのが現状である。また中距離核戦力(INF)条約が2019年に失効する以前から、同条約に縛られない「中国」が大量の地上配備型中距離ミサイルを保有・配備して地域の軍事バランスが悪化していったという史実がある。日本がポストINF条約におけるアジアの核軍備管理・軍縮イニシアティブとして提案することは、外交・地域安全保障両面でプラスになる」と見られている。」と政策提言している。

[出典:「長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)」ポリシーペーパー「核軍縮の再生:広島G7サミットに向けて」(2023年3月)」より要約]

【2】米中対立で広島G7サミットに対抗する「中央アジアサミット」を主催した中国の狙い

 また、2023年5月18日夜から中国西部の陝西省西安市で中国が主導する「中央アジアサミット」を主催した。米中対立で広島G7サミットを意識し対抗する狙いがあったと見られる。本サミットに習近平国家主席が5カ国との首脳会議に招致したのは、旧ソ連圏のカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領、キルギスのアルマズベク・アタンバエフ大統領、タジキスタンのエマムアリ・ラフモン大統領、トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領。17、18日と相次いで会談した習氏は「運命共同体」をつくろうと呼びかけた。習近平国家主席は開幕にあわせすべての首脳を出迎えて個別に会談し、巨大経済圏構想「一帯一路」などでの協力を呼びかけた。中国旧ソ連圏はウクライナ侵攻以降、ロシアと距離を置いている。中国の習近平国家主席は「総額5000億円相当の援助」を表明。「中央アジア各国との関係性について『運命共同体』だとし、我々は手を携えてより緊密な中国・中央アジア運命共同体を構築することを決心した。グローバルな安全保障の提案を共同で実行していく。」と意欲を滲ませ「西安宣言」を採択した。

[出典:「ABEMA news」「中国・中央アジアサミット 先ほど政治文書採択」(2023年5月19日)]

 ロシアの国営原子力企業「ロスアトム(ROSTOM)」による中国への高速炉(CFR-600)用燃料としての「高濃縮ウラン(HEU: highly enriched uranium)」の供給の動向が、中国保有の核弾道数の増加と、米国の安全保障に対する脅威となるのではないかと懸念されている。具体的には2022年12月にロシアのTVEL社(ロスアトムの持株会社アトムエネルゴプロム(Atomenergoprom)傘下の企業が中国のCNLY社(中国の国営原子力企業)である「中国核工業集団(CNNC: China National Nuclear Corporation)」傘下の企業に供給した。1基目のCFR-600の建設は2017年12月に台湾海峡を隔てて台湾と対峙する福建省霞浦県の長表島で開始され2023年運転開始予定だ。運転開始時にはHEU燃料を使用し、7年後の2030年以降はMOX燃料を使用する計画とされている。今年CFR-600が運転開始すれば、中国は今後12年間で現在の核弾道備蓄を4倍に増加させるに足りる核兵器級プルトニウム(Pu)を生産すると予測される。すなわち、米露が配備している核弾道数に匹敵させることを可能にする。また、2022年12月に6477kgのウランをロシアが中国に供給したことは、台湾や南シナ海の支配をめぐり緊張が高まっているアジアの軍事バランスを不安定にする可能性のある中国の原子力計画に拍車をかけている。
 2023年3月16日に米国議会下院のマイク・ロジャーズ軍事委員会委員長、マイケル・マッコール外交委員会委員長、およびマイケル・ターナー常設情報特別委員会委員長の3名は連名で、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、アンソニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官、ジャネット・イエレン財務長官、ジェニファー・グランホルムエネルギー省長官、ジーナ・ライモンド商務長官、さらにはアヴリル・ヘインズ国家情報長官宛に書簡を送付した。その中でロシアのロスアトムは、中国が自身の核攻撃能力(strategic nuclear breakout)を強化させるのに十分な核兵器級Puを取得することを支援し、共にロシアのウラジミール・プーチン大統領によるウクライナでの戦争を支援しており、米国のジョー・バイデン政権がこの件を米国の安全保障に対する直接的な脅威と捉えてロスアトムと中国間の協力を阻止するあらゆる手段を講じるべきだと危機感を一致している。
 

【3】突然のウクライナのゼレンスキー大統領のG7合流で「核軍縮外交」の潮目が変わる?

 ここにきて、ウクライナのウォロディミフ・ゼレンスキー大統領がオンライン参加ではなく、広島G7サミット、中日の20日午後に電撃合流した。ゼレンスキー大統領は母国が戦場になっている実情を改めて訴えた上で「武器の供与」を含めた軍事支援強化などを要請し、ロシアとは中立的な立場を取る傾向にある「グローバルサウス」にも「ロシア軍の完全撤退」に向けた和平案の実現に協力を呼びかけたい意向を示しているという。ゼレンスキー氏のサプライズにより「核軍縮外交」交渉の空気が一変し、場合によっては中露を「悪」とした軍拡に世論をミスリードしていく危険性があるのではないかとの警鐘が鳴らされている。

[出典:TBS News DIG「G7広島サミット最終日 ゼレンスキー大統領参加で首脳会談 午後には平和公園で献花し記者会見」(2023年5月21日)]

 ウクライナには「フメリニツキー(KNPP)」、「リウネ( RNPP)」、「南ウクライナ(SUNPP)」、「ザポリージャ(ZNPP)」の4つの稼働中の原子力発電所がある。国営の原子力発電所運営組織である「エネルゴアトム」が運営している。また、「チョルノービリ原子力発電所(ChNPP)(1986年事故以降、廃止)」があり、使用済み燃料貯蔵施設を有している。
 他には「ハリキウ物理技術研究所」や研究炉、放射性物質を扱う多数の研究施設がある。

[左出典:SIPRI提供:ロシアの軍事攻撃を受けたウクライナの原子力施設]  
[右出典;「日テレNEWS」ザポリージャ原発に砲撃]

【4】狙われるザポリージャ原発 地政学的要衝クリミア半島・黒海に続く「陸土回廊」エネルホダル市の戦場から

 2022年2月24日以降、ロシアのウクライナ侵攻という大規模な原子力発電所の中で戦闘が行われる史上初の事態に突入した。「国際原子力機関(IAEA)」は戦闘開始直後から「事故・緊急センター(IEC: Incident and Emergency Center)」を設置。「ウクライナ原子力規制当局(SNRIU)」からウクライナ全土、チョルノービリ原発に警戒令が発せられた通知を受けた。
 全てのウクライナの原子力関連施設はSNRIUが管理下に置き、ロシアのウクライナ4州領土併合は国連総会で違法と決議されている。
 だが、ZNPPでは2022年10月にロシアの「ロスアトム」や「ロスエネルゴアトム」の技術者の駐在者の増加が見られた。ロシアはZNPPを運営するための会社をモスクワに設立したことを宣言し、ロシアの原子力規制当局の担当者がZNPPに入ったと見られている。
 ウクライナは1994年12月に核不拡散条約(NPT)に加盟し、1998年1月にはIAEAと包括的保障措置協定を締結。2006年1月には追加議定書が発効。2022年初頭、IAEAは「ウクライナの年度履行計画(AIP)」を承認し、暦年の保障措置活動計画が立てられてきた。
 ロシアに侵攻されて以来、IAEAはこれまで9回の職員派遣ミッションを行なってきた。2023年1月からはRNPP、SUNPP、KhNPP、ChNPPのウクライナの全ての発電所に常駐することになった。
[出典:核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)ニューズレター No.0317 May,2023]

 「Reuter」通信の報道によれば、ここ数週間、ロシア軍部隊はウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の周囲で防衛力を強める守備態勢をとっているという。2人の証言者によればその地域での反転攻勢が期待できるという見方を示している。新たな塹壕はその都市周辺を掘削し、鉱山が見えている。ザポリージャ原発の調査カメラはウクライナ側が領土統制している方に向かって幅広く貯蔵したところを北に横切っていることを視座している。
 ロシア側はここ数ヶ月、幾らかの原子力建築物の頂上に砲撃する態勢を整えてきた。インターネットもドローンに可能な抑止の中で組み込まれてきたものだ。
 ザポリージャ原発で勤務する2人のウクライナ人によって記述されている方法論や、ザポリージャ北西部の都市エネルホダルの他の2人の住民たちは原発の施設の安全保障上、好戦的なリスクからは一線を画している。匿名を条件に情報源となってくれたウクライナ人はロシアの占領下にある都市での彼らの安全性に怯えていたからだった。
 ロシア人が述べたのはロシアの国営原子力企業「ロスアトム」がウクライナの原子力の安全性に脅威の姿勢を示すことであらゆる可能性ある軍事行動についてと、原発の備品が適切に維持されてきたかだった。ウクライナの軍事諜報機関とロシアの国防省がコメントを求められても回答しなかった。
 幾らかの原子力企業の専門家は言った。彼らは警鐘を鳴らすとともに警告した。原発にとってのあらゆる損害は戦争とグローバル原子力企業の周囲にいる人々に恐ろしい結果をもたらす。
 「原子炉は戦争地帯のために設計されていない。私は彼らが戦争地帯で安全に、ないしは安全保障を保てるのかと問われるならば信じることはできない」とシンクタンクの「核脅威イニシアティブ」のニコラス・ロス(Nickolas Roth)所長は語る。
 またウクライナのエネルゴアトム原子力機関のペトロ・コティン(Petro Kotin)主任は「Reuters」通信に語った。「彼らはウクライナの部隊がその原発のある地域で直接攻撃を受けるような段に登るだろうとも、供給ラインを絶ってでも退却するようロシア人の部隊に成り代わろうとすることができるとは信じられない」と。
 しかしそこには国際共同体に向けての関心事がある。欧州最大の6つの原子炉が追いつけ追い越せの戦場の中で、特に軍事分析官たちがウクライナにロシア軍をザポリージャ原発のある地域に押し戻すよう期待している。
 国連の核の監視団は言う。「その地域における軍事プレゼンスと活動が育まれていき、緊急行動を必要とするところから一線を画す。それは数ヶ月に及ぶそのザポリージャ原発の主要な事故の危険性を警告してきたのである」。
 その機関が計画してきたのはロシアとウクライナの取引を現実化することである。後に国連安保理にとってこの一月は原発施設を保護するべく肝要なものであった。と4人の外交官が「Reuters」通信に語った。
 では日本では?丁度10年以上前に地震と津波が福島第一原発事故に遭い電力の供給を途絶させ原子炉の溶融を引き起こした。日本政府が当時語ったのは、ウクライナのザポリージャの蓋を閉じたままにすることだ。「我々は、それは警戒すべき状況であり、間近で見てきたものだと考えている。」と日本の経済産業省「原子力政策」課長の安良岡悟氏は語った。
 4月に日本は200万ユーロの投資を国連監視団にザポリージャ原子力発電所の安全性を確かなものとするためにその努力に貢献した。
 コティン氏が語るところによれば、その原発の安全性に最大の脅威となっているのは、原子炉の冷却化が必要な残りの外部電源ラインの維持を戦闘によって切断し得ることだった。
 それが降りる時、溶融の方法でディーゼル発電機をバックアップする術しか残されていない。
 「もし全てのポンプが止まったとしたら、あなたは3日間で1時間から1時間半もつだろうか?そしてこの溶融を手段として残すだろうか?」コティン氏は疑義を投げかけた。
 そのバックアップの発電機は既に短期的な終焉のために6回蹴り込まれたもので、その時には電力が砲撃によるものの期限が過ぎたものであり、そしてそれはロシアやウクライナが互いを非難し合う関係性にあった。
 コティン氏が見積もったのは、原発におけるロシアの部隊の数が最近の数ヶ月で500から1500まで増兵したと。彼は施設にはアクセスできなかったが、もはや操作しておらず、未だそこには連絡をとるネットワークは残っている。

 4人の情報源は、彼らが聞いた場合の爆風。そしてそれは彼らが想定した逸れた動物が鉱山に踏み込んできたようなものであり、ある一人の原発作業員は原発建築物の一つで、屋根の上からおそらくドローンで夜の空を横切って追跡弾丸で砲撃したのを見ていた。
 その部隊は立て直して過剰に防衛の態勢をとった。掘り下げる占領した部隊にとっては、そこにもロシア人が出口に関して片目でしか見ていない暗示のようなものもある。
 原発カホフカ貯水炉はウクライナ南部の岸にある。そしてそれはウクライナ人が統制した北部の陸土に自然な障壁としての役目を担っている。
 エネルホダルの原発と都市は、最大のロシア軍が占拠したザポリージャ南東部の地域にある、都市メルトポリへ向かうたった一つの主要な道路によって繋がっている。そしてそれはロシアに占領したクリミア半島陸土の回廊を提供している。

 コティン氏は語った。「ロシア部隊は撤退しなければならなくなるだろう。陸路の道路を進む道は切断されているように見えた。」その上で、氏はロシア部隊がすでに戦闘実務訓練で原発から抜け出す指揮をすでに取ってきた。
 「私見では、彼らが避難のための準備をしている。だから全てのものを一つの場所から取り上げる準備を整えて、そこから出ていくことをもたらしているように思えるのだ」という。
 エネルホダル市の2人の情報源によれば、彼らは今月、X線を撮るロシア軍部隊を研究所と病院から他の箱の中から取り出した備品と同様に、エネルホダル市のウクライナの銀行を閉鎖してから出てきた備品を見たという。
 ウクライナは間も無く占領された陸土を奪還する大規模な反転攻勢に出る指揮を計画している。そしてそれは広範にわたり、南部の空爆を期待されている。なぜなら、そのクリミア半島と黒海とをつなぐ架け橋として戦略的に重要だからだ。
 ロシアは西部ロシアからクリミア半島まで伸びて要塞化して横たわっている。その溝の深さは特に広範囲に及びウクライナが掌握しているメルトポリまでの陸土南部までの道と、モスクワがそこで攻勢に打って出ることを期待する示唆もされているのだ。
 
 モスクワは原発について主張する。そしてそれは戦時前の第5番目のウクライナが必要とする電気の提供であったり、今やクレムリンの指導者ウラジミール・プーチン氏が宣言したところの昨年(2022年)の9月に3つの他のウクライナの地域を伴って、ザポリージャの部分的な占領を槍玉に挙げた後で、今やロシアに従属している。
 ロシアが公式に設置したことを公表したのは、ザポリージャ地域の戦闘最前線からの避難であり、エネルホダル市も含むものだ。彼らが言うにはそこからすでに1500人以上の人々が避難を終えている。
 その原子炉は全て昨年9月にシャットダウンしており、原発作業員の数は戦争前の6000人前後から、11000人前後のウクライナ人職員から目減りし続けている。
ウクライナ国営の原子力発電所運営組織「エネルゴアトム」がコメントした。
 2700人前後がロシアの「ロスアトム」の子会社と契約書に署名している。そしてそれはモスクワが今やその原発を操作しているのだ。「エネルゴアトム」は先週、ロシアには原発施設から3000人以上もの原発作業員が避難する計画があると明らかにしている。
[出典:Reuters (May 19,2023)”Russian forces dig in at Ukrainian nuclear plant, witnesses say”]

 ザポリージャ原発は占領を続けて軍事拠点化し、ウクライナの反撃に対して核の盾とした。また同原発周辺地域のエネルホダル市でも攻撃が繰り返され、送電線の損傷から外部電源が喪失し、非常用ディーゼル発電機による原子炉冷却を余儀なくされる危機的緊急事態が相次いだ。
 ジュネーヴ諸条約第一追加議定書第56条は原発への攻撃を原則禁止すると定めている。しかし他の原子力施設は対象となっていない。また第56条第2項では軍事的重要性が高ければ攻撃が許されるという解釈の余地があるとの指摘がある。
 大規模な放射性物質の放出を伴う核リスクが顕在化する中、ジュネーヴ諸条約第一追加議定書が定める原発への攻撃や占拠の禁止について、条約の改訂や解釈の統一などを迅速に取り組み、
 国際法に違反した国家元首の戦争犯罪を処罰する「国際刑事裁判所(ICC)」のみならず新たな戦犯法廷の確立を目指すべきである。

【5】広島県内 被爆者団体による記者会見から汲み取れる想い

2023年5月19日には「広島県内の被爆者団体による共同記者会見」が行われた。

[筆者撮影]

 「広島県労働組合会議・被爆者団体連絡協議会」で被爆2世の中谷悦子氏は開口一番、こう切り出した。
 「ロシアのウクライナ侵攻により『核抑止論』の論調がより強まっている。『核抑止論』を打ち破るには、世界的な緊張と軍事的な緊張をいかに緩和していくかが大切になってくる。
これは理想ではなくて緊急の政治課題だ。被爆者の証言を含めて大変短い時間での広島平和記念資料館の滞在だった。広島でG7が開催されるのであれば、もう少し多くの被爆者との交流を進めてもらいたいのが本音。それでも私たちは核兵器廃絶に向けてG7各国の首脳たちが集まる中で話し合われることを期待している。首脳たちはここでの経験を自国に帰国されてから自らの国民に伝えてほしい。」その上でウクライナのウォロディミフ・ゼレンスキー大統領が急遽G7に合流することを受けて「核兵器があるから戦争、紛争が起こらないのではなく、核兵器がある中でこのように戦争、紛争は起きている。これを各国の首脳たちは現実の問題として自分たちの責任のもとに再認識してほしい。ゼレンスキー大統領がお見えになるとしたら、武力の提供だけを話し合うのではなく、停戦の道筋や合意をゼレンスキー氏を交えて具体的に話をしてほしい。核が使えなければ何をしてもいいということではない。核を使わない戦争の中でも多くの人々が犠牲になっている。世界の首脳たちは頭を下げて認識すべきだ。」と中谷氏は提言した。

[筆者撮影]

 「広島県原爆被害者団体協議会」の佐久間邦彦氏は「広島県平和記念資料館にG7首脳らが訪れたが、資料館の中がどうなっているのか、全然分からなかった。私は米国のジョー・バイデン大統領に注目していた。その中でどんな資料を見て、どう思われたのか、どんな会話をされたのかも分からなかった。このG7が始まるにあたり、これだけはやってほしいということはまず、G7首脳にまず、平和公園を訪れ、資料館を見て、被爆者の方の話を聞いて、確かに反響があった。けれどもこれは形だけのものに留まる。私たち被爆者が語れば、原爆は恐ろしいというのは理解して頂けると願いたい。ただこの惨禍をどう伝えるのか?これ以上こ悲劇を繰り返さないように広島でサミットをやるという意義を自覚して頂き何をしなくてはならないか十分理解の上議論して頂きたい。その議論の内容をG7首脳らが国に帰られても自国民に発信していくべきだと私は望む。」と所感を語った。

[筆者撮影]

 「ANT-Hiroshima」の赤井理子氏はいち市民としての思いを語った。「G7に向けて世界中の市民が広島に集っている。私は人々の中でたったG7各国の首脳への要望というのは明確だ。
私たち市民が課題を知ろうとするように7カ国の首脳も広島を知り、その地の政権に基づいた行動を起こすこと。世界のたった7カ国そして価値観や利害を共有している国々であるが故に同じ方向を向いて合意はまとまるはず。共同声明に何を書くかのみならず、その過程にも注目したい。初日には各国首脳が平和記念公園を訪れ滞在したとされている。その滞在時間は各40分間程度。詳報は見えないようになっているが、被曝者の小倉佳子さんと対話し、資料館で被爆の実装を目の当たりにした結果、この文書を発表するのだなと思う一方、彼らの言葉に覚悟と責任を問う眼差しを向け続けるべきだと思う。核被害者は日本国内・国外に数多く存在している。核保有国を含むG7全ての国々が日本以外にも何らかの形で被害を生み出してきたのではないか?原爆投下、核実験、ウラン鉱山掘削、劣化ウラン弾の先制使用など、誰もが核兵器の被害に遭う可能性を持つ世界が常識になった。核被害の環境修復や住民援助の道筋を示してほしい。G7での仕事を通して、核の恐怖に怯え、実際に核使用の結果に苦しむ多様な人々と顔を合わせる貴重な機会だ。凄惨さを想像力を持って現在の文脈で捉え、サミットが地域連合のような形で例え分断を深めた市民の代弁者である政治家たちへの要求は変わらない。いずれの機会においても広島で出会った被爆者の方々の声や心に集積し、普遍的な核なき地球、人類の安全と平和を訴え続ける」と意欲を滲ませた。

[筆者撮影]

「広島被爆者団体連絡会議」の田中聰司氏は、「(広島G7サミットの前日にあった)日米首脳会談で、核兵器や核抑止拡大が確認されたということを聞き、非常に裏切られた思いだ。核兵器の廃絶を願う広島平和記念資料館。外務省があらかじめ決められた展示物をG7首脳らに見てもらい、説明しただけではないのか?大変貴重な時間を保証したのに、実際に会って話を聞いた被爆者も一人だけと伺っている。たった一つだけ私が嬉しかったことは、『安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから』との言葉に刻まれた原爆慰霊碑に岸田文雄首相がG7の他の首脳らと共に花を手向けたことだ。首脳たちはここ広島の地で誓いを立てたわけだから、その力を胸に具体的な核廃絶への道筋が示されることを願う。その意気込みで広島G7サミットに最終日まで臨んで頂きたい。」と苦言を呈すと共に願いを込めて語った。

[出典:「TBS」News DIGs(2023年5月19日)「G7首脳が原爆資料館を訪問“被爆の実相に何を思う?」]

[筆者撮影]

「カクワカ広島(核政策を知りたい広島若者有権者の会)」の高橋悠太氏は「カクワカは10代〜40代の市民が核兵器禁止条約へ向けて国会議員に聞く活動」と団体名を紹介。
「広島が再び平和を訴えるためのアピールの場として利用されてしまったのではないか?ゼレンスキー大統領の訪問も誤ったメッセージを送ることになると考える。核政策の決定までの過程を示しているようでもあった。核が使われた広島という場所が核保有国によって占有されているような気持ちの悪さのようなものを感じた。」とした上で、高橋氏は「ウクライナを広島のようにしないためには今以上の核抑止が必要だと。ただ、日本で市民の声というと、中年の男性の声に多く代弁されてしまっている。女性、若い人たちからの声が汲み取れられていないのではないか?議論の場に関与できるようにする必要性がある。核問題は人類の問題だ。故に市民の存在力を増すために市民社会コアリアクションも結成されるなど、市民の努力も重ねられていく。資料館の中で何が行われたか分からない。非人道的な被害について認識したのか?『共同宣言』や首脳一人一人の言葉に注目しよう。」と提言した。さらにまとめとして「『核のない世界を目指す』には現在の核政策の再検討が必要で、政策が変わらなければ広島で開催した意味がなくなる。G7には核兵器禁止条約にオブザーバー参加したドイツも来ている。市民が関与できないことには核政策の決定の過程を示すことだ。私たちはG7サミット終了後に核政策の検討と一大転換が図られることを望む。」と期待を込めた。

―――ゼレンスキー大統領が訪日してG7に参加するというサプライズが発表された。そのことで空気が一変してしまった。サミットの意味のようなものはウクライナ政府も歴史的なサミットだと。欧米のメデイアもゼレンスキー氏はここに来て、F16戦闘機の武力など、より一層の軍事支援を要請するのではないか?G7サミットの性格が、戦争当事国の長が来ることで日本の見方が変わってしまうのではないか?という論が非常に支配的になっているが?(TBS「報道特集」特任キャスター金平茂紀氏より質疑)

[筆者撮影]

「PEACE BOAT」共同代表の川崎哲氏は「広島でサミットが開かれることについての意義は『平和』と『核兵器廃絶の重要性、緊急性』ということを訴えるということにあると。その広島でG7サミットが開かれるということが決まった時からそうであるし、そこは全く変わらず、今でもそれが意義であり、目標である。そこは何ら変わらないことだ。戦争が続き核の脅威が高まっている今だからこそ広島が持っている『核兵器廃絶』および『世界恒久平和』を目指す日が必要とされている。ますます重要性が高まる」と貫いてきた信念が垣間見える回答だった。

初日の広島G7サミットを受けて記者会見を開いた広島県内の被爆者団体からも幾度も声が上がったように、「広島平和記念資料館」を視察した後のG7首脳の受け止め方が分からないと要望があった。当日の岸田首相のメディアブリーフィングコメントでこの点を質したマスメディアによる報道で中日の午後、G7首脳らの思惑が明らかになる。

【6】G7各国首脳らが原爆資料館視察で何を思った?

 岸田文雄総理大臣は「歴史に残るG7サミットの機会に議長として各国首脳と共に『核兵器のない世界』をめざすためにここに集う」。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「感情と共感の念をもって広島で犠牲となった方々を追悼する責務に貢献し、平和のために行動することだけが、私たちに課せられた使命です」。

 アメリカのジョー・バイデン大統領は「この資料館で語られる物語が、平和な未来を築くことへの私たち全員の義務を思い出させてくれますように。世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!」と記帳しました。

 カナダのジャスティン・トルドー首相は「多数の犠牲になった命、被爆者の声にならない悲嘆、広島と長崎の人々の計り知れない苦悩に、カナダは厳粛なる弔慰と敬意を表します。貴方の体験は我々の心に永遠に刻まれることでしょう」。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は「この場所は、想像を絶する苦しみを思い起こさせる。私たちは今日ここでパートナーたちとともに、この上なく強い決意で平和と自由を守っていくとの約束を新たにする。核の戦争は決して再び繰り返されてはならない」。

 イタリアのジョルジャ・メローニ首相は「本日、少し立ち止まり、祈りを捧げましょう。本日、闇が凌駕(りょうが)するものは何もないということを覚えておきましょう。本日、過去を思い起こして、希望に満ちた未来を共に描きましょう」。

 イギリスのリシ・スナク首相は「シェイクスピアは、『悲しみを言葉に出せ』と説いている。しかし、原爆の閃光に照らされ、言葉は通じない。広島と長崎の人々の恐怖と苦しみは、どんな言葉を用いても言い表すことができない。しかし、私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ」と記帳しました。

 欧州理事会議長(EU)のシャルル・ミシェル大統領は「80年近く前、この地は大いなる悲劇に見舞われました。このことは、われわれG7が実際何を守ろうとしているのか、なぜそれを守りたいのか、改めて思い起こさせます。それは、平和と自由。なぜならば、それらは人類が最も渇望するものだからです」。

 欧州連合(EU)ウルズラ・フォンデアライエン委員長は「広島で起きたことは、今なお人類を苦しめています。これは戦争がもたらす重い代償と、平和を守り堅持するというわれわれの終わりなき義務をはっきりと思い起こさせるものです」と記帳しました。
原爆資料館では、各国の首脳などが訪問した際にメッセージを記す芳名録に記帳することが慣例となっています。

[出典:「NHK」「G7サミット 各国首脳らが原爆資料館で記帳した内容を公表」(2023年5月20日)]

【7】カナダ在住被爆者サーロー節子さんが抱いた「核軍縮に関するG7の首脳広島ビジョン」への疑念

 初日を終えた深夜、「核軍縮に関するG7の首脳広島ビジョン」が成果文書として上がってきた。だが、その出来栄えは大きく肩を落とすような内容だったと前出の川崎氏は語る。
 「いわゆる「核兵器のない世界へ」を掲げながらも、「核兵器が悪いものだ」との認識が共有されていない。ロシアがウクライナで行っている「核の威嚇」であり、ロシアが悪例であって防衛するものとしての抑止力はいいのだという。こぞってG20で引用している。この成果文書では「核兵器をなくすとは一言も記述されておらず、軍縮についての何の強さも新しさもないこれまでの議論の焼き直しのようなものであり、『核廃絶という究極の理想』や『究極的目標』を達成するために粘り強く少しずつアプローチしていく。実質的には難しい」という要するに言い訳が並んだ「私的な文書」としか思えない出来栄えになっている。そこには政治的意思決定も何もない。こんなものを爆心地であった広島のG7サミットから出されてしまったと考えると、広島らしさが感じられず極めて残念で批判せざるを得ない内容だ。」と川崎氏は指摘した。

 広島G7サミット閉幕の議長国会見では、岸田文雄首相が「ロシアによるウクライナ侵攻という厳しい安全保障環境だからこそ、自由で開かれた秩序を目指すのが日本に課された使命だ。広島以外にこれ以上ふさわしい場所はない。平和記念公園があるこの場所でも(エノラゲイ)MIG29戦闘機が投下した原爆によって焦土化した。その広島が再建し平和都市として生まれ変わるとは誰が想像できただろうか。7年前、外相としてG7外相会合を開催した私は、翌月米国のバラク・オバマ大統領を迎え、寛容と和解の道筋に向けた誓いを新たにした。」とした上で、
「平和記念資料館、慰霊碑、原爆ドームを結ぶ南北軸を建築家の「丹下健三の軸線」と呼ぶ。G7首脳と「核兵器のない世界」を掲げた「核軍縮に関する首脳広島ビジョン」を成果文書として取りまとめることができた。77年間と9ヶ月に及ぶ核の不使用と核戦争に勝者はなく、核戦争を戦ってはならないという平和を思う歴史的意義を共に致してG7首脳のみならず、招待国や国際機関の首長とも広島平和記念資料館を訪れることができた。人間の尊厳と安全保障、「グローバルサウス」のような脆弱な諸国にも今こそ問わなければならない。
 私たちG7首脳には2つの責任がある。1)安全保障(国民の安全を守り抜く)2)核兵器のない世界を追い求める(核の脅威に怯えることなく平和を希求する)ことだ。核兵器というものが筆舌に尽くし難い人類そのものを破滅させる「絶対悪」であり、現在起きているロシアの暴挙と歴史の修正に先人が築き上げ、擁護してきた原則が挑戦を受けている。その只中でウクライナのゼレンスキー大統領が「法の支配」に基づき守り抜いているメッセージを世界に示せたことは意義深いことだ。ウクライナには民間セクターが必要であり、対ロシア制裁強化を強く望む。気候危機やパンデミックという世界が他に注目している議論も交わされた。しかし核兵器で脅したり、力による現状変更は許すべきではない。
 共に聞いてきた広島の声と祈りに想いを致し、そうした平和希求への願いから理想を抱いてきた。理想は夢想とは違い、叶えることができるものだ。80億人の民は皆、広島の市民となった。核戦争を避けるために「核兵器のない世界」を広島を訪れた首脳らはじめ世界も追求していくだろう。平和を希求する市民、メディア、明日を担う若者全てが自分ごととして捉え「恒久平和」を訴えていく」と自信に満ちて演説した。

 「広島G7サミット」最終日の2023年5月21日には、2017年の「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞授賞の際に演説したカナダ在住の被爆者、サーロー節子さんが記者会見を開いた。
 3日間の広島G7サミットで取りまとめられたG7首脳コミュニケと核軍縮外交の成果文書を一読したサーロー節子氏は最初の5行を読んだところ、違和感を覚えたという。

[筆者撮影]

「一体、この文書は誰が書いたものなのか?外務省があらすじを作って書かれたのか?この広島で平和記念公園の原爆資料館に視察までした首脳たちが実際一体何を見て、感じて、どう思ったのか?その首脳たちの想いが全く感じられなかった。私の願いは政治家という職務であっても、その衣も脱いで人間対人間の触れ合いを見て欲しかった。『おもてなし』も素晴らしいが、本当に皆さんが首脳たちと広島の日々とはを理解し、感じて取って欲しかった。私の目は次へ次へと向かい、もっと何か新しいアイデアがあるのではないかと期待していたが、大切なものはそこにはなかったのです。国際社会の中で『核不拡散条約(NPT)』と核兵器禁止条約(TPNW)の双璧を成すこの2つの条約に立ったの一言たりとも触れられていない。いつかは政府は変われると思っていた。しかしこの広島まで来て、広島の市民や被爆者にも触れ、あんなコミュニケや成果文書が書けるとは全く思いも寄らなかったことであり、びっくり仰天した。」と所感を述べた上で、サーロー氏は「もしTPNWの話だったら2045年までに核廃絶を達成するとか、そういう新しい具体的なアイデアのようなものを推進しようと前向きにも思える。けれども広島まで来たのに非常に法的に一方方向でロシアや中国、イラン、北朝鮮が敵性国家であり『悪』だとして、原爆を開発したり投下した米英仏の首脳らは自己責任をちっとも省みていない。非常に落胆し、死者に対して酷な罪だと思え、胸が潰れそうな気持ちでいっぱいだ。長年かけて被爆者が努力してきて作り上げたものとの説明が一言もなかったことに私たち被爆者をなんだと思っているのか?なぜ分かち合おうとしないのか?今、私は1945年被爆後のGHQ占領下にあった広島に想いを致している」と苦しい胸のうちを吐露した。

 果たしてこの「広島G7サミット」は成功に終わったと評価できるだろうか?サーロー氏がこんな言葉を残している。
 「核軍縮に関する機運は生まれたのか?大切なのは7人の首脳らが被爆者を理解してくださったか?たった一人だけの被爆者・小倉佳子さんと5分間話されたというが、どういう質問をされたのか?政府が公開しないのはなぜなのか?」
 岸田政権が「軍縮外交」と位置付けた「広島G7サミット」が臭いものに蓋のような感触を覚えられたのか?被爆者として長年闘われてきたその言葉は手厳しく生半可な揺るぎはそこに微塵もなかった。

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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