謝罪を撤回し賠償も拒否! 警察官による流血ブリザード・ユダさん不法職質&暴行事件

  by 中将タカノリ  Tags :  

この事件に関しては3回目の記事となる。これまでの経緯は『警察官によるいわれなき不法取り調べ? 人気ロックバンド『流血ブリザード』ユダさんが負傷』(http://getnews.jp/archives/289118)[リンク]、『警察官による『流血ブリザード』ユダさん不法取調べ&暴行事件続報  診断書と警察との会話記録を独占公開』(http://getnews.jp/archives/289734)[リンク]を参照していただきたい。

2月8日、ロックバンド“流血ブリザード”のユダさんは東京都吉祥寺駅構内及び電車内で鉄道警察隊立川分駐所所属の警察官ホシ氏から違法な職務質問と暴行をうけ全治10日の怪我を負った。2月12日、ユダさんが抗議した時点では、ホシ氏の上司にあたる第4中隊長タカハシ氏が暴行の不当さを認めたうえで「職務質問に至らない点があった」と謝罪の意を表明していたのだが、15日になると「正当な職務行為であり、謝罪や賠償の必要はない。これ以上申し上げることはなにもない」と態度を翻した。

二転三転する警察の対応に不信感をいだいたユダさんの依頼により筆者が第一東京弁護士会に問い合わせたところ

「“警察官職務執行法2条1項”には”警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる”と記載されています。警察の担当者が言う”不特定多数に対する理由のない職務質問”は違法行為になります。腕や肩をつかむこと自体がいきすぎ。また警察の担当者は、まだ事件がおこったばかりのホットな時期に”指導に至らなかった点がある”、”それはないですね”と暴行の理不尽さに同意してますので、今後裁判などで争う場合、それを有利な材料にすることが可能です」

という意見を得ることができた。これまでのホシ氏、タカハシ氏の行動、発言自体がすでに法の規範を無視したものであり、また警察という組織自体がそれを容認して自己正当化する体質に陥っていることがよくわかった。

ユダさんさんは憤りを隠さずに語る。

筆者:暴行をうけた箇所の症状はその後どうですか?
ユダ:鎮痛剤さえ飲めばどうにか普段どおりです。でも薬が切れたらズキズキ痛みますね。職務質問された時の嫌な記憶が何度もよみがえって、夜中寝ていても目が覚めてしまうことも。普段からライブで遠征を繰り返す生活ってけっして楽な環境じゃないし、その中でこのストレスをかかえて、睡眠不足と疲労にはほとほと困り果ててます。

筆者:警察からの謝罪撤回の電話はどんな内容だったんですか?
ユダ:中隊長のタカハシさんからだったんですが「正当な職務執行だったので謝罪や賠償をする責任はない」の一点張りでした。前の会話との矛盾点をあげて「正当な理由を説明してほしい」と言ったけど「これ以上お話しすることはなにもない」と言うだけで……。まるで時代劇に出てくる悪徳商人みたいな口調で、こちらを見下したような、誠実さのかけらもない印象でした。

筆者:警察からの謝罪撤回、賠償拒否をうけてどのような対応をしていますか?
ユダ:国家公安委員会や国民救援センター等に対応を相談して、現在は弁護士と具体的な対応を検討しています。事件が起こった時の状況を写真で再現したり、今後に向けてやらないといけないことがいろいろあります。

筆者:今回の事件をうけて周囲ではどんな反応がありましたか?
ユダ:いろんな方々から励ましの言葉を貰えたのは嬉しかったです。でも流血ブリザードのメンバーにはいろいろと活動に支障をきたしたり悲しい思いをさせたし、申し訳なかったと思ってます。

筆者:事件後にはライブもありましたが、お客さんからの反応に変化などは感じましたか?
ユダ:お客さんにも変な心配をさせたりしたのは申し訳なかった。でもGIGでの反応は通常時と変わらず楽しんでくれたと思う。ライブハウスが満員になるほどたくさん来てもらったし、昔からの顔なじみも多い神戸だったので、ずいぶんと心のはげみになりました。

筆者:一バンドマン・一市民として今回の事件をどう感じていますか?
ユダ:ノルマのカモにされたのか、憂さ晴らしにおちょくられたのか未だに理解し難い点が多いです。なんでわざわざトラブルに発展し易いような方法を取っているのか、通勤ラッシュ時に駅の改札っていう、誰しもが止まりにくいシチュエーションで警察と判りにくい私服で、名乗らずに腕力で制止させるっていうのは疑問が多過ぎる手法ですよね。正直、もっと血気盛んな人だったら取っ組み合いなることも考えられるし。その方が警察としては公務執行妨害でしょっぴけるから好都合なのかな? それが狙いだったのかとさえ考えてしまいます。ただのウワサなのか知れないけど、ノルマに追われた警官の中にはそのような強引な手法で公務執行妨害に持ち込むという話も聞きましたし。所詮一個人vs国家権力という図式になるのをいいことに日々悪行三昧なのだな、恐いなというのが今の正直なイメージです。

筆者:もともとは別に悪いイメージはなかった?
ユダ:はい。別に何とも思ってなかったけど、今回の事件で負のイメージだけが大きくなりました。まさか自分がこんな目に合うとは思ってもいなかったし……真剣に市民のため、治安維持のために尽くしている警官の方もいるんでしょうけど、ホシさん、タカハシさんの行動は善良な警官も含め、警察全体の株を著しく下げたと思う。ああいう警官が許されるのなら、警察の今のマニュアル自体が根本から見直されなければならないと思います。

筆者:今回の事件が、今後のユダさんの音楽・表現活動に影響を与えることはあるでしょうか? あるならどんな影響でしょうか?
ユダ:アンチコップソング(警察に異議を唱える歌)はパンクバンドではあまりにありふれた表現だし、前科があるわけでもなし、特別アウトローな人間ってわけでもないので、今さらナンセンスだと思っていたんですが……今回の事件をきっかけに、そういう伝統にもあえて挑戦してもいいかなと思っています。

筆者:いま世間では体罰も社会問題になっています。警察官による違法行為、暴力も根源は組織の隠蔽体質、自己正当化にあり、共通性がある思います。ユダさんは体罰をについてどう思いますか?
ユダ:僕の通っていた男子校は体罰なんて日常茶飯事で、もちろん自分も受けていたけど、それによって人間が改心したりレベルアップすることはないと感じてました。僕自身、そんなやり方で生徒を制圧しようとする教師を憎んでたし、学校も嫌いだった。今の警察に対する感情とよく似てますね。体罰とか理由なき暴力は若者の心をねじれさせると思います。ただ、中にはとんでもない暴力学生とかもいるから、そういう相手への体罰なら完全否定はしませんけどね。

筆者:いろいろ話してもらってありがとうございました。がんばってください。最後に読者の方にメッセージなどあればお願いします。

ユダ:僕が言っている内容はしょせん僕の偏見でしかないので、もちろん批判的に感じる人もたくさんいると思います。ただ、誰が僕の立場だったとしても、とても黙ってはいられなかったと思います。それくらい現場でおこったことやその後の対応は悲惨なものだったんです。今のところ、警察には抗議の声すらまともにとりあってもらえないけど、僕は闘い続けていきます。心配してくれた人たち、励ましてくれた人たち、本当にありがとう。そして、こういう事件は僕だけでなく、いつ誰にふりかかるかも知れないものだと思います。気をつけてください。

そう、これは「いつ誰にふりかかるかも知れない」事件なのだ。けっしてユダさんの身なりが派手だから、不審だからという理由で起こったことでないことは警察官自身が白状している。ランダムにおこなわれる違法な職務質問によって、今後も心身にダメージをあたえられたり、場合によっては社会的名誉を傷つけられる人もあるだろう。しかも無実であるにもかかわらず、誰にも責任さえとってもらえないとすればこの恐怖は大きい。このような社会的理不尽を放置しておいていいのか。一バンドマン・一市民であるユダさんの闘いは続く。

流血ブリザード ユダさんブログ
http://ameblo.jp/kamiokajuda

※画像はユダさんから提供されたもの、第一東京弁護士会ホームページから引用したものを使用しています

中将タカノリ

■シンガーソングライター、音楽・芸能評論家 ■奈良県奈良市出身 ■1984年3月8日生まれ ■関西学院大学文学部日本文学科中退 2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。 歌謡曲をフィーチャーした音楽性が注目され数々の楽曲提供、音楽プロデュースを手がける。代表曲に「雨にうたれて」、「女ごころ」(小林真に提供)など。 2012年からは音楽評論家としても活動。さまざまなメディアを通じて音楽、芸能について紹介、解説している。

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