公園廃止の知らせが掲示がされている青木島遊園地入口
長野市の青木島遊園地廃止はたった一軒のクレームから?
長野市青木島にある青木島遊園地が、今年度末で廃止という決定が下された。これを受けて、Twitter上では扇情的な見出しと共にネットニュースが有名人のアカウント等によって拡散され、話題を呼んでいる。あるネットニュースの記事には、抗議者が高齢者の男性で名誉教授であることや、同市は抗議があったために廃止した、と伝え世論は大きくバッシングの方向へ傾いた。中でも、某長野市議会議員がネットニュースの取材に対して、「名誉教授は上級国民といえる立場。市が忖度したのではないか」という趣旨の回答をした。某議員は自身のTwitterアカウントでも、#上級国民というタグを使用し抗議者を非難している。また、有名Youtuderが件の議員と生配信を行い、某議員が経緯を説明しつつ抗議者を非難する内容の放送が行われた。Twitterでは事実についての情報は少なく、感情論優先の批判合戦や抗議者の氏名や住所の特定といった動きもあり、抗議者がまるで悪であるかのような扱いとなってしまっている。
青木島遊園地設置の経緯
約十八年前に地主が市に対して、土地を有効活用してほしいという打診から始まった。市は、青木島がある更北地区と話し合い隣接する小学校や児童センターがあることから児童遊園地として利用したらいいのでは、となり更北地区が市に助成金を申請し設置という方向になった。長野市は地区市民遊園地補助金事業という制度を設けている。
廃止の要因
当該遊園地が設置されてから迷惑な利用が増えた。キャパシティー以上の人数の利用や拡声器の使用、私有地への侵入、送迎の車が道をふさぐ等利用者のマナー違反が続いた。近隣住民から抗議の声があがり、市は、数年かけて対策を講じた。それは、住宅側に植樹し子供が住宅へ侵入しないようにする、出入り口を変更し送迎は児童センターで行う様に促すといったものだ。しかし、改善は見られないまま昨年三月、近隣住民から直接に管理している児童センターへ利用方法の改善を求める意見があがった。
また、ここ数年はコロナもあり利用者が激減していたこと、草刈りなど管理者側の負担が大きいことなどから、区から市へ土地を所有者に返還したいという打診があったこともあり廃止への動きが進んだ。市は、八日の会見で利用者がいないのに借地料を払い続けていることなどを廃止の理由に挙げた。担当課長は子供たちに利用してほしいが、18年間近隣住民に負担を強いてきた、と述べている。
都市内分権と地区遊園地
そもそも、青木島遊園地は公園ではない。長野市は都市公園と児童遊園地を区別して管理している。都市公園は市の管理下にあり当該遊園地は更北地区が管理している。これは、都市内分権という考え方によるものだ。昨今、地域の抱える課題の多様化、高度化が進み行政がすべての課題に対してきめ細かくスピーディに対応することが困難になってきている。そのため、地域住民と行政がパートナーとなって役割を分担することで課題を解決していく仕組みを構築していく事が急務となった。都市内分権は地方自治の充実において国際的にも切り札とされており、長野市も独自の都市内分権の枠組みを作り運用している。それによって、長野市は三十二の住民自治協議会を擁し、独自に自治行政に取り組んでいる。当該遊園地はまさに、都市内分権の枠組みの中で運用されていたのではないだろうか。今回の問題を考えるにあたって、都市内分権が大きなカギとなりそうである。
長野市の都市内分権についてのHP→https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/chiiki/13352.html