ニューヨークのホームレス事情は年々異なる。かつてのホームレスは高齢者の黒人が多かったが、現在は若者で白人、しかも、女性までいる。
私の住まいは国連近くなので環境は良く、ホームレスもこの辺りを根城にしている方が多い。領事館も数多く、治安は良い。早朝散歩に出かけると、国連前の向かいの教会の脇にどこかで拾ってきたベッドで眠っている白人男性がここ数年いた。早朝散歩は季節のいい時にしており、彼の冬場の動向はわからないが、この極寒のニューヨークで真冬の夜を耐える路上生活は無理だろう。
ニューヨークのホームレスが気の毒に思うのは、シェルターと呼ばれる保護施設を嫌い路上生活をする人も多いが、このところ増えている難民をニューヨークは手厚く保護し、ミッドタウンにあるルースベルトホテルという、かつては映画『ウォール街』でマイケル・ダグラス扮する金融の雄、ゴードン・ゲッコーが財テクについて講演をするシーンの演台にこの Roosevelt Hotel の名が刻まれているホテルで、高級ホテルではないが、それなりのランクのホテルであった。
そのホテルは今、難民受け入れの宿泊先となり、ホテルに難民を受け入れているのだ。それを思うとニューヨークの大先輩のホームレスの方々はきっと浮かばれない気持ちになるだろう。
地価の異常に高いマンハッタンに住むのはなかなか大変だ。そのマンハッタンに住み、犬を飼い、毎日散歩させている人たちは相当恵まれた暮らしをしている。犬に服を着せ、グルーミングの手入れも怠らず、犬と人間を比べるのは大変失礼なことではあるが、おそらく金持ちに飼われるペットの犬の方が、ホームレスの方々より断然いい暮らしをしていると思う。
世の中って理不尽だ。マンハッタンにある高級コンドミニアムは外国の投資家が保有し、どおりで夜になっても灯りが点かない窓も多い。意識してみると空き家風が多い。家主はニューヨークにはいないのである。たまにニューヨークに来る際、ホテルのような感じで保有しているのだろう。実際、外国人ではないがアメリカのスターたちは、ニューヨークに住んでいなくても家は持っている。彼等もニューヨークの持ち家は、ホテルのような扱いだろう。しかし、ずっと時間を持て余すニューヨーカーのホームレスには家がない。
先日、グランドセントラル駅というターミナル駅前で、家族連れの観光客と思しき人たちを見た。6,7歳の青い目、金髪のお嬢ちゃんが駅前にたむろすホームレスが珍しいのか見ているのだが、表情が汚いものを見る目つきでわずか6,7歳の少女の姿はとてつもなく悪印象だった。要は、特に母親がそういう教え方をしているのだろう、ホームレスを見ても慈悲など微塵もない少女に嫌悪感を抱くと同時に、母親の心の狭さを感じた。
金持ちになるのは努力もあるが運・不運は左右すると思う。持たざる者に対して嫌悪感を持つ社会は本当はおかしく、もう少し、弱者に優しい気持ちを持てないものだろうか。
ホームレスは他人事ではないのが特にニューヨーク。先日、ゴールドマンサックスで大人数の解雇が発表されたが、大きく稼ぐ金融マン、ウーマン達も、大きく使えば文無しであり、ましてや、クビになれば路頭に迷う 大量解雇がされる事態、業界の状況は悪いので、転職もままならぬであろう。
人は成功者には憧れ、擦り寄りたい傾向にあるけれど、本当に大切なことって、ホームレスの人達に話を聞く機会があれば、そこで気づくことがあると思っている。しかし、その勇気は未だないのだけれど…