ビタミンBというと、世界で初めてビタミンを発見した鈴木梅太郎氏を思い出す。1910年に鈴木梅太郎氏がビタミンB1を米糠から抽出し、1912年にオリザニンと命名したことで知られる。脚気を予防する因子として発見された。
しかし、抗脚気因子にとどまらず、ヒトと動物の生存に不可欠な未知の栄養素であることを強調し、後の「ビタミン」の概念をはっきり提示していた。だが、その論文がドイツ語に翻訳されたとき、「これは新しい栄養素である」という一行が訳出されなかったため、オリザニンは世界的な注目を受けることがなく、第一発見者としては日本国内で知られるのみとなってしまった。
このため、ビタミン発見の業績で1929年にノーベル賞を受賞したのはエイクマン(オランダ)とホプキンズの2人だった。この当時はビタミンの発見がブームになっており、世界中の化学者の間でビタミン発見の競争が沸き起こっていた。
1938年のノーベル化学賞も、ビタミンについての研究に贈られた。オーストリアの生化学者、リヒャルト・クーンである。受賞理由は「カロテノイド類、ビタミン類についての研究」である。
クーンが発見したビタミンもビタミンBである。これはどういうわけだろう?鈴木梅太郎氏のビタミンBと違うのだろうか?
実は、ビタミンBには数種類あり、これらをビタミンB群とよんでいる。クーンが発見したのは、ビタミンB2であった。